【メルマガ】F.M.Letter No.261 -pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.261◇
 2023年2月20日(月)[和暦 如月朔日]
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◆ F.M.豆知識  書店数、平均販売額等の推移
◆ O.カレント  ヨコハマライブラリースクール(横浜市図書館)
◆ ほんのさわり 田口幹人『まちの本屋』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦では如月(きさらぎ)に入りました。寒さが残る「衣更着月」ですが、明るい日差しに春を感じるようになりました。それにしてもトルコ、シリア大地震の惨状には目を覆います。本当に、戦争なんかしている場合ではありません。
 今号は少し食や農から離れて「本」のことを考えてみます。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録して下さっている皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−書店数、平均販売額等の推移−

農家数の減少が危機感をもって語られる機会は多いですが、実は書店数も大きく減少しています。
 リンク先のグラフは、全国の書店数等の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/02/261_shoten.pdf

おおむね3年ごとに実施されてきた経済産業省「商業統計」(2012、16年は「経済センサス」)によると、全国の「書籍・文房具小売業」の事業所数(棒グラフ)は1980年代には8万店近くありましたが、90年に入ってから減少のペースを速め、2016年には3万5千店弱とピーク時の4割強にまで減少しています(調査設計の変更により厳密には接続しません)。
 なお、同期間に販売農家数は3割弱へと減少しています。

一方、折れ線グラフは1事業所当たり平均の売場面積、年間商品販売額を示していますが、一貫して規模拡大が進んでいることが分かります。この間、郊外型ショッピングセンターでの大型書店の進出等により、中小規模の、いわゆる「町の本屋さん」の閉店が続いています。
 ちなみに昨年12月の出版化産業振興財団の調査によると、全国の市町村のうち書店のない市町村が26%を占めているそうです。

しかしながら2010年代に入ると、平均売場面積は増加を続けているものの、平均販売額は低迷しています。ライフスタイルの変化に伴い、書籍についてもネット販売が増えていること等が影響していると言われています。

ところで、本屋さんだけではなく、八百屋さん、肉屋さん、酒屋さんなども大きく減少しており、商店街が衰退しつつあります。社会学者の宮台真司先生は、この「空洞化」が地域コミュニティを崩壊させ、ひいては日本社会全体の「劣化」につながっていると見立てています(さらに、スローフード運動が共同体再構築のヒントとなるともしています)。
 これらのことについても、稿を改めて紹介できればと思っています。

 データの出典:
 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」、経済産業省「商業統計」から作成。
  https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syougyo/result-2.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
  https://food-mileage.jp/category/pr/

−ヨコハマライブラリー スクール(横浜市図書館)−
 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kyodo-manabi/library/shirabemono/library_school/

先にみたように、近年、書店数が減少するなかで、公共図書館数はほぼ一貫して増加しており(文部科学省「社会教育基本調査」)、図書館の役割は相対的に大きくなっているとも考えられます。

横浜市図書館が市民のために提供している「学ぶ楽しみの場」が、ヨコハマライブラリースクールです。
 「人と出会い、本と出合い、知識を深める「学び」を図書館から」をコンセプトに、専門家から最先端の知識を学ぶ講座や、生活上の課題解決に役立つ知識を学ぶ講座など幅広いテーマで開催されており、司書によるテーマに関連する図書の紹介もあります。

2022年度の第7回ヨコハマライブラリースクールでは、フード・マイレージについてお話させて頂きます。
 パンデミックやウクライナ危機により世界的に食料危機が顕在化するなか、例えば地産地消など、私たちに何ができるかについて参加者の皆さんとともに考えてみたいと思います。ご関心のある方の参加をお待ちしています。

テーマ:いま、フード・マイレージから考える私たちの食のこと
 日時:2023年3月4日(土)14:00〜16:00
 場所:横浜市中央図書館 5階第一会議室 及び オンライン(Zoom)
 定員:会場参加 30名/オンライン参加 50名(先着順)
 主催:横浜市温暖化対策統括本部(ヨコハマ・エコ・スクール)、横浜市中央図書館
 (詳細、申込み等)
  https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kyodo-manabi/library/shirabemono/library_school/r407libraryschool.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−田口幹人『まちの本屋−知を編み、血を継ぎ、地を耕す』(2019年5月、ポプラ文庫)−
 https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8101380.html

