◇フード・マイレージ資料室 通信 No.324◇
2025年9月6日(土)[和暦 文月十五日]
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◆ F.M.豆知識 割安な生産者との直接取引
◆ O.カレント 水稲の10a当たり収量の前年比見込み(8月15日現在)
◆ ほんのさわり 北條民雄 日記
◆ 情報ひろば 第4回「食と農の未来フォーラム」(9月20日)のご案内
ブログ更新、イベント情報等
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カレンダーでは9月に入りましたが暑熱はおさまりません。今回の台風15号が米をはじめとする農産物の作柄に悪影響を及ぼしていないことを祈ります。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-割安な生産者との直接取引-
【ポイント】
米の購入価格を入手経路別にみると、生産者から直接購入する場合が最も割安となっています。

米の価格は前年等と比べて高い水準で推移しており、今夏の猛暑が新米の価格に影響するのではないかとも懸念されています。そのようななか、消費者が購入する精米の価格は、入手経路によって差がみられます。
リンク先の図324は、入手経路別にみた精米の購入単価と、入手経路の割合の推移を示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/09/324_chokusetu.pdf
まず、購入単価(棒グラフ)をみると、24年度から米価格が上昇するなかで、スーパーに比べて割安だったドラッグストアやディスカウントストアにおける価格はスーパーと差がなくなっているおり、逆に割高だった生協の価格はスーパー等と同水準になっています。特に、生産者から直接購入する場合の価格はさらに割安となっています。
一方、入手経路の割合をみると、米価格が上昇するなかでスーパーの割合が上昇しているなかで、他の購入先の割合はほとんど横ばいです。生産者から直接購入している人の割合は2019年度の5.9%から25年4~7月平均では3.9%へと、割安であるにもかかわらずやや低下しています。
生産者と直接取引する場合の価格は、いわゆる産消提携の一形態として再生産可能な価格を保証するという目的からは割高となると考えられる一方、中間の流通経費が削減できる面があります。直接取引の価格が近年、特に割安になっていることについては、調査を実施した米穀機構でも分析していないとのことですが、流通(購入)ルートが多様化し、生産者と直接取引する消費者が増えていくことが期待されます。
[データの出典]
公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構「米の消費動向調査結果」(2025年7月分)から作成。
https://www.komenet.jp/pdf/shouhi-doukou_25082527.pdf
注:全国の消費世帯モニター約2000世帯を対象としたインターネット調査で、複数回答である。
◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-水稲の10a当たり収量の前年比見込み(8月15日現在)-
【ポイント】
8月15日現在の米の生育状況は順調のようですが、廃止する方向にある作況指数や平年収量に代わる新たな指標の開発・公表が必要と考えます。

去る2025年8月29日(金)、農林水産省は「水稲の8月15日現在における10a当たり収量の前年比見込み」という、やや長いタイトルの統計速報を公表しました。主食用米の生産見込み(前年に比べて56万トン増)に向けて、おおむね順調に推移しているとの内容です。米価格が高い水準で推移し政府備蓄米の在庫量も大きく減少している中で、安堵できる内容となりました。
ちなみにこの統計資料、昨年は「令和6年産水稲の8月15日現在における作柄概況」として公表されていました。「良」が1県、「平年並み」が31 都府県等といった内容で、その判断基準はいわゆる作況指数に基づくものでした。
作況指数とは、10a当たり平年収量に対する当該年産の10a当たり収量の比率のことです。また、平年収量とは、直近30年間の各年次の収量(気象データで補正)の趨勢から、専門家の意見を聞きながら毎年算定しているもので、例えば気象庁が公表している気温等の平年値(過去30年の単純平均)とは算定方法が異なります。
この作況指数等については、生産現場の実感と乖離があるとの声が多いことから農水省は廃止する方針を決定し、現在、総務省の統計委員会で審議されていますが、民間では簡単に作成できない精緻な数値であることから公的な機関が提供すべきではないかといった意見も出されています。
例えば、1993(平成5)年の「平成の大不作」も、作況指数74という数値があるからこそ深刻さが実感できるのであり、公共財である農林水産統計としては、統計ユーザー(生産者、事業者、消費者等)のために分かりやすい指標を開発し、公表していくことが必要ではないかと考えます。
[参考]
農林水産省「令和7年産水稲の8月15日現在における10a当たり収量の前年比見込み」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/pdf/suitou_250815.pdf
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-北條民雄 日記 (『定本北條民雄全集』下巻所収、1996年9月、創元ライブラリ)-
【ポイント】
ハンセン病作家である北條民雄の日記は、体調が悪化するに連れて分量が減少し、最後は日々の食事を記録するにとどまりました。

