【メルマガ】F.M.Letter No.201

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.201◇
 2020年9月17日(木)[和暦 葉月朔日]
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◆ F.M.豆知識  (改めて)フード・マイレージを考える意味
◆ O.カレント  EU「農場から食卓まで戦略」
◆ ほんのさわり コロンバニ『三つ編み』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 猛暑が続いた2020年も9月後半に入り、肌寒く感じる朝も増えてきました。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信してきた本メルマガ、201号となる今号では改めてフード・マイレージを取り上げました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−(改めて)フード・マイレージを考える意味−

拙メルマガもお陰様で200号を超えたこともあり、改めてフード・マイレージについて紹介させて頂きます。
 フード・マイレージは、食料の輸送量(t)に輸送距離(km)を掛け合わせた数値(単位はt・km(トン・キロメートル))で、日本の輸入食料全体のフード・マイレージは約8.4千億 t・kmと、韓国・アメリカの3倍近くとなっています。
 また、輸入食料が日本の港に到着するまでに約17百万トンのCO2が排出されていると試算され、日本が輸入する食料の大量・長距離輸送は地球環境に相当の負荷を与えています。

地産地消は、新鮮で安心できる食材の入手、地域農業の活性化等の面で注目されていますが、さらに食料の輸送に伴うCO2を削減するという効果もあります。
 リンク先の図201は、東京・千代田区でブドウ1kgを消費する場合の、産地毎にフード(ブドウ)・マイレージと輸送に伴うCO2排出量を比較したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/09/201_FM.pdf

これによると、地産地消(東京・東村山産)の場合は、国産(山梨産)比べてフード・マイレージ及びCO2排出量は4分の1、輸入品(アメリカ産)に比べるとそれぞれ721分の1、115分の1に縮小されていることが分かります。

むろん、輸送距離だけでその食べものの「環境に対する優しさ」を計ることはできませんが、フード・マイレージは、私たちの食生活が地球環境問題とも関わっていることについて気づくヒントになります。
 さらに現在、コロナ禍のなかで、世界的に持続的な食のあり方について再検討され、新しい動きが出てきています(次項ではEUの字形を紹介します)。フード・マイレージは、食卓の上の食べものの由来(どこで、誰により、どのように作られ運ばれてきているか)を考えるきっかけにもなります。

[資料]
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  https://food-mileage.jp/

 拙著『フード・マイレージ』(新版、2018年1月、日本評論社)
  https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7625.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−EU「農場から食卓まで戦略」−

2020年5月、欧州委員会(EU(欧州連合)の執行機関)は「農場から食卓まで戦略」(Farm to Fork Strategy)を発表しました。
 これは、生産者、企業、消費者が一体となって、農場から食卓までのフードシステム全体を、公正で健康的で環境にも配慮した(a fair, healthy and environmentally-friendly)持続可能なものに変革しようとする戦略で、昨年12月に公表された「欧州グリーンディール」(脱炭素と経済成長の両立を図る政策)の中核に位置付けられるものです。

戦略においては、その実現を図るため、化学合成農薬の使用量の50%削減、化学肥料の使用量の20%削減、少なくとも農地の25%を有機農業に転換するといった、2030年に向けての具体的な数値目標も盛り込まれています。
 また、アニマル・ウェルフェアに関する規定の作成、消費者が健康で持続可能な食品を選択できるようにするための支援(表示の改善等)、法的拘束力のある食品ロスの削減目標の作成等についても記載されています。
 さらに、地理的表示に関する法的枠組みの強化、地産地消による輸送距離の短縮化への支援など、フード・マイレージに関する記述もあります。

この戦略の背景には、新型コロナ危機により、食の持続可能性やレジリエンスな(しなやかで強靭な)社会基盤構築の必要性が強く再認識されたことがあります。
 これは世界共通の課題であることから、EUの戦略が将来的に世界的なスタンダードとなる可能性もあると考えられますが、その場合、例えば有機農業の面積が0.5%に過ぎない日本にとってはハードルが高いものとなりそうです。

[参考]
 European Commission“Farm to Fork Strategy”
  https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/f2f_action-plan_2020_strategy-info_en.pdf
 EU MAG(駐日EU代表部の公式ウェブマガジン)
 「脱炭素と経済成長の両立を図る『欧州グリーンディール』」
  http://eumag.jp/behind/d0220/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−レティシア・コロンバニ『三つ編み』(早川書房、2019/4/18)−
 https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014188/

作者はフランス・ボルドー生まれ。映画監督、女優、脚本家でもあるという多才な女性だそうです。

主人公は3人の女性。1人目はインドの不可触民であるスミタ。女性(妻)は男性(夫)の所有物とされ、人権どころか生命までも脅かされる状況のなか、夫と家を捨てて、幼い娘の手を引いて困難で長い旅に出ます。
 2人目はイタリアのジュリア。毛髪加工工場を営んでいた父が事故で急逝、工場が多額の負債を抱えていたことも判明し、工場と従業員、自宅を守るために立ち上がります。
 3人目はカナダのシングルマザーのサラ。敏腕弁護士として「ガラスの天井」を破り、正に所属する大手法律事務所のトップに上り詰めようとしていた矢先、突然、乳がんが発覚します。

女性であることによる苦難、運命に抗い、人生を戦う主人公の3人。それぞれ離れた場所、全く異なる境遇にある3人を結びつけ、救ったのは「髪」でした。人と人とをつなぎ、関係を編み上げるものは、食べものに限られている訳ではありません。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 小谷あゆみさんの「ニュー農マル」(霞ヶ関ばたけ)[9/5]
 https://food-mileage.jp/2020/09/05/blog-277/

〇 ワンヘルス、雨水利用、野菜のネット直販、目先の米需給など[9/8]
 https://food-mileage.jp/2020/09/08/blog-278/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ インターネットセミナー「気候崩壊について知ろう」
 〜これからの10年が人類の未来を決める(全3回、9月コース)
 日時:2020年9月15、22、29日(火)20:00〜22:00
 場所:オンライン(Zoom)
 主催:母なる地球を守ろう研究所
(詳細、問合せ等↓)
 https://www.motherearthresearchinstitute.org/%E6%B0%97%E5%80%99%E5%B4%A9%E5%A3%8A%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E7%9F%A5%E3%82%8D%E3%81%86/

○ オンライン連続セミナー「コロナ禍における協同組合の価値」(全5回)
 第2回「コロナ禍で激変する世界の食料生産-生協・農協への期待と課題」
  講師:柴田明夫氏(株式会社資源・食糧問題研究所代表)
 日時:2020年9月26日(土)14:00〜15:30
 場所:オンライン(Zoom)
 主催:(一社)市民セクター政策機構
   (特非)「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
(詳細、問合せ等↓)
 http://jacses.org/700/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「これからは、自分で食べものを作るのが普通になるかも」
「ニュー農(ノー)マルね」
 注:ネタの著作権はベジアナ・小谷あゆみさんにあります。

 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
  https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.202は10月1日(木)[和暦 葉月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也

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 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
  https://food-mileage.jp/category/blog/