◇フード・マイレージ資料室 通信 No.332◇
2026年1月3日(土)[和暦 霜月十五日]
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◆ F.M.豆知識 「規模拡大が進展」の実態
◆ O.カレント 図書喫茶「カンタカ」
◆ ほんのさわり 徳田靖之『菊池事件』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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和暦では霜月半ばですが、カレンダーは2026年を迎えました。本年もどうぞよろしくお願いします。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等を紹介します。
(バックナンバーはこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-「規模拡大が進展」の実態-
【ポイント】
大規模経営のシェアが過半となりましたが、これは全体の耕地面積が大きく減少していることを反映したものであり、必ずしも順調に規模拡大が進んでいるとは言えません。

昨年11月に農林水産省が公表した資料「2025年農林業センサス結果の概要(概数値)」には、「経営耕地面積20ha以上の農業経営体の面積シェアが初めて5割を超えるなど、規模拡大が進展」とあります。
リンク先の図332は、この根拠となっている経営耕地面積規模別にみた経営耕地面積について、10年前、5年前と比較したものです。大規模経営の面積は縦軸の右側、それ以外の経営の面積は左側に図示してあります。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/01/332_census2.pdf
大規模層(経営耕地面積20ha以上)の経営耕地面積(縦軸の右側のグラフ)は、2015年の129.3万haから2020年には143.4万ha、2025年には155.5万haへと増加し、全農業経営体の経営耕地面積の合計面積に占めるシェアは37.5%から44.3%、51.0%へと上昇しています。この数字を見ると、確かに順調に規模拡大が進展しているかのようにみえます。
しかしながら、全農業経営体の経営耕地面積の合計(左側と右側の合計)は、2015年の345.1万haから、2020年には323.3万ha、2025年には304.7haへと減少しています。全体の経営耕地面積は10年前と比べて11.7%減少しているのです。
つまり今回のセンサスで明らかとなった「規模拡大の進展」とは、全体の耕地面積が大きく減少(農地資源、あるいは日本農業が全体として縮小)している中での大規模層のシェアの増加であることに留意する必要があります。
さらに大規模層について地域別にみると、一貫して北海道が約6割を占めており、都府県における規模拡大のペースは依然として十分とは言えない状況が伺えます。さらに「規模拡大先進地」北海道においては、20ha以上層の経営耕地面積が減少に転じていることも注目する必要があると思われます。
[データの出典]
農林水産省「農林業センサス」から作成。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/index.html
◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(バックナンバーはこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-図書喫茶「カンタカ」-
【ポイント】
武蔵野の原風景をモチーフにした快適なカフェは、様々なイベントの開催も通じて、地域の方たちの集う貴重な場となっています。

東村山市と所沢市の都県境にある図書喫茶「カンタカ」は、開店して6年目に入りました。武蔵野の雑木林や地域を流れる柳瀬川の自然をテーマにしたカフェで、店名はジブリ映画の登場人物(カンタとアシタカ)に由来するとのこと。
大きな窓からあまねく光が降り注ぐ店内。不揃いなテーブルは雑木林の多様性を、石のレジカウンターは河原をイメージしているそうです。
壁一面の棚を埋め尽くす4万冊の書籍はオーナーの肥沼位昌(こいぬま・のりあき)さんの蔵書で、店内で自由に手に取って読むことができます。地域の歴史書や絵本も多く、2階にはキッズスペースもあります。
メニューも充実しており美味。ブレンドコーヒーは深煎りから浅煎りまで4種類以上あり、カレーなどの食事も食材と手作りにこだわっています。
また、随時、室内楽コンサート、鏡もち作り等のワークショップ、郷土の伝統を学ぶ講座「なるほど我がまち」等のイベントも開催されています。
昨年12月29日(月)には音楽講座「なるほどクラシック」(ベートーヴェン・第九)に参加させて頂きました。詳しい資料(歌詞等)が配られ、プロの音楽家の方たちによる解説と生演奏(肥沼オーナーの奥様はプロのチェリスト)があり、最後は第4楽章をフルトヴェングラーの名盤で鑑賞。素晴らしい年の瀬の一日を過ごさせて頂きました。
環境保全活動等にも熱心な肥沼オーナーが「武蔵野の原風景」をテーマに開店したカフェは、地域の人たちが集う快適で貴重な場になっています。今年も何度も足を運ぶことになりそうです。
[参考]
図書喫茶「カンタカ」
https://www.facebook.com/kantakajpn
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(バックナンバーはこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-徳田靖之『菊池事件-ハンセン病差別の壁をこえるために』 (2025.5、かもがわ出版) -
https://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ka/1374.html
【ポイント】
ハンセン病患者が証拠不十分なまま逮捕され死刑が執行された60年以上前の事件について、現在、再審請求が行われており、今月中に熊本地裁において判断が下されます。

