-中野幸次『清貧の思想』(1996年11月、文春文庫)-
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167523039
【ポイント】
著者は、「消費者」とは「人間侮蔑的な言葉」であるとし、「何が必要であって何が必要でないかを検討し社会の仕組み全体を変えねばならぬ時に来ている」としています。

著者は1925年千葉県生まれの作家、ドイツ文学評論家。バブルが崩壊しつつある1992年に最初に世に問われた本書はベストセラーになり、「清貧」という言葉は流行語にもなりました。
技術と生産性に秀でた日本の工業製品が世界に大量に輸出されるなか(現在からは隔世の感がありますが)、著者は旅行先で、しばしば日本人は「金儲け以外に関心がないエゴイスト」であると非難されたとのこと。その度、筆者は、本阿弥光悦や吉田兼好の言葉を引用しつつ、日本には伝統的に「清貧」という美しい思想があると反論したそうです。清貧の思想とは、所有の欲望から自己を解放することで、心を自由にし、豊かなものにするというものでした。
注目されている環境保護やエコロジー、シンプル・ライフ等も日本人にとっては伝統的に身に着いた当たり前のことであり、「清貧の思想」は新しい文明社会の原理となりうるとしています。
「消費者」についても記述があります。経済成長のなかで「われわれはただの人間ではなく消費者という名で呼ばれるようになっていった」とあり、消費者とは「妙な」「人間侮蔑的な言葉」と断じています。
そして「われわれはもう一度出発点に戻って、人間には何が必要であって何が必要でないかを検討し、それに応じて社会の仕組み全体を変えねばならぬ時に来ているように思う」と結んでいるのです。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.316、5月12日(月)[和暦 卯月十五日]
https://food-mileage.jp/2025/02/10/letter-309/
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