【ブログ】CS福島シンポジウム(これからの10年)

もうすぐGW。
 玄関先では蘭が満開、スダチも白い蕾が膨らんできました。近所では白い藤が満開。
 今年の初夏の訪れは早いようです。

行楽シーズンのなかの2021年4月25日(日)、4都府県を対象に3度目の緊急事態宣言が発令されました。
 まさにその当日の NPO法人 CSまちデザイン主催「CS福島シンポジウム 福島第一原発事故 ~あれから10年、これからの10年~」は、福島から上京される予定だったお2人の報告者の方も、急遽、オンライン中継に変更。私もオンライン参加となりました。
 久しぶりに皆様とお目に掛かれることを楽しみにしていたので、残念です。
 なお、講師の方の詳しい資料は事前に送って下さっています。

 14時を回り、進行役の榊田みどりさん(CSまちデザイン理事、農業ジャーナリスト)により開会。
 「東日本大震災、東電福島第一原発の事故から丸10年。この間、現場の方々は悩み憤りつつも、前に歩んで来られた。今もプロセスは途中だが、ともすれば福島だけの話と矮小化されつつあるのではと危惧している。一人ひとりが『自分ゴト』として捉え、これからの10年を考えるシンポジウムとしたい」

続いて近藤恵津子理事長から、CSまちデザインとしての取組みについて報告。
 「CSとして20年間、活動を続けてきた。
 東日本大震災と原発事故後の10年間は、東京で様々な『福島応援講座』を実施するとともに、コロナ禍前までは毎年、現地へのスタディツアーを行ってきた。亡くなられた大江正章さんも理事として中心になって活動して下さった。
 今日は10年の節目に改めて捉え直し、脱原発に向けてどう行動すべきか考えたい」

この日の報告者は、菅野正寿さん(福島・二本松市東和、NPO法人ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会、農家民宿『遊雲の里ファーム』)と、林薫平先生(福島大学農学群食農学類農業経営学コース准教授)です。
 お2人一緒に、菅野さんが自宅隣で経営されている農家民宿からの中継です。

まず林先生から、福島県の漁業の現状等についてご報告(以下、文責は中田)。
 「原発事故後、福島県の漁業関係者は試験操業スキームを創出し運用してきた。廃炉に巻き込まれず、突き放すということもせずという姿勢。沿岸漁業の漁獲量は事故前の2割程度まで回復してきた。消費地市場でも評価が高まり、『常磐もの』をしっかりと消費者に届けるための直送便やフェスティバルにも取り組んでいる」

 「流通業者からは、量を増やしてくれないと待ち切れない等の声も出ており、県内を含む流通の回復など、地域を立て直すために解決しなければならない課題が山ほどあるのが現状」

(右は当日の林先生ご報告資料より)

「そしてようやく本格操業(本来の姿)に向けたステップが浮上してきたのと同じタイミングで、処理水の海洋放出の方針が政府により決定された。これまでの全ての協議を振り出しに戻すようなもの。
 これまで支援してきてくれた多くの関係者、団体が心配してくれているが、支援されているような、プレッシャーをかけられているような、つらい状況にある」

 「政府・東電は『復興と廃炉の両立』と言うが、作られた“両立”ではないか。何が本当の両立か、福島の方から主張していく必要がある。 
 今後、全国の生協等で積極的に扱ってもらうなど、産直や提携の取組みが一層重要になる。福島の現状を踏まえた現実的な復興のあり方について、ともに考えていきたい」

続いて菅野正寿さんから「持続可能な環境・循環・共生の社会をつくるために」と題してご報告。
 「10年間の支援に感謝。漁業だけの問題ではなく、現在も原木、山菜など山林の再生は手つかずという現状。大震災・原発事故の教訓をコロナ禍にも生かす必要がある」

「福島・二本松市東和地区では、輸入農産物の急増や平成の大合併が進められる中、住民主体の地域づくりに取り組んできた。
 原発事故後は、地域で話し合い悩みながらも、とにかく耕して種をまくことが重要と考え、大学研究者とも協働して実態調査と検証を行った。その結果、有機的土壌が放射性セシウムを固定するメカニズム等が明らかとなった。
 数年前にチェルノブイリを訪ねた時も、日本の土壌の豊かさを実感」

