◆ F.M.豆知識
食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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「耕地利用率」
日本農業の「実力」をめぐって様々な議論が活発です。弱い産業だからて保護すべき(せざるを得ない)という見方から、さらに輸出増が期待されるなど実力を評価する意見もあります。
日本農業の実力(ポテンシャル)を端的に表す指標の一つが、「耕地利用率」であると思っています。
耕地利用率とは、作物の作付け延べ面積を耕地面積で割った数値。つまり、その農地が1年間で何回利用されたかを示す指標です。例えば二毛作であれば、作付け延べ面積は耕地面積の2倍になるため、耕地利用率は200%となります。
もとより日本は島国で、かつ山地が多いことから、人口を支えるために耕地は集約的に有効利用されてきました。
1950年代後半の耕地利用率(全国平均)は130%台後半でした。つまり農地には1年間で1.4品目程度が作付けられていたのです。東北・北陸など気象条件から二毛作が困難な地域もあることを思えば、これは妥当な水準と言えるかも知れません。
ところが、1970年代には耕地利用率は100%程度にまで急速に低下し、その後やや持ち直したものの、近年はさらに低下し90%強の水準で推移しています(リンク先の図50の赤い折れ線)。
このことは、日本の農地に作付けされている作物は平均して1年に1作未満、つまり、全く作付されていない農地が存在していることを示しているのです。
この間、耕地面積も減少傾向で推移してきました(茶の折れ線)。住宅用地や商工業用地への転用がなされたためです(近年は耕作放棄も増えています)。
しかし、耕地面積の減少の程度以上に作付け延べ面積が減少(緑の折れ線)しているため、耕地利用率が低下しているのです。作付け延べ面積が減少しているのは、主に担い手不足によるものと考えられます。
そして、耕地利用率の推移のグラフを総合食料自給率(カロリーベース、青い折れ線)と重ねると、その形は見事に一致します。つまり、耕地利用率の低下は、日本農業の実力が低下していることを示しているとみることができるのです。
そのようななかでも、九州、あるいは熊本の耕地利用率は、全国平均あるいは都府県平均に比べて際立って高い水準にあります(棒グラフ)。
今般の一連の震災は、熊本、大分を中心に九州の農業に大きな被害をもたらしました。日本農業の実力を支えるためにも、熊本等の農業の一日も早い復旧・復活を期待したいと思います。
[出典、参考資料等]
農林水産省「耕地及び作付面積統計」
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/menseki/index.html
FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html
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