◇フード・マイレージ資料室通信 No.218◇
2021年5月26日(水)[和暦 卯月十五日]
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◆ F.M.豆知識 農業体験学習の教育的効果
◆ O.カレント 小谷あゆみさん(ベジアナ、農ジャーナリスト)
◆ ほんのさわり 原田マハ『生きるぼくら』
◆ 情報ひろば 【新規】食と農の市民談話会。その他ブログ更新、イベント情報等
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今夜は、皆既スーパームーン食はみられるでしょうか。
さて、今号は体験等を通じて食べものや農業を「自分ゴト」とすることの大切さについて考えてみました。6月からは「食と農の市民談話会」(NPO市民研主催)が始まります。
本メルマガは、時の流れを体感するため和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−農業体験学習の教育的効果−

体験活動が食べものや農業に対する意識の変化につながることについては、様々な研究成果があります。
リンク先の図218は、農業体験学習の教育的効果について、全国の公立小学校を対象としたアンケート調査結果を示したものです。回答者は農業体験学習を担当した経験のある教員で、有効回答数は210です。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/05/218_taiken.pdf
これによると、農業体験学習が有する教育的効果として、「作物を収穫する喜びや充実感を味わう」について「そう思う」「ややそう思う」との回答割合は95%、「自然や生き物を大切にする気持ちが育つ」については同90%、「食べ物を大切にする気持ちが育つ」は同82%となっています。
また、食べ物(同78%)、農業(同68%)、地域(同51%)についての「知識・理解が深まる」効果も高いものとなっています。
また、同調査では、学校内で完結するのではなく、農家の協力を得たり、農村地域へ出かけたりすることが効果的であることも明らかとされています。
このように、自ら体験することには様々な教育的効果があるのです。
[資料]
山田伊澄『農業体験学習の実証分析』(2016.3、農林統計協会)
http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_54104077/
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−小谷あゆみさん(ベジアナ、農ジャーナリスト)−

小谷あゆみさんは、野菜をつくるフリーアナウンサー(ベジアナ)、農ジャーナリスト。
兵庫・尼崎市生まれ、高知県黒潮町出身。石川県のテレビ局のアナウンサーとして活躍された後フリーに。NHK「ハートネットTV〜介護百人一首」の司会を毒蝮三太夫氏と務められるなど、多くのテレビ・ラジオ番組に出演されています。
また、ご自身も世田谷区の体験農園で野菜をつくりながら、全国各地の農山村を取材し、農業専門紙の連載やご自身の動画などを通じて積極的に情報発信されています。農林水産省の審議会委員等も務められています。
小谷さんが提唱されているのは「1億農ライフ」。
国民全員が何らかのかたちで「農」に関わること(日本中のみんなが暮らしに農を取り入れ「自分ごと」にすること)で、作物を育てる苦労や喜びを知れば、食べものを見る目も変わり、食品ロスは減り、農への理解も深まると訴えます。そればかりか、都市住民自身が命を育む「つくる側」になることで、自己肯定感が高まるといいます。誰かに与えて喜ばれる側と人に与えてもらう側、どちらが心がハッピーか。都市の生きづらさの解決策としての「農ライフ論」です。
コロナ禍で農山村を訪ねる機会は限られている一方で、ベランダ菜園や市民農園など、自ら農作物を作る動きが広まりつつあります(この世界的な傾向を小谷さんは「ニュー農マル」と呼びます)。都市農業とは「どこでもドア(地域農業や農村の玄関口)」とのこと。
小谷さんの明るくて元気で楽しい情報発信は、人々のライフスタイルを変えつつあります。
なお、小谷さんには後述の「食農市民談話会」の第1回目に話題提供を頂く予定です。
(参考)
ブログ「ベジアナあゆ☆の野菜畑チャンネル」
http://ayumimaru1155.ameblo.jp/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−原田マハ『生きるぼくら』(2015.9、徳間文庫)−
https://www.tokuma.jp/book/b496237.html