著者は1914年、陸軍軍人である父の赴任先であった朝鮮京城府に生まれ、両親の郷里・徳島で育ちます。もっともこれらは、本名も含めて、2014年になって明らかになったものです。
19歳の時、当時は不治の伝染病と恐れられていたハンセン病を発症、20歳で全生病院(現在の国立療養所 多磨全生園(東京・東村山市))に入院します。半ば強制的な収容でした。自身が入院初日に経験したことを基にした小説『いのちの初夜』は、大きな反響と高い評価を得て芥川賞の候補にもなりました。
入院2か月後の1934年7月から死去する1か月前の1936年11月までの間の、北條の日記が残されています。「怖ろしい病気に憑かれた」「泣き叫びたし」と嘆きつつ、「なんとしても書かねばならぬ。書くことだけが自分の生存の理由だ」として、病舎の中で多くの小説や随筆を執筆しました。
北條の体調は1937年に入る頃から悪化し、次第に日記の分量も少なくなっていきます。死の1か月前の11月に入ると、日々の食事内容を記録するにとどまるようになりました。例えば11月6には「朝食に粥半椀、梅干し1ケ」等とあります。同じ死の床にあった正岡子規の随筆が思い出されますが、子規が最期まで健啖家であったのに対して、北條の食欲はどんどん衰えていきます。
死に抗って書き続けた北條が最後に記したものが、生命の源である食事の記録だったことには、深い感慨を覚えます。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 第4回「食と農の未来フォーラム」の開催について(9月20日(土)19時~)
食と農を取り巻く深刻な問題の多くは「食と農の間の距離」が離れてしまっていることに起因しています。都会の一般市民(消費者)の皆さんを主な対象として、食と農の現場の課題を身近に感じ、自主的な行動変容につなげて頂くことを期待して開催する本フォーラム、これまで大友 治さん(本木・早稲谷 堰と里山を守る会、福島・喜多方市山都)、鈴木純子さん(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト、いわき市)をゲストにお迎えして開催してきました。
(フォーラムの趣旨、これまでの開催概要等)
https://food-mileage.jp/2025/09/02/250901_forum/
(フォーラムのチラシ)
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/09/250902_flyer.pdf
第4回は榊田みどりさん(農業ジャーナリスト、明治大学客員教授)をゲストにお迎えして、「都市住民こそ他人事じゃない! 私たちの食べものは大丈夫?」(仮題)をテーマにオンライン開催する予定です。
以下からお申し込みください。多くの方のご参加をお待ちしています。
なお、Peatixを使用されない方は別途対応させて頂きますので、希望される方は本メールヘの返信で連絡ください。
https://peatix.com/event/4561122/
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 インドにゆかりのあった一日[8/20]
https://food-mileage.jp/2025/08/20/blog-595/
〇 戦後80年の東村山[8/25]
https://food-mileage.jp/2025/08/25/blog-596/
〇 棚田学会シンポジウム(生物多様性と棚田)[8/28]
https://food-mileage.jp/2025/08/28/blog-597/
〇 原発被災地でオーガニックコットンを育て「続け」ること(第3回 食と農の未来フォーラム)[8/30]
https://food-mileage.jp/2025/08/30/blog-598/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 第118回ブッククラブ-北條民雄『いのちの初夜』
日時:9月8日(月)19:00~21:00
場所:オンライン
主催:奥沢ブッククラブ
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1239014884577648
〇 農あるまちづくり講座フォローアップ講座(講座終了者向け)
日時:9月9日(火)18:30~19:30
場所:ワーカーズコープ東京統括本部(東京・池袋)、オンライン
主催:農あるまちづくり講座事務局
(修了者向けの講座ですが、ご関心のある方は本メールヘの返信で連絡下さい)
〇 発車オーライ! 市民活動の入り口は「くめがわ電車図書館」から
日時:9月21日(日)14:00~16:00
講師:大塚恵美子さん
場所:東京・東村山市中央公民館
主催:NPO法人PAGE2
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/photo?fbid=736421579020573
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「よく毎日のように色んなパワハラやセクハラができますね。コンプライアンスって言葉、知っていますか」
「はあ、すみません」
「まるで日替わり定食(抵触)ですよ」
個人のフェイスブックで週3日お披露目中。「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.325は9月22日(月)[和暦 葉月朔日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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