【ブログ】都市住民こそ他人事じゃない!私たちの食べものは大丈夫?(第4回 食と農の未来フォーラム)

2025年9月20日(土)19時から、第4回 食と農の未来フォーラムを開催しました。
 食と農を取り巻く深刻な問題の多くは「食と農の間の距離」が離れてしまっていることに起因しています。都会の一般市民(消費者)の皆さんを主な対象として、食と農の現場の課題を身近に感じ、自主的な行動変容につなげて頂くことを期待して開催する本フォーラム、これまで第2回は大友 治さん(本木・早稲谷 堰と里山を守る会、福島・喜多方市山都)、第3回は鈴木純子さん(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト、いわき市)をゲストにお迎えしてオンライン開催してきました。

今回のゲストは榊田みどりさんです。
 榊田さんは農業ジャーナリスト、明治大学客員教授、農政ジャーナリストの会幹事。『農的暮らしをはじめる本』(農文協)等の著書もあります。

今回は50名の方が申し込んで下さり、20名以上の方がリアルで参加されました。初の週末開催ということもあり、所用があった方もおられたようですが、アーカイブでも視聴したいと申し込んで下さった方も多かったようです。有難いことです。

榊田さんのお話に先立ち、例によって中田から予備知識的なマクロ(落語でいうマクラ)データを紹介させて頂きました(資料の全体はこちら)。

日本経済における農林水産業の地位は低下し、GDPの1%程度というのは諸外国と同様だが、相対的データ等の説明なシェアだけではなく絶対的にも大きく減少しているのは日本だけ。
 また、近年のカロリーベース食料自給率が横ばいで推移しているのは人口の減少・高齢化により需要が減少しているためで、国内農業生産は縮小が続いている。

当日の中田からの説明資料より(資料の全体はこちら)。以下、2つの図について同様。

食料自給率が低下した最大の要因は消費者の食生活(食の選択)の変化であり、大都市圏の自給率は特に低い(東京都はカロリーベースで0%)。
 ロシアのウクライナ侵攻等により肥料等の価格が高騰するなか、米等の農産物価格は低迷。担い手の米作農家(主業農家)は、5.38人(うち家族 2.71人)が農業に従事しながら、農業所得は270万円にとどまっている。 

米価格の高騰が話題となっているが、生産者から直接購入する場合が最も割安となっていること、一方で私たちは米への支出額の3倍近い金額を携帯電話代に支出している現状にあること等を説明させて頂きました。

そして、本編である榊田さんによる話題提供が始まりました(資料の全体はこちら。なお、文責は中田にあります)。
 学生時代から30年以上にわたって農村の現場を歩いて取材し、食・農専門記者として記事を書いてこられた榊田さん。その原点は、1979年に秋田から上京した時、都会の利便性の高さに驚くとともに、生きるためのインフラ(水、食料、エネルギー)がないことを実感されたことにあるそうです。

 続いて、食卓から「農の現場」が遠くなる中、本年3月30日に東京で開催された「令和の百姓一揆」を紹介。
 実行委員長の菅野芳秀さん(山形・長井市の農家。榊田さんは何度も取材されています)が「残っている農民を守りながら、消費者、市民と連携して、食と農と命を大事にする日本に変えていかなければならない」と訴えられたことを紹介されました。

当日の榊田さんからの説明資料より(資料の全体はこちら)。以下、2つの図について同様。

「実際、現在の農業者の約7割は「5年以内に農業を引き継ぐ後継者」を確保していない。また、現在、農業を担っている基幹的農業従事者の57%は70歳以上で、20年後には30万人を切る(現在の約2割)と農水省は予測している」

 「農地についても、米・麦・大豆などの土地利用型作物では担い手の規模拡大がなければ、5年後には現在より約70万haも減少する(果樹では半減)恐れがあると試算されている」等の厳しい状況にあることを説明。

また、榊田さんは、米価格が上昇し「令和の米騒動」が始まった時には、ようやく米価が下げ止まって農家が再生することが可能な価格になるとホッとされたそうです。
 というのは、多くの稲作農家にとって米の販売価格は生産コストより安い状態が続いてきたためで、この30年、「もう米では食えない」という生産現場の声を榊田さんは何度も聞いてきたそうです。
 その意味でも、「令和の百姓一揆」は、生産現場の厳しさを都市住民に伝える上で大きな意味があったと評価されているとのこと。

一方、榊田さんは「適正価格」の議論はあまり好きではないとしつつ、「適正価格は立地条件や栽培条件で異なる。つまり、自分はどんな米を食べたいかで支払う対価はちがう。そして買い手が買える価格と作り手が必要とする価格との間にギャップがあるのであれば、それを埋めるための所得補償(直接支払)等の政策が必要」であるとし、また、これまでの農政が規模拡大・効率化を推進してきたことが、小規模農家の離農(農じまい)につながっている」と主張されました。

 「自分たちは都市に食料を提供するためではなく、その地で幸せに暮らすために農業をしているのであって、割に合わないのに無理やり農家であり続ける義務はない」との、生産者の生の声も紹介して下さいました。

