◇フード・マイレージ資料室 通信 No.337◇
2026年3月19日(木)[和暦 如月朔日]
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◆ F.M.豆知識 農業の担い手の「若返り」?
◆ O.カレント 令和の百姓一揆2026
◆ ほんのさわり 岸 康彦『食の同時代史』
◆ 情報ひろば 第9回 食と農の未来フォーラムの開催について(3/28)
ブログ更新、イベント情報等
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中東情勢等はさらに混迷を深めていますが、一刻も早い停戦・和平の実現のために何ができるかを一人ひとりが考える必要があります。
本メルマガは時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-農業の担い手の「若返り」?-
【ポイント】
農家の平均年齢は0.2歳若返りましたが、これは直接的には多数の高齢農業者が引退したことによるものです。一方、地域における就農支援策に着目する必要があります。

去る2026年2月21日付けの日本経済新聞2面に興味深い記事が掲載されていました。
「農家の年齢、初の低下」との大きな見出しの下、農家の平均年齢が比較可能な1995年以降初めて低下した旨が紹介されています。都道府県別にみると全国の6割近い27都府県で「若返った」とのこと。
早速、元データ(農林業センサス)に当たってみました。
確かに農家(基幹的農業従事者)の平均年齢は2020年の67.8歳から2025年には67.6歳へと0.2歳低下しています。さらにやや詳細に、年齢階層別の基幹的農業従事者数の推移を示したものがリンク先の図337です。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/03/337_heikin.pdf
これによると、全国の基幹的農業従事者数は2020年の136.3万人から2025年には102.1万人へと、△25.1%と大きく減少しています。
これを年齢階層別にみると、15~34歳が△26.0%、35~64歳が△24.7、65~74歳が△30.1、75歳以上が△19.3と、いずれの階層も減少しています。つまり若年層が増加している(若返っている)訳ではなく、直接的には絶対数の多い高齢者が減少したことが、結果として平均年齢を押し下げたに過ぎないのです。
グラフは、特に平均年齢が下がった(若返った)上位3府県についても図示してあります。
石川、京都については全国と同様の傾向が見て取れますが、三重県については15~34歳の基幹的農業従事者が増加しているという特徴があります(他に増加したのは兵庫のみ)。
この背景には三重県における手厚い就農支援策があると、先に紹介した日本経済新聞の記事にはあります。担い手の確保については全国的には厳しい状況が続いているものの、地域において効果を上げている支援策に着目する必要もあります。
[データの出典]
農林水産省「農林業センサス」(2020年、2025年)から作成https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/index.html#y
◆ オーシャン・カレント
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-令和の百姓一揆2026-
【ポイント】
3月29日(日)14時30分から、東京・青山公園をスタート地点に「令和の百姓一揆2026」が挙行されます。都市部の消費者を含む多くの方の参加を期待します。

2026年3月29日(日)、昨年に引き続いて「令和の百姓一揆」が東京で行われます。主催は令和の百姓一揆実行委員会で、代表は菅野芳秀さん(山形・長井市、農業)です。なお、全国各地でも開催が予定されています。
農業は、生命・健康の維持に不可欠な食料の生産だけではなく、地域の環境や生態系の保全、コミュニティの維持等に貢献してきました。しかしながら現在、世界的な異常気象の頻発、農業生産資材価格の高騰等により、農業経営は持続可能な状況とはなっていません。担い手は急速に高齢化・減少しており、耕作されない農地も大きく増加しています。
もとより日本の食料自給率はカロリーベースで38%、このままでは食料の安定供給に支障が生じかねません。
日本の食を守るために立ち上がった全国の農業者の方たちを始めとする実行委員会の主催により、今年も「令和の百姓一揆」が挙行されることとなりました。なお、実行委員会には農業者のみならず、消費者団体、生協、ジャーナリスト等も多数参加しています(私も端くれに名前を連ねさせて頂いています)。
農業問題は都市問題、消費者問題に他なりません。東京都の食料自給率はカロリーベースで0%と、世界的な異常気象が同時多発した場合(その可能性は高まっています)、最初に飢えるのは都市住民とも言われています。
日本の農業、農村、食べものを大切に思う方は、どうぞ3月29日(日)14時30分に東京・青山公園にお集まり下さい。決して「打ちこわし」など過激な行動に走ることはありません。一緒に都会のど真ん中を行進しましょう。
[参考]チラシはこちら。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/03/ikki2026_flyer.pdf
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-岸 康彦『食の同時代史-デパ地下・食育・フードテック』(2026.3、創森社)-
https://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=451
【ポイント】
ここ約30年間の生々しい食の動きについて、その背景・要因と影響を含めて丹念に分析・記述されており、食や農に関心のある方にとって必携の書です。

