【ブログ】2020年暮れのウルトラマン

異例続きだった2020年も、いよいよ押し詰まってきました。
 12月25日(金)も快晴。日本海側や山間いの大雪とは異なり、東京地方はしばらく降水がありません。

 自宅近くに借りている市民農園も豊作。趣味なら無邪気に喜べますが、11年ぶりという野菜価格の低迷は気がかりです。
 大根を引っこ抜き、鎌でキャベツを収穫(キャベツの刃? 錆びてるな~)。

その野菜を抱えて、久しぶりに都心へ。
 不要不急の外出自粛が呼びかけられていますが、この日だけは特別にお見逃しを。

最初に向かったのは東京・御茶ノ水。
 JRお茶の水駅・聖橋口すぐの広場でお茶の水サンクレールマルシェが開催されています。こだわりの地域特産品を扱っておられる知り合いの方も出店されており、熊本・湯前町のなすの辛子漬、岡山・新庄村の玄米豆餅や、タイ産のデーツ等を求めさせて頂きました。

 主催者の方に話を伺うと、コロナ禍により自宅で食事をする人が増えたせいか、今年の売上げは好調だったとのこと。
 いずれにしても、この方のようにコーディネートして下さる方がおられることが貴重です。

このマルシェの開催日は毎月第2・第4の木・金曜ですが、本日と明日(29日(火))も歳末特別マルシェが開催されています。

続いて向かったのは小田急線の祖師谷大蔵。駅前には地球を救うウルトラマンの姿。

 北口からほど近い商店街にあるゴホウビダイナーは、ハンバーガーとクラフトビールがメインのお店で、本年1月以来の2回目の訪問です。
 とにかく食材にこだわり、顔の見える生産者さんから直接仕入れておられるとのこと。店内やメニューブックも食材や生産者の紹介であふれています(拙メルマガでも紹介させて頂いています)。

この日頂いたのは、クラフトビール飲み比べセットと忍者バーガー。国産食材を使った和風ハンバーガーには、大根の煮物が挟まれています(すごいボリュームです)。

 最近は価格低迷に苦しむ野菜生産者の方を支援しようと、店頭で芋煮の実演販売にも取り組まれているオーナーシェフの方の姿が、地域の農業を救うウルトラマンにダブりました。

最後の訪問地は東京・神田の47都道府県レストラン・箕と環 -MINO TO WA-
 その名前の通り、東京にいて47都道府県の美味しいものが味わえるというお店。こちらも若きオーナーの方が、つながりのある生産者の方の食材を直接取り寄せています。

 実はこの日は、ポケットマルシェの高橋博之社長や生産者の方を招いての毎年恒例の車座座談会・忘年会が予定されていたのですが、コロナ感染が再拡大しているために中止になってしまったのです(昨年の様子はこちら)。
 中心になって準備されていた幹事の方が数名集まられると聞き、顔を出させて頂いたのです。

淡路島の鰆のタタキ、滋賀の琵琶サーモンの腹子、秋田のきりたんぽ鍋など、地域の美味しい食材を使ったお料理を頂きました。
 参加者のお一人、巻き寿司大使のM子さんは、自作の特製巻き寿司(クリスマスバージョン)を持ってきて下さいました。

 私は大根、キャベツとともに「上堰米のお酒」を持参。福島・喜多方市山都の棚田のお米で、「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」の皆さんが作っておられるお酒です。
 江戸時代から続く堰(せき。用水路のこと)で水を引いている棚田も、生産者の方の高齢化が進み、いつまで米作りが続けられるかという状況と伺っています。

 少人数、小さな声の忘年会(?)ながら、それなりに盛り上がりました。

12月27日(日)の17時からは、(おそらく今年最後の)オンラインセミナーに参加。
 (一社)縮小社会研究会の第49回研究会で、講師は篠原 孝 衆議院議員です(長野1区、立憲民主党)。

 実は篠原先生は、私が2001年に農林水産政策研究所に異動した時の所長(上司)。かねて環境問題等に造詣の深かった篠原所長は、その頃、イギリスのフード・マイレージ運動(なるべく近くでとれた食料を消費することによって、食料輸送に伴う環境負荷を削減しようという運動)に着目し、「フード・マイレージ」と耳に響きやすい用語に変更して、マスコミ等を通じて紹介されていました。

 その所長(当時)の指導の下、輸入食料のフード・マイレージを試算し各国比較したのが、私のライフワークとなったフード・マイレージとの出会いだったのです。
 本の出版といった得難い経験をできたのも、篠原先生のお蔭です。

その篠原先生のこの日の講演のテーマは、「日本の農業・農村の衰退と再生の道」。
 共有して下さったレジュメに沿った講演は、一部のみですが、以下のような内容でした(文責・中田)。

「農業・農村は衰退する一方だが、特に林業は厳しい状況。この背景には、1951年以降に関税を撤廃していったという政策的な要因がある。米の価格も半分強に下がっているが、木材価格は4分の1にまで低下している」

「かつて米1俵の値段はサラリーマンの1か月分の給与と同程度だった。財界等からは農業は過保護と批判する声も根強いが、日本は農林業を大事にしていない。ヨーロッパ等では補助金により農業を維持。農村景観は観光面でも不可欠」

 東京一極集中(江戸時代は人口の30分の1が江戸に集中していたが、現在は4分の1が東京圏に集中)や花までも輸入していることの異常さ、成立した労働者協同組合法への期待等にも言及されました。

 そして「地産地消、旬産旬消が大事。食べものをどこで誰が作っているかについて、思いを馳せることのできる国民になってほしい」と、まとめられました。

 以前と変わらない鋭い舌鋒でしたが、決められた時間通りに話をまとめ、チャットで寄せられていた質問にも答えられていた様子には、篠原先生の真摯さを伺われました。

 講演の中でも触れられていましたが、ブログやメルマガでも積極的に情報発信を続けておられるようです。
 農政を含めて混迷が続く現在、政治の世界で「正論」を言い続けることのご苦労は想像もつきませんが、僭越ながら、益々のご活躍をお祈りしたいと思います。

ところで先日、北條民雄についてのオンラインイベント(日本ペンクラブ、東村山市の共催)に参加したこともあり、久しぶりに多磨全生園を訪ねてみました。自宅からは自転車で10分弱です。

 ヒイラギの生け垣、かつて偏見と差別の下にあったハンセン病の入所者の方たちが外の世界を眺めたという「望郷の丘」。
 1950年代に入所者の方たちが植えたという桜並木は、冬空に向けて幹や枝を力強く伸ばし、春を待っています。

 年末になっても感染拡大の勢いは収束していません。ウルトラマンが地球の危機を助けに来てくれないかな。
 来る2021年が、どうか平穏で明るい年になりますよう。