◇フード・マイレージ資料室 通信 No.336◇
2026年3月3日(火)[和暦 睦月十五日]
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◆ F.M.豆知識 原発事故被災地の居住率の推移
◆ O.カレント きっかけ食堂
◆ ほんのさわり 日本ペンクラブ(編)『原発回帰を考える』
◆ 情報ひろば 第9回 食と農の未来フォーラム(計画中)
ブログ更新、イベント情報等
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今年も3月を迎えました。3.11をこの季節だけの「年中行事」にはしたくありませんが、今号は原発事故被災について取り上げます。それにしても「日に日に世界は悪くなる」ような。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-避難地域12市町村の居住率の推移-
【ポイント】
東京電力・福島第一原発の事故に伴い発出された避難指示の解除が遅かった市町村の居住率は、15年目の現在も低い水準にとどまっています。

2011年3月11日、東京電力・福島第一原子力発電所の事故の発生を受けて政府は原子力緊急事態宣言を行い、原発周辺の市町村に避難指示を発出しました。これら市町村の住民は、住民票もそのままに避難を余儀なくされました。その後、避難指示の区域は次第に縮小され、避難先から帰還する住民も増加しています。
リンク先の図336は、避難指示が出された福島・浜通り地方の12市町村(一部地域)の居住状況(居住率の推移)を示したものです。なお、居住率とは、住民基本台帳に登録されている人口に対する現に居住している者の数の割合です。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/03/336_fukushima.pdf
原発事故から10年後の2021年以降の居住率の推移を図示していますが、各市町村とも徐々に上昇していることが分かります。特に広野町、田村市(都路地区)、川内村は2025年11月1日時点で80%を超えており、次いで楢葉町、南相馬市(小高区等)は60%を、川俣町(山木屋地区)は50%を上回っています。これら市町村は比較的早い時期に避難指示が解除されたこともあり、現在は事故前の住民数の半数以上が居住していることが分かります。
一方、残りの6市町村の居住率は現在も50%を下回っています。うち葛尾村、飯舘村は30%を上回っているものの、避難指示の解除が遅かった双葉町(2020年に一部解除)は3.9%、大熊町(2019年に一部解除)は10.8%にとどまっています。なお、現在も避難指示が継続している帰還困難区域の面積は約309平方kmとなっています。
このように、原発事故から間もなく15年目を迎える現時点においても、まだまだ住民の避難先からの帰還が進んでいない地域があるのです。
なお、居住者には帰還者だけではなく移住者も含まれます。居住者に占める移住者の割合は、例えば富岡町では62%、大熊町では69%となっており、移住者の方が多い状況にあります。このことは、かつての住民の帰還は数字以上に低い水準にとどまっている一方、移住して起業する若者などもいることを示しています。
[データの出典]
新生ふくしま復興推進本部「復興・再生のあゆみ」(福島県ホームページ)各版から作成
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/ps-fukkoukeikaku1151.html
[参考]
避難指示区域の概念図(経済産業省ホームページ)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu/hinanshiji/2025/250401_hinansijikuikinogainen.pdf
◆ オーシャン・カレント
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-きっかけ食堂-
【ポイント】
2014年、京都の学生たちの「東北の被災地を思い出す時間を作りたい」という思いから始まった「きっかけ食堂」が、現在も京都、東京、仙台で続けられています。

きっかけ食堂が京都で発足したのは2014年5月。東日本大震災から3年が過ぎ「風化」が進む中、東北に行かなくても月に1回でも東北を思い出す時間を作ろうと、立命館大学の学生3名(当時)が立ち上げました。東北の食材を使った美味しい料理やお酒を楽しむことが、無理なく震災や東北を思い出すきっかけになると考えたそうです。
その後2019年にはNPO法人格を取得し、発足から10年を過ぎた現在も、京都、東京、仙台で月1回のイベントを開催し続けており、随時、オンラインイベントも開催されています(先日は能登に新規就農し被災されたご夫妻がゲストに招かれていました)。
きっかけ食堂は「誰がどこにいても、地域への想いをカタチにできる世界を作る」プラットフォームとして、多様な地域への“想い”を応援し、支え合うコミュニティの役割も果たしています。
現在、地域で挑戦を続ける若者たちを応援するマンスリーサポーターも募集中とのこと。若い人たちを中心とした自由闊達で心地よい取組みに、あなたも参加しませんか。
[参考]きっかけ食堂FBページ
https://www.facebook.com/kikkake.syokudo
マンスリーサポーター募集のページ
https://readyfor.jp/projects/kikkake-syokudo10th
拙ブログ(2026年2月 きっかけ食堂2題)
https://food-mileage.jp/2026/02/20/blog-624/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-日本ペンクラブ編(吉田千亜、桐野夏生、鈴木達治郎、朽木 祥、浅田次郎、野上 暁、橋爪 文、青木美希、落合恵子、吉岡 忍、金平茂紀、ドリアン助川)『原発回帰を考える-3.11から15年目の大転換』(2026.2、集英社新書)-
https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1299-b/
【ポイント】
エネルギー政策が原発を最大限活用する方向に大転換するなか、日本ペンクラブの会員有志による様々な立場からの「原発回帰」に対する警告の書です。

