【メルマガ】F.M.Letter No.143

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.143◇
 2018年5月15日(火)[和暦 卯月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識  伝統野菜のCO2削減効果(加賀野菜)
◆ O.カレント  銀座農業コミュニティ塾
◆ ほんのさわり 日本フードシステム学会『医福食農の連携とフードシステムの革新』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦では卯月に入りました。数日は初夏の陽気が続きそうです。一方、国際情勢には暗雲も。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は卯月朔日の配信です。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるようなデータをコツコツと紹介していきます。

-伝統野菜のCO2削減効果(加賀野菜)-

2回ほど中断していましたが、再びフード・マイレージ指標を活用した輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減効果についてのケーススタディを紹介します。
 長距離輸送された大量の輸入食料に依存している私たちの食生活は、その輸送に伴って大量の二酸化炭素(CO2)を排出することで、地球環境に相当の負荷を与えています。
 地産地消の取組みは、輸送に伴う二酸化炭素排出量を削減するという意味でも有意義なものであり、フード・マイレージ指標を用いることによって、その効果を定量的に把握することができます。

リンク先の図97の写真は、加賀野菜等(源助大根、金沢春菊、能登豚等)を用いた献立です。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/05/97_kaga.pdf

この献立のフード・マイレージを計測するとフード・マイレージは16.9kg・kmとなり、輸送に伴うCO2排出量は3.0gとなります(ケース1)。これに対して、仮に市場で国産食材を選んで調達した場合(ケース2)のCO2排出量は41.4g、仮に市場で輸入食材も含め調達した場合(ケース3)は133.2gと計測されます。

つまり、同じ献立でも伝統野菜など地元産食材にこだわることで、こだわりのない場合(一般に市場流通している輸入品等の食材を使用)に比べて、輸送に伴うCO2排出量は44分の1に削減していることを示しているのです。

[出典]
 中田哲也『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』(新版、2018.1、日本評論社)、p.178~183

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

-銀座農業コミュニティ塾-

銀座農業コミュニティ塾は、前身ともいえる銀座農業政策塾(2016年まで5期にわたって開催)の塾生を中心に、昨年(2017年)11月に立ち上げられました。

その最終的な目的は、自然や生命を大切にする持続可能な農的社会のライフスタイルの実現です。
 それに向けて、会員自らがそれぞれの現場で農に親しみ、食を豊かにする取組みに参画・寄与していくことを支援するため、塾として、勉強会や交流会の開催、現地見学、情報発信等を行っています。

塾長は高安和夫さん(銀座ミツバチプロジェクト)、代表世話人は蔦谷栄一先生(農的社会デザイン研究所)、事務局長は黒田浩介さん(CSA青山)が務められています。

昨年11月の発足以来、これまで3回の勉強会を開催してきました。
 理論と実践に基づく蔦谷先生の講義と、塾生の方による具体的な活動内容の発表(CSA、エディブルガーデン、武蔵野の循環型農業など)という2部構成となっています。

次回の勉強会は7月5日(木)19時からの予定。誰でも参加できる公開イベントです。
 大都会・東京のど真ん中で、さまざまな立場の方による農や食についての真摯な(楽しい)「学び」が続けられています。

[参考]銀座農業コミュニティ塾(FBページ)
 https://www.facebook.com/ginzanogyo/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

-日本フードシステム学会 監修、斎藤修・高城孝助 編著『医福食農の連携とフードシステムの革新』(2018/3、農林統計出版)-
 http://www.afsp.co.jp/syoseki-annai.html#040533

高齢化の進行は日本のあらゆる分野に大きな影響を及ぼしていますが、食との関連をみると、在宅高齢者の約40%は低栄養であり、70歳以上層においては20~30%が「個食」とのこと。また、高齢者を中心とした「買い物難民」の問題が顕在化する一方、介護食の市場規模は、今後、大きく拡大することが見込まれています。
 本書では、配食サービスと食ビジネスとの関連の現状と、今後の連携(バリューチェーン構築)方策等について幅広く論じられています。

まず、医療制度改革や医福連携が進展する中での配食サービス(特に在宅向け)の成長可能性と課題、クックチル方式等のセントラルキッチン導入の意義、高齢者福祉施設における栄養・食事管理の課題等が明らかにされます。
 続いてこれらの認識を踏まえ、社会福祉と食との関係性についての農村部(JAの社会福祉事業)と都市部(NPOなど新しいビジネスモデル)との比較、フードシステムにおけると市民参加型食事サービスの現状と市民グループへの中間支援のあり方等について考察が行われています。
 いずれも、それぞれの分野における実務にも通じた専門家により、各種アンケートやケーススタディ基づいた詳細で具体的な現状分析と提案が行われています。

編著者代表の斎藤修先生(千葉大学名誉教授)は日本フードシステム学会の会長を長く務められた方で、本書は当学会の2015、16年大会におけるミニシンポジウムの議論を整理し再編集した学術書です。
 医福食農連携に関心のある方には、その全体像から地域における具体的な取組み事例まで、多くの貴重な知見を得ることのできるテキストとして活用されることが期待されます。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 市民が政策をつくる!(白石孝さんトーク&読書会)[5/2]
 http://food-mileage.jp/2018/05/02/blog-101/

○ 写真家・高橋美香さんのパレスチナ[5/3]
 http://food-mileage.jp/2018/05/03/blog-102/

○ 銀座農業コミュニティ塾 第3回勉強会[5/10]
 http://food-mileage.jp/2018/05/10/blog-103/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 藤原辰史さん講演会「『雑多なもの』の賑わいを求めて-暴力と破壊の世紀を振り返りながら」
 日時:5月20日(日)13:30~16:30
 場所:お茶の水全労連会館ホール(東京・文京区湯島2)
 主催:いのちと暮らしを支える医療・介護・福祉の会
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://kokumintouhyou.wordpress.com/%e8%ac%9b%e6%bc%94%e4%bc%9a%e3%81%ae%e3%81%8a%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%9b/

○ 共奏キッチン♪@自由が丘シェア奥沢
 日時:5月21日(月)18:00~22:00
 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢2)
 主催:共奏キッチン
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/825430784308674/

○ 上越の棚田へ田植えに行こ~
 日時:5月26日(土)~27日(日)
 場所:新潟・上越市吉川区大賀
 主催:大賀米づくり
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/497625257301310/
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*今号のコツコツ小咄
「連休が明けると、紛争地のことを思い出すんだ」
「そうなんですか」
「早くペース(ピース)を取り戻したいから」
(写真家・高橋美香さんのパレスチナ・トークイベントに参加して)
  http://food-mileage.jp/2018/05/03/blog-102/

コツコツ小咄は、まとめて拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.144は5月29日(火)、[和暦 卯月十五日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 発行システム:『まぐまぐ!』
  http://www.mag2.com/