-門間好春『未来へのバトン 福島中間貯蔵施設の不条理を読み解く』(2025.3、インパクト出版)-
https://impact-shuppankai.com/products/detail/357
【ポイント】
著者は、中間貯蔵施設の不条理を多くの人に知ってもらいたいと訴えつつ、「私たちおとなは子どもたちに明るい未来のバトンを渡す責任がある」としています。

1957年大熊町生まれの著者は、2018年から30年中間貯蔵施設地権者会の会長を務めておられます。
30年中間貯蔵施設地権者会とは、国が地権者の意向を無視して一方的に用地の契約等を進めようとするのに対して、地権者が団結して交渉を行うとともに、30年後には最終処分場への廃棄物移送を完了させるという約束を守らせることを目的に、2014年に設立された組織です。
著者は、中間貯蔵施設の不条理を一人でも多くの方に知ってもらい、自分ごととして考えてもらいたいという思いで、本書を出版されたました。その不条理とは、例えば30年という期間限定の事業であるにもかかわらず国は買収(国有地化)で進めようとしたこと、公共事業のルールに反して地上権価格を設定し、その価格も原発事故後の土地価格で評価していること、地上権契約者は東電の営農賠償の対象外とされていること等。
さらに、仮置き場との賠償額に差があることについては、被災者同士の分断を図ろうとする加害者(国・東電)側の意図があるのではとしています。
また、著者は、国と東電の被災者である地権者に対する不誠実さ、約束違反や逃げの姿勢、加害者としての責任感の希薄について厳しく糾弾・告発しています。2014年当時の石原環境大臣の「最後は金目でしょ」発言も紹介されています。
そして、2045年3月12日で中間貯蔵施設は終了、2051年で廃炉は完了すると国・東電が公表していることについて、「ウソはダメ、約束は守られなければいけない」と強調する同時に、「私たちおとなは子どもたちに明るい未来のバトンを渡す責任がある」と本書を結んでいます。
ところで7月22日(火)正午のNHKニュースでは、首相官邸の庭に除染土が運び込まれ再生利用が始まったとの報道がありました。耳を疑ったのは「放射線量は0.11シーベルト/時で工事前とほぼ同じ」とのナレーション。午後1時のニュースでは「マイクロシーベルト」とさりげなく訂正されていましたが、当初は原稿を書いた人も担当ディレクターも読み上げたアナウンサーも、誰も間違いに気づかなかったのです。
以前は、放射線による健康被害の可能性についてはマスコミも含めて神経質とも言えるほどの慎重な対応が行われていたことを思うと、このようなところにも「原発事故の風化」を感じざるを得ませんでした。
日本の政治・社会が大きく原発推進の方向に舵を切りつつある現在、著者の「原発事故から10年以上が経過し、その複合的な問題がさらに複雑かつ大きくなっている」「原発は公共の福祉に反する」等の痛切な言葉に耳を傾け、胸に刻む必要があります。
参考
30年中間貯蔵施設地権者会ホームページ
https://30nenchikensya.org/
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.321、2025年7月25日(金)[和暦 閏水無月朔日]
https://food-mileage.jp/2025/07/29/letter-321/
(配信登録(無料)はこちらから)
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
(「ほんのさわり」のバックナンバーはこちら)
https://food-mileage.jp/category/br/
(メルマガ全体のバックナンバーはこちら)
https://food-mileage.jp/category/mm/