高校時代にいじめにあって引きこもりとなった主人公は、24歳になった今も、昼夜パートで働く母親(父親とは離婚)に寄食中。毎日の食事はカップ麺とコンビニおにぎりばかり。食事とは、死ななければいいだけの「日常業務」にしか過ぎませんでした。
ある日、突然、母が蒸発して途方に暮れた彼は、母が遺した年賀状を頼りに、長野・蓼科の祖母を十数年ぶりに訪ねます。
ところが祖母は認知症を患い、彼の顔も名前も分かりません。それでも食べさせてくれたおにぎりやみそ汁の美味しさが、閉ざされていた彼の心を徐々に開いていきます。
彼は地域の人たちに助けてもらいながら、昨年まで祖母が作っていた田んぼで人生初めての米作りを始めます。戸惑う彼は祖母から「お米の力を信じて、とことんつき合ってあげなさい」と声を掛けられ、やがて「ぼくたち人間も自然の一部」であることに気づき、そして収穫した米で作ったおにぎりの「自然と人との、いのちの味」を噛み締めるのです。
米作り体験は、彼の「人生」そのものを変えたのです。
おにぎりや梅干しを、無性に食べたくなる小説です。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 【新規】「食と農の市民談話会」がスタートします。
https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeetings/
日本の食や農が抱えている様々な課題を「自分ゴト」とするための談話会を、NPO市民科学研究室の主催により、月1回、6回にわたりオンライン開催します。当日の進行は中田が担当します。
参加費は市民研会員は無料、その他の方は500円/回です(当日、参加できなくても後日、有料で動画を見ることもできます)。
スケジュール、話題提供して下さる方は以下の通りです。モニター上でお目にかかれるのを楽しみにしています。
第1回 6月 8日(火)19〜21時
「1億農ライフ〜都市のわたし達による食の革命」(仮題)
小谷あゆみさん(農業ジャーナリスト、ベジアナ)
(参考)https://ameblo.jp/ayumimaru1155/
第2回 7月13日(火)19〜21時
「私が帰還困難区域で牛を飼う理由」(仮題)
谷さつきさん(もーもーガーデン、(一社)ふるさとと心を守る友の会、福島・大熊町)
(参考)https://www.facebook.com/friends.fumane
第3回 8月10日(火)19〜21時
「現場から見える日本の食、農の課題」(仮題)
榊田みどりさん(農業ジャーナリスト)
(参考)https://www.zck.or.jp/site/column-article/5039.html
第4回 9月7日(火)19〜21時
「市民協働による関係人口づくりを通じた持続可能な社会づくり」(仮題)
大和田順子さん(同志社大学ソーシャル・イノベーションコース教授)
(参考)https://policy.doshisha.ac.jp/faculty/oowada/info.html
第5回 10月5日(火)19〜21時
「私がお寿司に巻き込んでいるもの」(仮題)
八幡名子さん(巻き寿司やさん、東京・八王子)
(参考)https://www.yahatameikomaki.com/
第6回 11月 9日(火)19〜21時
「食と資本主義の歴史ー人も自然も壊さない経済とは?」(仮題)
平賀 緑さん(京都橘大学准教授)
(参考)http://www.showado-kyoto.jp/book/b432689.html
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 読書はマジメに。[5/16]
https://food-mileage.jp/2021/05/16/blog-315/
〇 ベルトコンベアを探して(埼玉・高麗郷)[5/19]
https://food-mileage.jp/2021/05/19/blog-316/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ ロータスシネマ32『プラスチックの海』
日時:6月12日(土)15:00 〜17:30
場所:常円寺(東京・西新宿7)
主催:NPO法人ロータスプロジェクト
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/815506752711944/
○ 奥沢ブッククラブ第68回 大江健三郎『飼育』
日時:6月14日(月)19:00〜21:00
場所:オンライン
主催:奥沢ブッククラブ
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/4079261675488139
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「縄文人は、季節の移り変わりに敏感だったそうよ」
「そうなんですか」
「節気(石器)とともに暮らしていましたから」.
コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.219は6月10日(木)[和暦 皐月朔日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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