広島・長崎への原爆投下から80年という節目の2025年、日本は原子力発電を最大限に活用する方向にエネルギー政策を大転換しました。本書は、同年に創立90年迎えた日本ペンクラブの会員有志(作家、ジャーナリスト、詩人、研究者等)による様々な立場からの「原発回帰」に対する警告の書です(以下、敬称略)。
冒頭、日本ペンクラブ会長の桐野夏生は、被爆者や避難者など「核(放射能)の被害者の苦しみを共有することは唯一の被爆国・日本の意地ではなかったか」とします。
吉田千亜(ライター)はイノベーション・コースト構想の危険性(軍事化との関わり)を告発し、鈴木達治郎(長崎大学)は原子力政策の根本的見直しを提言しています。金平茂紀(ジャーナリスト)は、「原子力利用は隠蔽とねつ造の歴史」であると断じ、青木美希(ジャーナリスト)は「報道が再び原発事故に加担してはならない」と記しています。
落合恵子(作家)の「わたしたち高齢者こそ、異議申し立ての姿を次の世代に見せたいと思いませんか」との言葉には心励まされました。
ドリアン助川の「忘却の果てに」と題する長い詩も収録されています。
「東京の礎は コンクリートや鉄ではなく 忘却である」に始まり、「忘れることは 生きていくための方法でもある」としつつ、最後は「だが 忘れてはいけないこともあるだろう」と結ばれます。
去る2月16日(月)に東京・渋谷で開催された出版記念イベントでは、本人による迫力ある朗読があり、参加者の胸を打ちました。
先日の総選挙では原発の再稼働のみならず新増設まで主張する与党が圧勝し、ますます「原発回帰」の流れが加速しそうです。桐野会長が書かれているように「我々は世界が壊れようとしている淵に立っている」のかも知れません。
[参考]拙ブログ(『原発回帰を考える』『ロッコク・キッチン』)
https://food-mileage.jp/2026/02/20/blog-624/
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報(一部再掲)
〇 2026年2月 きっかけ食堂2題[2/20]
https://food-mileage.jp/2026/02/20/blog-624/
〇 うおこう寄席-落語と江戸東京野菜のお話[2/20]
https://food-mileage.jp/2026/02/20/blog-625/
〇 『原発回帰を考える』『ロッコク・キッチン』[2/23]
https://food-mileage.jp/2026/02/23/blog-626/
〇 「「日本人ファースト」って?『武士の娘』から考える」(第8回 食と農の未来フォーラム)[2/11]
https://food-mileage.jp/2026/02/24/blog-627/
〇 「時の海-東北」美術館建設予定地をめぐる日帰りバスツアー[2/26]
https://food-mileage.jp/2026/02/26/blog-628/
▼ 第9回 食と農の未来フォーラムの開催について
3月中の開催を計画しています。詳細が決まり次第、拙ウェブサイト、SNS等でご案内させて頂きます。
[以下、ウェブ掲載用に追加)
(1)日 時 2026年3月28日(土)18時30分~21時
(2)ゲスト 菅野芳秀さん(山形・長井市、農業)
(3)テーマ 「令和の百姓一揆2026~農業の現場から都会の消費者の皆さんに訴えたいこと」(仮題)
(4)開催方式等 会場およびオンライン(zoomを利用)
詳細、申し込みはこちらから→https://peatix.com/event/4908199/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 農あるまちづくり講座のフォローアップ講座
講師:坂内啓二氏(農水省統計部管理課長)
日時:3月3日(火)18:30~19:30【今夜です】
場所:オンライン
主催:都市農業研究会
(zoomアドレス等↓)
https://us06web.zoom.us/j/83626232975?pwd=HucmEJiIVwOL53DvG6eKsDvTfwjbBp.1
ミーティング ID: 836 2623 2975
パスコード: 307005
〇 サステナブルな服育とは?
講師:鈴木純子さん(日本リ・ファッション協会)
日時:3月3日(火)20:00~22:00【今夜です】
場所:オンライン
主催:友部コモンズ勉強会
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1953800445211843
〇 第124回 中山七里『有罪、とAIは告げた』
日時:3月9日(月)19:00~21:00
場所:オンライン
主催:奥沢ブッククラブ
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1947386569540343
〇 東京都 平和の日記念式典
日時:3月10日(火)14:00~15:15
場所:東京都庁大会議場(東京・新宿)
主催:東京都
(詳細、問合せ等↓)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/12/2025122410
〇 原発事故を忘れない 3.11ともしびの集い
日時:3月11日(水)11:00~13:00
場所:歌声喫茶ともしび(東京・高田馬場)
主催:歌声喫茶ともしび
(詳細、問合せ等↓)
https://tomoshibi.co.jp/utagoekissa/post-2726
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「少子化対策って、おせち料理と似ているね」
「えっ、どういうこと?」
「どちらも二子目(煮しめ)がポイントですから」
コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.337は3月19日(木)[和暦 如月朔日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見・ご批判、ご要望等をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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