-岸 康彦『食の同時代史-デパ地下・食育・フードテック』(2026.3、創森社)-
https://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=451
【ポイント】
ここ約30年間の生々しい食の動きについて、その背景・要因と影響を含めて丹念に分析・記述されており、食や農に関心のある方にとって必携の書です。

著者は1937年岐阜県生まれの農政ジャーナリスト。日本経済新聞論説委員、愛媛大学教授、日本農業研究所理事長等を歴任されました。
同じ著者による名著『食と農の戦後史』(1996年)は戦後日本の食と農の歩みを検証した名著ですが、本書はその食部門の続編(対象は1995年前後~2025年夏)です。
もとより食の世界は、生産・輸入から加工、流通、外食、食卓に至るまで大きな広がりと奥行きを持っていますが、著者はそのなかから特に「これ抜きには時代は語れない」4つの分野を取り上げています。
その第1はデパ地下に象徴される中食の台頭。消費者がコスパ、タイパを重視するなかで外食と中食のせめぎ合いが続いている状況が描かれます。第2はBSE(牛海綿状脳症)に代表される食をめぐるリスクの顕在化。企業による過失や意図的な偽装などが頻発したことも紹介されています。第3は食の安心を求める中での「地産地消」「食育」運動の広がり。第4は2010年代以降のフードテックで、培養肉や昆虫食など「幻滅期」を経験しつつも「革命」は続いていると評価しています。
具体的な法律や事業はもとより企業や経営者等の固有名詞も記載されており、まさに同時代に農政の一端に携わっていた私自身にも、それぞれの時代の記憶が鮮やかに甦ってきました。
本書は「令和の百姓一揆」で締めくくられています。
食の大きな変化(外部化、洋風化、簡便化等)は私たち消費者の選択の結果でもありますが、その帰結が農業・農村の疲弊から起こった「一揆」とは何とも皮肉ではあります。しかし言い換えれば、食と農の未来は私たち自身の選択によって変えられることも示しているのです。
なお、私事ながら、私が農林水産省・農林水産政策研究所在勤中に篠原孝所長(当時)の指導の下で携わった「フード・マイレージ」についても詳しく引用・紹介して下さっています。感謝申し上げます。
いずれにしても、食や農に関心のある方にとっては必携の書と思われます。巻末には詳細な索引とともに年表も収録されており、辞書的な利用もできます。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.337、2026年3月19日(木)[和暦 如月朔日]
https://food-mileage.jp/2026/04/01/letter-337/
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