【メルマガ】F.M.Letter No.202

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.201◇
 2020年10月1日(木)[和暦 葉月十五日]
────────────────────
◆ F.M.豆知識  買物と持続可能性
◆ O.カレント  エシカル消費とは
◆ ほんのさわり 末吉里花『はじめてのエシカル』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
────────────────────
 カレンダーは早くも10月。今年は天候不順から一転して猛暑、そして秋の深まりも早いようです。気候変化が年々、極端になっているのかも知れません。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、中秋の今号はエシカル消費を取り上げました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−買物と持続可能性−

持続可能性(Sustainability)という概念が最初に提起されたのは、1987年の「ブルントラント報告」(国連環境と開発に関する世界委員会、1987)とされ、1992年の地球サミット等を経て、現在の国連「持続可能な開発目標」(SDGs)に受け継がれています。
 その目標 12.は「持続可能な生産消費形態を確保する」。一人ひとりが持続可能な消費形態をとる(買い物をする)ことが求められています。

 リンク先の図202は、PwC(PricewaterhouseCoopers)『世界の消費者意識調査2020』の一部で、農水省勉強会における矢矧晴彦氏(PwCコンサルティング合同会社)の講演資料を引用・加工させて頂いたものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/09/202_kaimono2.pdf

 これによると、日本の消費者はアメリカやイギリスの消費者と比較して、総じて買い物の際に持続可能性の観点で気を付けている項目は少ないことが分かります。
 例えば、「できるだけプラスチックの使用を避ける」日本の消費者の割合(13%)はイギリス(41%)より28ポイント少なく、「持続可能な形で業務を行うブランドを選ぶ」消費者の割合(11%)はアメリカ(29%)よりも18ポイント低くなっています。なお、唯一、「産地が明確に特定できる商品を選ぶ」日本の消費者の割合(16%)はアメリカ(14%)、イギリス(17%)と大きな差はありません。
 一方、「持続可能性には関心がない」とする消費者の割合は、アメリカ(23%)、イギリス(18%)に対して日本は(34%)と、11〜16ポイント高くなっていねのです。

 この結果からは、日本の消費者の持続可能性に対する意識は、相対的に低い水準に留まっていることが分かります。

[資料]
 PwC「世界の消費者調査2020」(農林水産省「第2回あふの環勉強会」資料より作成)
 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/being_sustainable/attach/pdf/scafff-0806-1.pdf

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−エシカル消費とは−

近年、持続可能な消費行動を表すキーワードとして、エシカル(Ethical)消費が注目されています。直訳すれば「倫理的消費」となります(堅いですね)。

 消費者庁では、2015年5月から2年間にわたって調査研究会を開催し、倫理的消費の普及に向けた調査や議論を行いました。
 そのとりまとめによると、持続可能性の観点から喫緊の社会的課題は多く、課題解決には消費者一人ひとりの行動が不可欠かつ有効で、「安さ」「便利さ」に隠れされている社会的費用を意識することが必要とされ、倫理的消費(エシカル消費)の重要性を指摘しています。

 また、その定義は、「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」とのこと。

 そして、倫理的消費普及のためには、国民全体による幅広い議論の喚起とムーブメントづくり、学校教育などを通じた消費者の意識の向上、事業者と消費者とのコミュニケーションの促進等が必要とされています。

 エシカル消費の必要性や推進方策についてはこの研究会で整理されている通りですが、それを日本国民一人ひとりの「自分ゴト」に落とし込み、具体的な行動に結びついていくことが重要です。

[参考]
 消費者庁ホームページ「エシカル消費普及・啓発活動」
 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awareness/ethical/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−末吉里花『はじめてのエシカル』(山川出版社、2016.11)−
 https://www.yamakawa.co.jp/product/15107

著者は1976年ニューヨーク生まれ。TBS系テレビ『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅するうち、地球環境が危機的状況にあることを痛感し、2015年に(一社)エシカル協会設立された方。

 本書では、ともすれば「堅く」捉えられがちなエシカル消費を、分かりやすく、身近で、誰でも取り組むことができるものとして紹介されています。
 すなわち、エシカル消費とは「私たちの良心と結びついていて、人や社会、環境に配慮されている」消費で、言い換えれば「エいきょうを、シっかりと、カんがえル」ものとのこと。日本の伝統的な「お互いさま」「おかげさまで」「もったいない」にも通じるそうです。
 地産地消やフード・マイレージ削減の重要性に関する記述もあります。

 そして、「自分の暮らしを大事にしながら、無理をせずに、普段の買い物をちょっと見直していく。そんな小さなことが、あなたの暮らしを変え、世界を変えていく」「毎日を楽しみながら、『私にいい』と『世界にいい』をつなげていく」等と訴えています。

 巻末のエシカルショッピングガイドも参考になります。
 ところが掲載されている企業等の多くが(日本の企業も含め)アルファベット表記。このようなところにもエシカル消費がまだ日本に根付いていないことが現れているのかも知れません。

[参考]
 一般社団法人 エシカル協会
 https://ethicaljapan.org/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 エシカルとは(ほか備忘的に)[9/19]
 https://food-mileage.jp/2020/09/19/blog-279/

〇 西伊豆満喫ツアー(農商工連携サポートセンター)[9/28]
 https://food-mileage.jp/2020/09/28/blog-280/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ ロータスシネマ29『気候戦士』
 日時:2020年10月10日(土)16:30 〜18:30 (火)
 場所:常円寺(東京・西新宿7)
 主催:NPO法人ロータスプロジェクト
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/688219205378234

○ 奥沢ブッククラブ 第60回「ひらけ!モトム」
 日時:10月12日(月)19:00〜21:00
 場所:オンライン
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/2812692458959706

○ オンライン連続セミナー「コロナ禍における協同組合の価値」【全5回】
 第3回「“エッセンシャル・ワーカー”としてのワーカーズ・コレクティブの価値」
 講師:田中夏子氏(長野県高齢者生協理事長)
 日時:2020年10月17日(土)14:00〜15:30
 場所:オンライン
 主催:(一社)市民セクター政策機構
   (特非)「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
 (詳細、問合せ等↓)
 http://jacses.org/700/

────────────────────
*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 「行進に参加することで、関心のない人の心にも火をつけることができるかも」
 「えっ、本当に?」
 「マーチ(マッチ)だけに」
 9月25日は世界気候アクションデーでした。

 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
  https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.203は10月17日(土)[和暦 長月朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
────────────────────
◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也

(購読(無料)登録はこちらから)
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html

 発行システム:『まぐまぐ!』
  https://www.mag2.com/

 バックナンバー
  https://food-mileage.jp/category/mm/

 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  https://food-mileage.jp/

 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
  https://food-mileage.jp/category/blog/