【メルマガ】F.M.Letter No.277-pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.277◇
 2023年10月15日(日)[和暦 長月朔日]
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◆ F.M.豆知識  食品ロス量の推移(事業系と家庭系)
◆ O.カレント  食品ロス削減月間
◆ ほんのさわり 井出留美『あるものでまかなう生活』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 毎年10月16日は国連が定めた「世界食料デー」。世界では約7億3500万人、11人に1人が慢性的な栄養不足となっています。一方、日本では毎年10月は食品ロス削減月間。今号では食品ロスについて考えます。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−食品ロス量の推移(事業系と家庭系)−

日本の食品ロス(本来食べられるのに捨てられている食品)の量は、2021年の推計値で年間523万トン。これは毎日、大型(10トン)トラックで約1,433台分、一人当たりにすると毎日おにぎり1個分(114グラム)の食べものを捨てている計算になります。
 また、日本の年間ロス量は、国連世界食糧計画(WFP)による世界の食料支援量の約1.2倍に相当します。
 そのような大量の食品ロスは、どのような段階や理由で発生しているのでしょうか。リンク先のグラフをご覧ください。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/10/277_loss.pdf

右端の棒グラフが最新(2021年)の推計値です。
 その内訳をみると、事業系が279万トン(53%)、家庭系が244万トン(47%)とほぼ半々となっています。さらに家庭系の内訳をみると、食卓にのぼったのに食べ切られずに廃棄されたもの(食べ残し)が43%、賞味期限切れ等により手つかずのまま廃棄されたもの(直接廃棄)が43%、野菜の皮を厚くむき過ぎたなど食べられるはずなのに捨てられたもの(過剰除去)が14%となっています。

次に、近年における食品ロス量の推移をみると、現在のような調査が行われるようになった2013年以降で最もロス量が多かった2015年に比べると、19%とそれなりに減少していることが分かります。しかし、事業系は22%減少しているのに対して、家庭系は16%の減少にとどまっています。さらに家庭系の内訳をみると、直接廃棄は逆に27%増加(86→109万トン)しているのです。

現在、世界には7億人以上の栄養不足人口がいます。日本は、その世界から大量の食料を輸入し、その相当部分を廃棄している現状にあります。また、ごみ処理にはコストがかかりCO2も排出されます。さらには食料自給率向上の観点からも、食品ロスの削減は、真摯に取り組むべき重要な課題であることは間違いありません。そのためには(私自身も含む)消費者が大きな役割を担っているのです。

(資料)
 消費者庁「食品ロス削減関係参考資料」から筆者作成。
  https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_230609_0001.pdf

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−食品ロス削減月間−

(消費者庁HPより)

1989年10月1日施行された食品ロス削減推進法において、毎年10月は「食品ロス削減月間」、10月30日は「食品ロス削減の日」と定められています。これを受けて、消費者庁、農林水産省、環境省は連携して、食品ロスの削減に向けた集中的な普及・啓発に取り組んでいます。

具体的には、アンバサダーを起用した啓発ポスターの作成と配布、食品ロス削減全国大会の開催(10月30日(月)、金沢市)、コンビニエンスストアでの「てまえどり」の呼びかけ、食品ロス削減推進表彰受賞者の表彰、商慣習の見直しやフードバンク等への食品提供に取り組む食品事業者や、消費者啓発に取り組む事業者・地方自治体の募集等に取り組んでいます。
 また、「めざせ!食品ロス・ゼロ」川柳コンテストの募集も行われています。ちなみに昨年の受賞作は「日本から世界に広がれ『もったいない』」。(私も応募しました!)

このように行政は様々な普及・啓発に取り組んでいますが、実際に食品ロスが削減できるかどうかは、一人ひとりの意識と行動にかかっていることは言うまでもありません。

(参考)
 消費者庁HP「令和5年度食品ロス削減月間について」
 https://www.caa.go.jp/notice/entry/034824/
 同「めざせ!食品ロス・ゼロ」川柳コンテストの募集について
 http://www.senryu.caa.go.jp/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−井出留美『あるものでまかなう生活』(2020.10、日経BP)−
 https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/052600050/

著者は食品ロス問題ジャーナリスト。青年海外協力隊(フィリピン食品加工)、外資系食品会社の広報室長等を経て、東日本大震災時の支援活動をきっかけに、世界の食品ロス削減を目指す(株)0ffice3.11を設立。
 「食品ロス削減推進法」成立にも協力し、2018年には第2回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)、2020年度には食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞を受賞されています。

