【メルマガ】F.M.Letter No.203

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.203◇
 2020年10月17日(土)[和暦 長月朔日]
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◆ F.M.豆知識  農福連携の効果
◆ O.カレント  農福連携とは
◆ ほんのさわり 岩下紘己『ひらけ!モトム』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 昨日(10月16日)は、世界の飢餓の問題についての行動を促す日として国連が定めた世界食料デーでした。また、今年のノーベル平和賞は長年にわたって食料援助等に取り組んできたWFP(国連世界食糧計画)の受賞が決定。これらをきっかけに、改めて世界と私たちの食べものについて考えたいものです。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は障がい者のことについて取り上げました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−農福連携の効果−

近年、農業分野と福祉分野が連携して障がい者等の農業分野への就労等を促進する「農福連携」の取組みが拡がっています(詳しくは次の「オーシャン・カレント欄」参照)。
 農福連携は、農業者及び障がい者の双方に、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
 リンク先の図203は(一社)日本基金が実施したアンケート調査結果の一部です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/10/203_nofuku.pdf

 障がい者を雇用または福祉事業所等に農作業を委託している農家等(回答数 126)に対するアンケート調査結果によると、83%の農業者が障がい者を受け入れることにより収益面での効果があったとしており、具体的には、農作業の労働力確保によって営業等の時間が増えた、作業の見直しにより効率が向上した等の効果があったとしています。

 一方、農福連携に取り組んでいる福祉事業者(回答数777)に対するアンケート調査結果によると、89%が農福連携の「効果があった」と回答しており、具体的には、体力がついた、表情が明るくなった等の効果があったとしています。

 同時に、本アンケートでは、障がい者に通年で働いてもらうための工夫、障がい者とのコミュニケーション等の課題も明らかになっています。

[資料]
 一般社団法人 日本基金「平成30年度 農福連携の効果と課題に関する調査結果」
 https://www.nipponkikin.com/survey-research.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−農福連携とは−

 写真:全国農福連携推進協議会ホームページ

農福連携とは、農業分野と福祉分野が連携して、障がい者や生活困窮者、高齢者等の農業分野への就農・就労を促進する取組みのことで、農業分野における働き手の確保や荒廃農地の解消、障がい者等の社会参画を促す等の効果が期待されます。

 農福連携という言葉自体は2010年頃から出てきた比較的新しいものですが、農作業や自然とかかわることが障がい者等の心身の健康回復に効果があることは以前から知られており、園芸療法に取り組む事業者は1950年代から存在していました。さらに農業分野の課題も同時に解決としようとする取組みが、農福連携です。

 農福連携の推進については国の各種ビジョン等にも位置付けられており、2017年には全国農福連携推進協議会が設立され、ノウフク・アワードやセミナーの実施、ノウフクJASの普及、オンラインショップの運営等もなされています。

 今後、連帯経済の構築や地域コミュニティ維持等の観点からも、農福連携の取組みの拡がりが期待されます。

[参考]
 全国農福連携推進協議会
 https://noufuku.jp/
 ノウフク・オンラインショップ
 https://noufuku.shop/
 吉田行郷、里見喜久夫『農福連携が農業と地域をおもしろくする』(2020.1、コトノネ)
 http://kotonone.jp/collabo/collabo08.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−岩下紘己『ひらけ!モトム』(出版舎ジグ、2020.9)−
 https://jig-jig.com/published-book/jig-03/

岩下 紘己(ひろき)さんは1996年生まれで、今春、慶応大を卒業し、現在は立命館大大学院に在籍されている方。
 学生時代、重度身体障がい者である上田 要(モトム)さんの週1回の泊まり介助を担当しつつ、ベッド脇でモトムさんのライフストーリーを聞き取られました。
 その内容は卒業論文にまとめられ、さらに、それをベースに刊行されたのが本書です。
 ケアを通じた。いわば「魂」の交流の様子がつづられています。さらには、単なるルポにとどまらず、障がい者やコミュニケーションをめぐる様々な社会学的な考察(既存学説の参照、引用等)もなされています。
 一方、文章は読みやすく、モトムさんの年表や多数の写真も収録されています。

 去る10月12日(月)にオンライン開催された第60回奥沢ブッククラブ(著者も草創メンバーの一人)では、本書について感想や意見の交換が行われました。
 お互い顔見知りの参加者からは「著者の体験を追体験するような不思議な気持ちがした」「モトムさんの体温が自分にも伝わってくるように感じた」「私たちが住んでいる街の中で、若い人たちが助け合っている様子を知ることができて感動した」等の感想が述べられました。

 若き著者の今後の研究と実践の発展に、期待したいと思います。

[参考]
 第60回 奥沢ブッククラブ「ひらけ!モトム」(拙ブログより)
 https://food-mileage.jp/2020/10/15/blog-284/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 〇 近隣の公園歩きなど[10/6]
 https://food-mileage.jp/2020/10/06/blog-281/

〇 市民研。そして奥武蔵へ(1)[10/10]
 https://food-mileage.jp/2020/10/10/blog-282/

〇 第4回 経済・社会・財政を読む会(PP研)[10/13]
 https://food-mileage.jp/2020/10/13/blog-283/

〇 【ブログ】第60回 奥沢ブッククラブ「ひらけ!モトム」[10/15]
 https://food-mileage.jp/2020/10/15/blog-284/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ オンライン連続セミナー「コロナ禍における協同組合の価値」【全5回】
 第4回「“エッセンシャル・ワーカー”としてのワーカーズ・コレクティブの価値」
  講師:田中夏子氏(長野県高齢者生協理事長)
  日時:2020年10月17日(土)14:00〜15:30
 第5回「地域循環共生圏の形成と分散型エネルギーシステムの構築に向けて(仮題)」
  講師:和田篤也氏(環境省総合環境政策統括官)
  日時:2020年11月7日(土)14時〜15時30分
 場所:オンライン
 主催:(一社)市民セクター政策機構
   (特非)「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
(詳細、問合せ等↓)
 http://jacses.org/700/

○ 連続講座「日本の市民科学者─その系譜を描く」【全12回】
 第2回 反核・反原発と日本の科学者−高木仁三郎を主にして
 日時:2020年11月13日(金)19:00〜21:00
 場所:市民科学研究室事務所(東京・文京区湯島)及びオンライン
 主催:NPO法人市民科学研究室、白順社
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/csijseminar_citizenscientists_2020_2021/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「今夜もご馳走ね。世界では食べられない人もいるのに」
「気が(飢餓)とがめるね」
 世界の飢餓人口は6億9千万人。近年、増加傾向にあります。

コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.204は10月31日(土)[和暦 長月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也

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