榊田さんのお話は単なる問題提起にはとどまらず、最後に都市部の消費者に向けて具体的な提案をしてくださいました。

 それは「私たち消費者は、自らを食料をただ買うしかない立場と考えるのではなく、自分の支持する農業・農家とつながることを考えてみませんか」「『かかりつけ農家』を見つけて、長い目でのお付き合いを考えてみませんか」ということです。
 そして愛知・豊田市における「自給農家」、福島・二本松市の「まい田んぼ」、新潟・上越市の「田舎の親戚」、茨城・八郷での生協とJAによる体験の取組み、神奈川・秦野市の「はだの市民農業塾」等の事例を紹介して下さいました。いずれも榊田さんが実際に足を運んで取材された事例だけに、説得力があります。

さらに、榊田さんご自身も仲間4人と「耕す市民」を実践されていることを紹介して下さいました。実際に野菜を作ってみて「酷暑の中で畑作業をしている農家の方たちに頭が下がる思いがした」と語られました。

後半は、参加者の皆さんとの質疑応答・意見交換です。
 主催者としては、この会は一方的にレクチャーを受ける講演会ではなく、参加者全員による対話の場(フォーラム)にしたいと心がけています。

まず、榊田さんからの生産者の方の声が聞きたいとのリクエストに応えて、徳島の野菜農家の方が発言して下さいました。
 「菅野さんと同様、自分の地域の農家も農地を荒らしたくないからという思いで農業を続けている。長期的に米価格が下落するなかでニンジン等の収益を充てて稲作用の機械を維持してきたが、それでも4~5年前位からは米の作付面積は急減している」等と、地域の実情を紹介して下さいました。

東京・日野市でコミュニティガーデン作りに取り組んでいる方からは、「全国的に担い手が減少していることは知っていても、具体的に何をしたらいいかが分からない仲間が多い。国の方で直接支払いを行うべきではないか、等の感想と質問。
 榊田さんからは「制度は全面的に見直すとしているが、どれだけ予算が増えるか、対象面積要件がどうなるか等を注視している」との回答がありました。

品川区議をされている方からは「品川区にはそもそも農地がなく、野菜がどのようにできているかを知っている消費者も少ない。また、消費者はどこから正しい情報を得ればいいか分からない」との意見。
 榊田さんからは、農業体験の重要性を説かれるとともに、大手メディアでは農業関係を取り上げる機会が大きく減っており、専門の記者も育っていない等の状況を説明。

プランタでトマトを栽培しているという川崎市在住の方からの「安全で安心できる農作物を作ってくれる『かかりつけ農家』は、どのようにすれば見つけられるか」との質問に対しては、榊田さんから「出会いの場は少ないかも知れないが、ネットで発信している生産者も多く、直接、買ってみることが一つのきっかけになるのでは」等の提案。

京都で環境活動に取り組んでおられる方も参加・発言して下さいました。
 以前は近隣に農家があり野菜などを買っていたが、今はいなくなってしまったこと、実態調査な基づいてスーパーにでは野菜の9割近くがプラスチック包装されていることを紹介して下さり、環境面からも消費者の意識が重要等の意見を述べてくださいました。

山梨の生産者のもとに通っておられる都内在住の方は「食べもののことを、作ることがどれだけ大変かという部分を含めて『自分ごと』として捉え、生産者の方との関係を続けていくことが重要では」との意見。

世田谷区内のスーパーでアルバイトをされている方からは、「弁当などを売っていても消費者と生産者が分断されていることを実感する。自分は、食べる前に感謝して残さず食べること位しかできていない」との感想。

生協の役員をされている方からは、再生産価格を保証する共同購入の取組みが生産者とつながれるきっかけになっているとの紹介。

予定していた21時を回ったところで、最後に、榊田さんから、
 「『かかりつけ農家』との出会いの場が現実に少ないという話、個人だけではなく生協や企業単位で生産者とつながる取組みなど、私にとっても大きな気づきになった」等の全体的なコメントを頂きました。

その後、榊田さんを含めてお時間が許す10名ほどの方には残って頂いて延長戦(懇談会)。
 録画は停止したこともあって、農地のみならず森林もナラ枯れ等で危機的な状況にあること、食品産業も輸入原材料を使用している限り持続可能とは言えないのではないか、NHK日曜討論の小泉農相の発言には驚かされた等、さらに闊達な意見交換ができました。
 ゲストの榊田みどりさん、ご参加・申し込んで下さった皆様、有難うございました。

「食と農の未来フォーラム」は、今後も月1回程度、現場の実情に精通した方をゲストにお迎えして開催していくこととしています。時には「食と農」から離れ(拡張して)、例えば「いのち」をテーマにした会も計画しています。
 さらに、アルでの開催(見学会、料理教室等)も企画しています。

次回は10月中下旬を予定しています。
 日程や内容が決まり次第、拙ウェブサイト、SNS等で告知させて頂きますので、多くの方のご参加をお待ちしています。 

(ご参考)
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
 メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」
 https://www.mag2.com/m/0001579997
 フェイスブック「フード・マイレージ資料室(分室)」
 https://www.facebook.com/foodmileage