著者は1973年岩手県生まれ。盛岡市の書店での5年半の勤務を経て実家の書店を継ぐも、倒産。別の盛岡市内の書店に再就職し、独自の店づくりと情報発信によって全国的に注目された方です。

著者によると、「本屋は農業」とのこと。
 普段から客とのコミュニケーションを図り、常に棚にも手を加えて変えていくという(本屋を耕す)努力がなければ、いくらPOPやパネルを置いても、客との信頼感は生まれないとしています。

また、本屋は、地域と本の接点として、まちづくりや地域振興にも携わることができるともしています。
 郷土書の棚には、盛岡や岩手と関連する様々なジャンルの本を並べたそうです。例えば、岩手県の山村で耕し続けた人々の姿を描いた大牟羅 良『ものいわぬ農民』(1958)、田野畑村元開拓保健婦の岩見ヒサ『吾が住み処ここより他になし』(2010)には岩手県が原発を誘致しなかった理由にも触れられているそうです。

さらに、本の「地産地消」にも取り組みました。
 地元の宝を自分たちが再発見し、出版社に掛け合って本にしていくというもので、津波被災地で納棺師として活動した笹原留似子さんの『おもかげ復元師』は、全国的に評判となりました。

しかし、書店をめぐる経営環境の厳しさは本書でも繰り返し描かれています。著者自身も2019年、勤めていた書店を退職し、POPやパネルをすべて外しワゴンを解体した時の悔しさを吐露しています。
 「今までと同じやり方では本屋は生き残れない」とする著者は、現在、(特非)「読書の時間」理事長として、1人でも多くの“未来の読者”を創るための活動に取り組んでおられます。注目していきたいと思います。

[参考](特定非営利活動法人)読書の時間
 https://npodokusyonojikan.wixsite.com/info

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ ドキュメンタリー映画『発酵する民』[2/7]
 https://food-mileage.jp/2023/02/07/blog-417/

○ ぶらり歴史散歩〜滝山城址(東京・八王子)[2/11]
 https://food-mileage.jp/2023/02/11/blog-418/

▼ 筆者が登壇するイベントです(再掲。詳細は「オーシャン・カレント欄」をご覧ください)。

○ ヨコハマライブラリースクール(いま、フード・マイレージから考える私たちの食のこと)
 日時:2023年3月4日(土)14:00〜16:00
 場所:横浜市中央図書館(西区老松町)及び オンライン
 主催:横浜市温暖化対策統括本部、横浜市中央図書館
 (詳細、申込み等)
 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kyodo-manabi/library/shirabemono/library_school/r407libraryschool.html

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ オンライン講演会「よりよい未来は対話から」
 講師:安東量子さん(NPO法人福島ダイアログ理事長)
 日時:2月25日(土)14:00〜16:00
 場所:オンライン
 主催:(特非)大人の学校
 (詳細、問合せ等↓)
 http://otonanogakkou.org/

○ 麦踏み体験(湘南小麦・畑ツアー2023年)
 日時:2月26日(日)11:30〜15:30
 場所:伊勢原市大田公民館(神奈川・伊勢原市下谷)
 主催:麦踏み塾
 (詳細、問合せ等↓)
 http://www.mugifumi.com/

○ 日本疫学会誌 & UNSCEARレポート検証シンポジウム 日時:3月3日(金)17:00〜20:15
 場所:福島大学 /オンライン
 主催:3・3シンポジウム実行委員会
 (詳細、問合せ等↓)
 http://natureflow.web.fc2.com/HP/top1.html

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 まさか、ロシアによるウクライナ武力侵攻が1年も続くとは思ってもいませんでした。コツコツも間もなくお休み1周年。
 過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.262は3月6日(月)[和暦 如月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』(今回から2023年版)を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
  https://food-mileage.jp/category/blog/