 「近隣の木幡山には『天明為民の碑』がある。大飢饉を教訓にして農業が多様化し、食文化も豊かになった。過去の災害を忘れず教訓とすることが必要」

 「コロナ後は農の時代。作物を育てることは人を育て社会を育て、感性も育てる。
 地域内循環だけではなく、都市との共生・共感関係を作っていくことも重要。農業、農村の価値を都市の消費者にも伝えていきたい。せひ現場にも来て頂きたい。今日参加されている皆様のコーディネートにも期待」

休憩を挟み、15時前から後半のパネルディスカッション。
 冒頭、行友 弥さん(CSまちデザイン理事、農林中金総合研究所)から、原発事故被災地における農業・農村の現状について分かりやすく説明して下さいました。

続いてチャットに書き込まれた質問に対する回答として、林先生から、
 「(廃炉と復興の両立とは)廃炉のスケジュールとの関係で、一昨年末頃から東電が使い始めた言葉。福島県の方から復興のあり方について主張していくことが必要」

 「(代替案について)政府・東電は陸上保管、大気放出など全ての代替案を検討したとしている。中間貯蔵施設にタンクを増設する等の案も東京の環境団体などから出されているが、ようやく住民の苦しい判断を経て設置した中間貯蔵施設の区域に追加的に汚染物質を置くという選択肢は、地元の感覚としては非常に過酷なものであり、漁業者もそれを望んでいるのではなく、辛いことは一緒だ。
 海か陸か大気か、どちらにしても福島県内という選択にいつの間にか追い込まれており、それがただでさえ10年前の事故以来苦労をしてきた福島県全体をさらに追い詰めつつあることに、放出反対・保管継続を叫ぶ東京の良識ある市民たちも本当は気づくべきだ」

この日は、福島・飯舘村から長正増夫さん、菅野宗夫さんも参加されていました。
 お2人とも一作年のCSツアーの際に大変お世話になった方です。

 まだ帰村されていない方も含めてエゴマの栽培と加工品づくり等に取り組んでいる長正さんは、住民主体の組織と取組みの重要性を指摘されるとともに、処理水を含む原発事故処理は将来世代に先送りできないと強調されました。

 ふくしま再生の会の副理事長でもある菅野宗夫さんからは「ぜひ、都会の心ある方々にも飯舘村に来て頂いて、一緒に活動してもらいたい」等の言葉を頂きました。

その後もチャット等で質疑応答や意見交換が続きました。

 菅野正寿さんからは
 「震災と原発事故で壊れたコミュニティの再生に取り組んできた。コロナ禍の今、これは全国に共通する課題ではないか。協働して取り組んでいきたい」等のコメントがありました。

 直接、お目に掛かれなかったのは残念でしたか、現地の空気を感じることのできた貴重なシンポジウムでした。
 CSの福島応援講座、スタディツアーがどうなるか不透明ですが、機会があれば、また現地を訪ねたいと思います。また、これまで福島との縁が薄かった「普通の」人たちにも、ぜひ現地に足を運び、交流して頂きたいと思いました。

ちなみにこの日の私の zoom の背景は、2018年のCSツアーの時のもの。
 この日はいわき市で林先生の講義を受けた後、昼食に美味しいメヒカリ、ヤナギカレイ、サンマ等を頂いたことを昨日のように思い出されます。

 処理水問題がどのような経過をたどるにしても、個人としては「常磐もの」のファンであり続けると思います。

ということで、4月27日(火)は隣町(東京・東久留米市)のイオンへ。
 この店舗では、福島県、福島県漁協(JF福島)と共同で「福島鮮魚便」のコーナーが設置されています。販売員の方の説明を聞きつつ「カレイ」、アサリ、ムール貝(アクアパッツァのセット)を求めさせて頂きました。

妻がスマホでレシピを見ながら「華麗」な料理に。ご馳走様でした。