【メルマガ】F.M.Letter No.329-pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.329◇
  2025年11月20日(木)[和暦 神無月朔日]
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◆ F.M.豆知識  農用地面積と食料供給量の国際比較
◆ O.カレント  水田の有する多面的機能
◆ ほんのさわり 渡邉雅子『共感の論理』
◆ 情報ひろば  第6回「食と農の未来フォーラム」の開催について
         ブログ更新、イベント情報等
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 総理の国会答弁をめぐって中国との関係がぎくしゃく、日本産水産物の輸入も再び停止に。威勢のいい言葉は高い支持率の背景でもあるのでしょうが・・・。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/

-農用地面積と食料供給量の国際比較-

【ポイント】
 EU、アメリカ、オーストラリアでは、日本に比べて農用地に占める牧草・採草地の割合が高く、食生活は、それぞれの国の農用地の条件(気候、風土の条件)を反映して形成されていることが分かります。

前号でEU(European Union、欧州連合)の農用地面積等について紹介したのに対して、読者の方から、EUと日本では農用地の種類(構成)が異なるため単純な比較はできないのでは、との指摘を頂きました。
 これを踏まえて、農用地面積等の国際比較を行ったものがリンク先の図329です。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/11/329_land.pdf

下段のグラフが、国土面積に占める農用地面積の割合を農用地の種類別に示したものです。日本の国土に占める農用地面積の割合は12.2%と、EU(37.3%)、アメリカ(42.9%)、オーストラリア(46.9%)に比べて、前号でも紹介したとおり非常に低くなっています。
 さらに農用地の種類別の構成比をみると、耕地(果樹等の永年性作物を除く。)の割合が日本では87.8%とほとんどとなっているの対して、EU(60.5%)、アメリカ(36.0%)、オーストラリア(8.5%)と日本より低くなっている一方、永年牧草・採草地の割合は日本では6.7%にとどまっているのに対して、EU(33.0%)、アメリカ(63.3%)、オーストラリアでは91.4%と、日本よりかなり高くなっています。

上段のグラフは国民1人・1日当たりの食料供給量(輸出を含む。)を示したものです。諸外国は日本に比べて肉類は1.5~2.5倍、牛乳・乳製品は2.7~4.3倍とかなり多くなっています。
 このように、食生活は、それぞれの国の農用地の条件(気候、風土の条件)を反映して形成されていることが分かります。

[データの出典]
 FAOSTAT、農林水産省「食料需給表」から作成。
https://www.fao.org/faostat/en/#data/RL
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
注:農用地面積の割合は2023年、食料供給量は2021年の数値である。

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/

-水田の有する多面的機能-

【ポイント】
 農用地、特に水田には洪水を防止するなど様々な機能があり、その維持・活用を図っていく必要があります。

農林水産省HPより。

農用地は食料の生産だけではなく、洪水や土砂崩れの防止、生物多様性の保全、農村景観の維持等の大きな役割を果たしています。
 これらの「多面的機能」は基本的に貨幣には換算できないものですが、日本学術会議の答申(2001年)によると、洪水防止機能は3兆5千億円(治水ダムの減価償却費及び年間維持費で評価)、河川流況安定機能は1兆5億円(利水ダムの減価償却費及び年間維持費で評価)、保健休養・やすらぎ機能等を含む全体では約8兆円とされています。

特に水田は、畦畔(あぜ)を有しているために大雨時の雨水を一時的に貯留する機能が高いこと、かんがい用水は河川に安定的に還元されること等から、農地のなかでも相対的により大きな機能があると考えられ、このため、多面的機能支払交付金の交付単価も田の方が畑や草地よりも高く設定されています。

なお、2023年に改正された食料・農業・農村基本法では、米の消費量が長期的に減少していること、稲作の担い手が減少している等の状況を踏まえて「水田の汎用化及び畑地化」がうたわれており、政策的にも乾田直播等の取組みが進められていますが、優れた生産装置でもある水田の多面的機能の維持・活用が図られることが必要です。

また、そもそもこれら多面的機能に着目することは、これまでの経済一辺倒の見方を新ため、新たな価値観に基づく食料や農業の姿を模索するためのヒントともなります。

[参考]
 農林水産省HP「農業・農村の有する多面的機能」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/

-渡邉雅子『共感の論理-日本から始まる教育革命』 (2025.9、岩波新書) -
https://www.iwanami.co.jp/book/b10144356.html