著者のいう「あるもの」とは、これまでは捨てていた食べものや眠らせていたモノだけではなく、私たち一人ひとりの資質や自分の回りにある自然環境も含むとのこと。そして「あるものでまかなう」暮らしは、楽しく、心が健康でいられるそうです。捨てるくらいなら最初から作らなければ、働く時間も資源もコストも無駄にならず、働き方改革につながるとも。

食品ロスが大量に発生している要因としては、欠品への過度の恐れや「3分の1ルール」など業界の対応、賞味期限に対する消費者の誤解など、様々なものがあることが解き明かされています。
 また、食品ロスの統計には農場段階での廃棄や備蓄食品のロスなどが含まれておらず、ロスはさらに多い可能性があることも指摘しています。

一方で、フランスの食品廃棄物削減法やデンマークの賞味期限切れスーパー、広島の「捨てないパン屋さん」、奈良から広がった「おてらおやつクラブ」など、食品ロス削減のための国内外の様々な取組み事例も紹介されています。
 歩いて行ける範囲の個人商店から対話しながら買い物をすることの楽しさ、大切さも強調されています。

著者は、「モノを捨てることが平気な社会」になってしまっている一つの理由は、「つくる人が見えなくなっている」ことにあるとします。「目に見えない」こと(人や自然)への想像力や敬意が欠けているから、痛みもなく平気でモノを捨てているというのです。
 さらには、何を選ぶか、何を買うかは私たち消費者が持つ大きな権利・義務であるとし、消費者の小さな一歩が地球の環境を守る大きな一歩につながると強調しています。

なお、本書は著者から恵贈頂いたものです。引用して下さっている「フード・マイレージ」のグラフ等については、事前に出版社の方から丁寧な使用許諾の連絡を頂きました。
 以下の著者のサイトには、幅広い活動の様子等が分かりやすく掲載されていますので、ぜひご覧ください。

(参考)
 株式会社office 3.11(井出留美さんオフィシャルサイト)
  http://www.office311.jp/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 秋のスダチ[10/1]
 https://food-mileage.jp/2023/10/01/blog-462/

○ ふるさとラボ大賀の稲刈り(新潟・上越)[10/5]
 https://food-mileage.jp/2023/10/05/blog-463/

○ 5年ぶりの西原まつり(山梨・上野原市)[10/10]
 https://food-mileage.jp/2023/10/10/blog-464/

▼ 筆者が主催するイベントです。

食と農の間の距離を縮め、顔の見える関係づくりを目指す「食と農の市民談話会」実践・対話篇の第4回のゲストは、巻寿司大使の八幡名子さん。
 地元の東京・八王子をはじめ全国の産地に足を運び、生産者との交流を続ける名子さんから、実践内容とそれを支えている「思い」についてのお話を伺います。
 後半は、名子さんが各地の生産者からお預かりしてきた食材を使った手作りの巻き寿司と、同様に産地や生産者・事業者にこだわる「箕と環」さんの特製料理を頂きながら、懇談を行います。

日時:11月8日(水)19:00〜21:30
 場所:47都道府県レストラン 箕と環(東京・神田)
 参加費:4000円(料理代+ワンドリンク、うち500円は避難民支援のために寄付)
  事前申込みが必要です。本メルマガへの返信等で連絡下さい。
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/311215424947697
 (チラシ)
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/10/tirasi3-42

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

○ 第10回 有機農業市民セミナー
 「福島原発・トリチウム汚染水の海洋放出がもたらす生物への影響」
 日時:10月19日(木)18:00〜20:00
 場所:オンライン
 主催:(特非)日本有機農業研究会
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.1971joaa.org/

○「Present Tree in みやぎ大崎」植樹ツアー
 日時:11月4日(土)〜15日(日)
 場所:宮城・大崎市
 主催:認定NPO法人 環境リレーションズ研究所
 (詳細、問合せ等↓)
 https://presenttree.jp/get-involved/index.php#sec03

○ 福島県の農家を巡るツアー2023
 日時:11月11日(土)〜12日(日)
 場所:福島・新地町、相馬市、南相馬市等
 主催:NPO 福島県有機農業ネットワーク
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/645825224204533/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 ウクライナでの停戦の目途が立たないなか、中東でも大規模な武力衝突が発生、多数の民間人が拘束されたとのニュース。心穏やかに過ごせない日々が続きます。
 過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.278は10月29日(日)[和暦 長月十五日]に配信予定です。
 正確でより役に立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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