1951年8月、菊池郡内にある村役場(当時)の職員の自宅でダイナマイトが爆発し、翌年には刃物で刺殺された当該職員の遺体が発見されます。警察は、いずれの事件も、自分をハンセン病患者であるとして県に報告した当該職員に恨みを持った農業・Fさんによる犯行であるとして、逮捕・収監します。当時は国及び県、さらに地域ぐるみによる「無らい県運動」(ハンセン病患者を強制的に療養施設に収容・隔離する運動)が強力に推進されていたことが背景にあります。
Fさんは一貫して無実を主張したものの、療養所内に設けられた「特別法廷」における裁判を経て死刑判決を受けます。さらにFさんは控訴・上告、再審請求を続けたものの、3度目の再審請求の申立てが棄却された翌日の1962年9月14日、死刑が執行されました。Fさんは40歳でした。
再審は認められなかったものの、裁判の過程で、特別法廷(隔離法廷)は憲法違反であると判断されるとともに、凶器とされる証拠品や供述にも大きな疑義(捏造や誘導)があることも明らかとなりました。
これらを踏まえて、事件から60年以上を経た現在、改めて遺族等により行われた再審請求が熊本地裁で審理されており、今月(2026年1月)中に判断が下されることとなっています。
本件の特徴は、既に死刑が執行されていることです。死刑判決が確定した後に再審無罪となったケースはこれまで免田事件、袴田事件など5件ありますが、いずれも死刑が執行される前に再審が開始されたものです。
著者は1944年大分・別府市生まれの弁護士で、菊池事件再審弁護団の共同代表。ハンセン病問題に取り組むようになったのは「自らの余りに長きにわたる不作為の責めを償う」ためであったとのこと。そして、現在もハンセン病に対する偏見と差別が残るなか、少しでも多くの人に菊池事件のことを知ってもらい、何としても再審開始を実現したいと訴えています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 食べることの むかし、いま、そしてこれから(藤原辰史先生講演会@埼玉・小川町)[12/5]
https://food-mileage.jp/2025/12/05/blog-611/
〇 自然と人(産山村と東京・高輪)[12/11]
https://food-mileage.jp/2025/12/11/blog-612/
〇 菊池事件と映画『新・あつい壁』[12/16]
https://food-mileage.jp/2025/12/16/blog-613/
〇 東北うまいもん忘年会(きっかけ食堂@東京 vol.91)[12/19]
https://food-mileage.jp/2025/12/19/blog-614/
〇 福井・池田町の沢山の“やさしさ”(森の食卓@東京・井の頭)[12/16]
https://food-mileage.jp/2025/12/24/blog-615/
〇 竹の伐り出しと大豆のよろげ(2025年最後のしごと塾、山梨・西原)[12/26]
https://food-mileage.jp/2025/12/26/blog-616/
▼ 第7回 食と農の未来フォーラムの開催について(オンライン)
・日時 2026年1月31日(土)午前10時~12時(注:午前中の開催です。)
・テーマ 「限界を迎える限界集落-消えつつある自給自足の農と里山暮らし」
・ゲスト 冨澤太郎さん(やまはた農園、山梨・上野原市西原 )
・開催方式等 オンライン(zoomを利用)、参加費1000円。
チケットを申し込んで下さった方には、終了後、アーカイブを配信予定。
ゲストの冨澤太郎さんは横浜生まれ。東日本大震災後、26歳の時に標高600mの中山間地域である西原(さいはら)地区に移住・新規就農。地元の「師匠」たちに教わりながら野菜や雑穀を栽培し、林業、炭焼き、竹かご作り等にも携わるほか、地元のNPOの運営、消防団活動、祭りの維持・継承、都市住民との交流活動などに幅広く活躍されています。
(参考)
やまはた農園(FBページ)
https://www.facebook.com/yamahatafarm/
やまはた農園の取り組み
https://yamahatafarm.com/farm/
自分たちの食べものを生産する農業・農村の現状、リアルな山里の暮らし等に関心のある多くの方の参加をお待ちしています。以下からお申し込みください。
https://peatix.com/event/4761668/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 能登半島地震から2年 能登の牡蠣と語らう夜@きっかけ食堂東京vol.92
日時:1月10日(土) 17:00~21:00
場所:Salon de zuppa(東京・渋谷区千駄ヶ谷2)
主催:NPO法人 きっかけ食堂
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/862689666393001/
〇 映画『新・あつい壁』上映会(菊池事件)
日時:1月17日(土)19:00~21:30
場所:サンパルネ(東京・東村山市)
主催:国民民主党東京都第20区総支部
(詳細、問合せ等↓)
https://onishi.tokyo/wp/wp-content/uploads/2025/12/A4_20260117_001.pdf
〇 食べながら学ぶ~おいしい料理をいただきながら、食をめぐる深いテーマにふれ、考える講座~レストランで食べる福島産の牛肉
日時:1月24日(土)10:30~13:00
場所:ラ・ピネータTOKYO(東京・世田谷区経堂)
主催:NPO法人 CSまちデザイン
(詳細、問合せ等↓)
https://cs-machi.com/shimokouza14/
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「今年こそ、本気で世界平和を目指すアドバルーンを高々と上げるようなリーダーが出てこないかな」
「どうだろうね」
「気球(希求)の年にしたいね」
コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.333は1月19日(月)[和暦 師走朔日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
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