【メルマガ】F.M.Letter No.213

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.213◇
 2021年3月13日(土)[和暦 如月朔日]
────────────────────
◆ F.M.豆知識  2020年の世界のCO2排出量
◆ O.カレント  被災市町村「復興度」アンケート
◆ ほんのさわり 國分功一郎『原子力時代における哲学』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
────────────────────
 和暦では如月に入りました。
 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から丸10年。久しぶりに訪れた福島・浜通りでは、改めて原発事故の罪深さを痛感しました。
 本メルマガは、時の流れを体感するため和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−2020年の世界のCO2排出量−

去る3月2日(火)、国際エネルギー機関(IEA)は2020年までの二酸化炭素(CO2、エネルギー起源)排出量を公表しました(リンク先の図213)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/03/213_IEA.pdf

これによると、2020年の世界のエネルギー起源のCO2排出量は315億トンとなり、前年から5.8%(20億トン)減少しました。これは第2次世界大戦以降で最大の減少幅であり、絶対量としては欧州連合の排出量に相当し、人類の歴史上前例のないものとのことです。
 特に、新型コロナ感染症の拡大に伴うロックダウン等により、国際及び国内移動が制限されたため、運輸セクターのCO2排出量は14%と大きく減少しています。

感染症という予期せぬ(望まない)要因によるものとはいえ、世界のエネルギー消費量(CO2)は右肩上がりで推移するものであるといった「常識」は、否定されたのです。
 もっとも2020年12月には前年同月比2%の増加に転じており、IEAは「2021年には一転して著しく増加するリスクがある」という警鐘も鳴らしています。

[資料]
 IEA“Global Energy Review: CO2 Emissions in 2020”
 https://www.iea.org/articles/global-energy-review-co2-emissions-in-2020

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−被災市町村「復興度」アンケート−

(河北新報社HPより)

河北新報社(宮城・仙台市)は3月1日(月)、東日本大震災で津波被害を受け、あるいは原発事故により避難区域が設定された岩手(12)、宮城、福島(各15)の計42市町村の首長を対象としたアンケート調査結果を公表しました。
 これによると、復興の進み具合を0〜100%の数値で示す「復興度」については、岩手、宮城では「90%以上」と考える首長が9割以上を占めています。これら両県では、大半の首長が復興は総仕上げの段階に入ったと認識していることが伺えます。

ところが、福島県では過半数の首長が復興度は「30〜70%」と回答しており、原発事故の影響が明らかとなっています。
 また、復興の完了時期の見通しについては、3県で「2021年度末ごろ」が7人、「25年度末ごろ」が5人等となっていますが、福島県内では7人が「見通せない」と回答しています。

いずれも甚大な被害を被った3県ですが、原発被災地である福島県と他の2県との間では、10年目となって復興の進捗状況の格差が顕著となってきているのです。

(参考)
 被災3県42首長アンケート(河北新報社HP)
 https://kahoku.news/articles/20210301khn000013.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−國分功一郎『原子力時代における哲学』(晶文社、2019/9)−
 https://www.shobunsha.co.jp/?p=5494

東電福島第一原発の事故を受けて「原発をなくしたいと心の底から思っている」著者が、2013年に行った連続講座「原子力時代の哲学」の記録です。ともすれば難しい哲学の用語なども、一般市民向けに分かりやすく解説してくれています。

科学技術に酔っていた1950年代、核兵器ではなく原子力という技術(「核の平和利用」)自体の危険性を正面から指摘した唯一の哲学者が、ハイデッガーでした。

人類は、地上の生態系を超越した原子力技術を開発・獲得したことにより、まるで神になったかのような錯覚(全能感)に浸りました。
 ハイデッガーは、想像できないほど強大な原子力をいかに制御・操縦するか、事故等により人類のみならず一切を壊滅させる恐れがあるのではないかという危機感と問題意識を明らかにしました(1955年の講演(『放下』)。

ハイデッガーは、技術の歴史的進行は否定できないとしつつ、人間がものを考えなくなっている(考えることから逃げている)ことに無気味さと強い危機感を抱き、身近なこと(土着性)に根差した熟慮(省察する思惟)が必要であると主張します。
 なお、土着性とは古き良き失われた何かではなく、熟慮するなかで自ら獲得するもの(「来るべき土着性」)としています。

このようなハイデッガーの主張は、(我田引水ですが)エネルギーにも地産地消的な観点が必要であることを象徴しているように私には読めました。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 高坂勝さん「適疎へ」(脱成長MTG)[2/28]
 https://food-mileage.jp/2021/02/28/blog-305/

〇 奥沢ブッククラブ『モモ』[3/13]
 https://food-mileage.jp/2021/03/13/blog-306/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ お蔵フェスタオンライン -寺田聡美の発酵ご飯
 日時:2020年3月14日(日)10:00〜11:30
 場所:オンライン
 主催:寺田本家(千葉・神崎町)
 (詳細、問合せ等↓)
 https://okurafestaonline2021cooking.peatix.com/

○ TV科学番組を語り合う講座「NHK未来への分岐点2−水・食料クライシス」
 日時:2020年3月17日(水)19:00〜20:00
 場所:オンライン
 主催:NPO法人市民科学研究室
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/tvsciencedocumentary/

────────────────────
*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 「どうして謝罪会見に社長が出てこないんだ! 本人を出せ!」
 「ひな壇だけに、代理(内裏)がつきものかと」

 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.214は3月27日(土)[和暦 如月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
  https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
────────────────────
◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
(購読(無料)登録はこちらから)
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 発行システム:『まぐまぐ!』
  https://www.mag2.com/
 バックナンバー
  https://food-mileage.jp/category/mm/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  https://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
  https://food-mileage.jp/category/blog/