著者は1937年岐阜県生まれの農政ジャーナリスト。日本経済新聞論説委員、愛媛大学教授、日本農業研究所理事長等を歴任されました。
同じ著者による名著『食と農の戦後史』(1996年)は戦後日本の食と農の歩みを検証した名著ですが、本書はその食部門の続編(対象は1995年前後~2025年夏)です。
もとより食の世界は、生産・輸入から加工、流通、外食、食卓に至るまで大きな広がりと奥行きを持っていますが、著者はそのなかから特に「これ抜きには時代は語れない」4つの分野を取り上げています。
その第1はデパ地下に象徴される中食の台頭。消費者がコスパ、タイパを重視するなかで外食と中食のせめぎ合いが続いている状況が描かれます。第2はBSE(牛海綿状脳症)に代表される食をめぐるリスクの顕在化。企業による過失や意図的な偽装などが頻発したことも紹介されています。第3は食の安心を求める中での「地産地消」「食育」運動の広がり。第4は2010年代以降のフードテックで、培養肉や昆虫食など「幻滅期」を経験しつつも「革命」は続いていると評価しています。
具体的な法律や事業はもとより企業や経営者等の固有名詞も記載されており、まさに同時代に農政の一端に携わっていた私自身にも、それぞれの時代の記憶が鮮やかに甦ってきました。
本書は「令和の百姓一揆」で締めくくられています。
食の大きな変化(外部化、洋風化、簡便化等)は私たち消費者の選択の結果でもありますが、その帰結が農業・農村の疲弊から起こった「一揆」とは何とも皮肉ではあります。しかし言い換えれば、食と農の未来は私たち自身の選択によって変えられることも示しているのです。
なお、私事ながら、私が農林水産省・農林水産政策研究所在勤中に篠原孝所長(当時)の指導の下で携わった「フード・マイレージ」についても詳しく引用・紹介して下さっています。感謝申し上げます。
いずれにしても、食や農に関心のある方にとっては必携の書と思われます。巻末には詳細な索引とともに年表も収録されており、辞書的な利用もできます。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 81回目の「3.10」に思うこと[3/12]
https://food-mileage.jp/2026/03/12/blog-629/
〇 15回目の「3.11」、忘れてはならないこと[2/20]
https://food-mileage.jp/2026/03/15/blog-630/
▼ 第9回 食と農の未来フォーラムの開催について
(1) 日時 2026年3月28日(土)18時30分~21時
(2) テーマ「令和の百姓一揆~農業の現場から都会の消費者の皆さんに訴えたいこと」(仮題)
(3) ゲスト 菅野芳秀さん(山形・長井市、農業、「一揆実行委員会」代表)
(4) 開催方式等 会場およびオンライン(zoomを利用)
会場:東北カフェ&ダイニング トレジオンポート(東京・港区赤坂3)
(5) 参加費 会場6000円、オンライン1000円
チケットを申し込んで下さった方には、終了後、アーカイブを配信予定
詳細及び申込みは以下からお願いします。
https://peatix.com/event/4908199/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇『NOTO hundreD 能登の食と人と文化を感じるタビ』キックオフイベント
日時:3月24日(火)18:00~20:00
場所:SLOTH JINNAN TERRACE(東京・渋谷神南1)
主催:オーガニックベース石川
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/2640279983008171/
〇 令和の百姓一揆2026
日時:3月29日(日)14:30~
場所:青山公園南地区~軽トラ等パレード
主催:令和の百姓一揆実行委員会
(詳細、問合せ等↓)
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/03/ikki2026_flyer.pdf
〇 ハンセン病問題を知る企画2026春-「らい予防法」から考える
日時:3月31日(火)~4月5日(日)9:30~18:00
場所:東村山市立中央公民館1階展示室(東京・東村山市)
主催:ハンセン病問題を知る企画 実行委員会
(詳細、問合せ等↓)
https://hansen-higashimurayama.jimdofree.com/
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「泣きながら見つめていたのは、カモメじゃなくてミサイルだったの」
「ホルムズ海峡冬景色、ね」
さて、日本時間明日未明の首脳会談はどうなることやら。
コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.338は4月2日(木)[和暦 如月十五日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見・ご批判、ご要望等をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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