【ポイント】
 世界的に様々な深刻な問題が顕在化するなか、日本が育み広く継承されてきた価値観(共感的利他主義)がこれらを克服する鍵となるとしています。

著者は、知識社会学、比較教育等を専門とする名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授。
 現在、格差の拡大、社会の分断、戦争・紛争の頻発、気候変動、生態系の破壊等の深刻な問題が地球規模で顕在化しています。著者によると、これは経済一辺倒の価値観が行き詰まっていることを示しているもので、新しい価値観への転換と、それに即した社会の構築(パラダイムシフト)が迫られているとしています。
 そして、これらの矛盾を克服する鍵となるのが、これまで日本が育み広く継承されてきた価値観(共感的利他主義)であるとしているのです。

日本の価値観とは、自然を収奪・搾取の対象と捉える個人主義・利己主義的な近代西洋の価値観(これまで資本主義と経済成長を支えてきた価値観)とは異なり、人間も自然の一部と捉え、勤勉と倹約に加えて「正直」(私欲のなさ、人々との信頼の構築)を行動規範とするもので、今後の世界のモデル(基準・規範)となる可能性が大きいとしています。

また、世界的に科学の分野で要素還元主義からの脱却(複雑性等)が進んでいること、共同体の必要性が再認識されつつあること、日本の感想文教育は利他を意識するなど道徳的倫理的な意識を育てる面で優れていること等についても指摘されています。

以上のように本書は教育についての提言書ですが、教育関係者のみならず、今後の経済社会、さらには食や農のあり方について考える人にとっても多くの示唆に富んでいます。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。

▼ 第6回「食と農の未来フォーラム」の開催について
 食と農の距離を縮めることを目的に開催している本フォーラム、今回はパレスチナについて考えます。
 ガザ及びヨルダン川西岸からなるパレスチナでは、ガザ地区へのイスラエルの封鎖により命の糧である食料が不足し、子どもたちを含めて多くの人たちが飢餓の危機にさらされていると報道されています。
 私たちの多くにとって遠いところにあると感じるパレスチナですが、現在の本当の状況はどうなっているのか、写真家の高橋美香さんが何度も「居候」して取材された家族の皆さまが、今、どのような日々を過ごされているのか等についてお話を頂きます。
 本場のパレスチナ料理を頂きつつ、参加者全員で質疑応答や意見交換を行うことで、パレスチナの現在について参加者一人ひとりが想像し、自分たちに何ができるかを考える機会としたいと思います。

1 日時:11月25日(火)19:00~21:00
2 ゲスト及びテーマ:高橋美香さん(写真家)
  「パレスチナの家族の今」(仮題)
3 会場:パレスチナ料理店 Bisan(ビサン)https://bisan.biz/
   東京都北区中十条2-21-1
4 募集定員:13名
5 参加費 :8,000円(料理、ワンドリンク(ソフトドリンク)代を含む。)
6 申込み方法等:
(1)参加を希望される方は、本メルマガへの返信で連絡下さい。
  振込口座をお知らせしますので事前の振込みをお願いします。振込みが確認できた時点で申込み完了となり、メールでお知らせします。
(2)ほぼ定員に達しつつありますので、希望される方は早めに連絡下さい。
[詳細]
https://www.facebook.com/events/1925321064688494

[フォーラムの趣旨、これまでの開催経緯等]
https://food-mileage.jp/2025/10/30/251030_forum/

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
  今回はありません。

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 トークイベント「邑久高等学校新良田教室1964-1968」
 日時:11月22日(土)14:30~16:30
 場所:国立ハンセン病資料館(東京・東村山市)
 主催:国立ハンセン病資料館
 (詳細、問合せ等↓)
https://www.nhdm.jp/events/list/8514/#a3

〇 スタディツアー in 多磨全生園
 日時:11月29日(土)10:00~15:00
 場所:国立ハンセン病資料館、多磨全生園(東京・東村山市)
 主催:全生園の明日をともに考える市民の会
 (詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1191059669585457

〇 歴史学者 藤原辰史さん講演会
 日時:11月29日(土)14:00~15:30
 場所:小川町立図書館(埼玉・小川町)
 主催:NPO小川町風土活用センター
 (詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1416748453452313/
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「あまりに美しい景色ばかりで、お腹がもたれそうだったよ」
「胃酸((世界)遺産)過多でしたね」
 (ヨーロッパ旅行をしてきました。)

 コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.330は12月4日(木)[和暦 神無月十五日]に配信予定です。気が付くと2025年も押し詰まってきました。
 正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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