【豆知識】米の在庫量と小麦輸入量

コロナ禍、ウクライナ危機により世界的に食料安全保障に対する関心・懸念が高まるなか、日本においては主食である米が自給できていることが大きな強みとされています。
 リンク先の図241の棒グラフは、各年・各月末時点の米の民間在庫量(出荷段階+販売段階)の推移等を示したものです。収穫期(出来秋)には新米の在庫(青い部分)が増加し、その後、消費に伴って徐々に減少していることが分かります。
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棒グラフの赤い部分が古米(前年以前に生産された米)です(なお、在庫量の把握は毎年7月に年産が切り替わります)。
 また、折れ線グラフは古米在庫量の対前年同月末比を示したものですが、2020年以降、前年を20〜60%と大きく上回って推移していることが分かります。これは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って外食を中心に米の需要が減少したためで、古米在庫の増大が新米の取引価格の下落につながっているとして、農業関係者の間には危機感が高まっているのです。

一方、2021年の米の民間在庫量の平均は249万トンで、これに国の備蓄量(91万トン、2021年6月末時点)を合計すると340万トンとなりますが、これに対して、食糧用小麦の輸入量は451万トン(2022年見通し)と約1.3倍の水準です(右端の橙色の棒グラフ)。

過剰と捉えられがちな米の在庫(備蓄)量ですが、実は輸入小麦の全量を代替できる水準には無いこと、同時に現在の米の生産量で必要カロリーの全量を「自給」できる訳ではないことは、理解しておく必要があると思われます。

[資料]
農林水産省「米に関するマンスリーレポート」(2022年4月号、p.11)
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/attach/pdf/mr-182.pdf
同「米をめぐる状況について」(2022年2月、p.30)
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-6.pdf
同「麦の需給に関する見通し」(2022年3月、p.4)
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/attach/pdf/index-126.pdf

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.241、2022年5月1日(日)[和暦 卯月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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