【メルマガ】F.M.Letter No.212

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.212◇
 2021年2月26日(金)[和暦 睦月十五日]
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◆ F.M.豆知識  被災三県のGDPの推移
◆ O.カレント  リスコミ「共に考える 食品中の放射性物質」
◆ ほんのさわり 赤松利一『藻屑蟹』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦では睦月も半ば。「睦」という字は人々が行き交い睦み合うことを指しますが、残念ながら首都圏では緊急事態宣言が継続される模様です。
 本メルマガは、時の流れを体感するため和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。 
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−被災三県のGDPの推移−

東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故から、間もなく丸10年を迎えます。その間、特に被害が大きかった三県(岩手、宮城、福島)の経済はどのように推移してきたでしょうか。
 リンク先の図212の下半分は、三県及び全国の県内(国内)総生産の推移を、震災前の2010年を100とした指数で示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/02/212_kenGDP.pdf

 全国のGDPは2018年には110となりました。つまり経済は10%成長したのです。
 これに対して被災三県のGDPは、2011年には岩手を除いて落ち込んだものの、その後回復し、おおむねね全国の水準を上回る成長を続けてきました。ただし福島については、最近はほぼ全国と同水準となっています。

 グラフの上半分は、GDPに占める建設業の割合です。
 全国のシェアがほぼ5%台で推移しているのに対して、被災三県ではおおむね10%前後という、全国平均の倍の水準で推移してきました。つまり、被災三県が達成してきた相対的に高い経済成長は、いわゆる復興事業に支えられてきたものだったのです。
 震災から10年を経過し、復興事業も新たなステージに入ります。被災三県においては、大規模公共事業等に依存することのない、内発的な発展がより重要となってくるものと思われます。
 そしてこのことは、実は被災三県に限られたことではなく、日本の各地域が等しく直面している課題でもあります。

[資料]
 岩手県『県民経済計算』
 http://www3.pref.iwate.jp/webdb/view/outside/s14Tokei/top.html
 宮城県『県民経済計算』
 https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/toukei/kenminh30.html
 福島県『県民経済計算』
 https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11045b/17019.html#nenpou
 内閣府『国民経済計算』
 https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。 
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−リスコミ「共に考える 食品中の放射性物質」−

東電福島第一原発の事故から10年近くが経過し、基準値を超える食品はほとんど検出されなくなっている一方で、震災直後と比べて報道等で情報を得る機会は減っています。また、いわゆる「風評被害」も払拭されてはいません。 

 内閣府食品安全委員会、消費者庁、厚生労働省及び農林水産省は、食品に関するリスクコミュニケーション「共に考える 食品中の放射性物質」をオンラインで開催します。学識経験者や行政からの情報提供を受けて、関係者の間で意見交換を行うものです。ポケマル等でお世話になっている福島・いわき市の生産者の方も登壇される予定です。
 動画等は2021年3月1日(月)から公開、7日(日)までの間に意見・質問等を受け付け、回答は後日ウェブサイトに掲載されるとのことです。 

(参考)消費者庁HP
 食品に関するリスクコミュニケーション「共に考える 食品中の放射性物質」の開催について
 https://www.caa.go.jp/notice/entry/022589/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。 
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−赤松利一『藻屑蟹』(徳間文庫、2019.3)−
 https://www.tokuma.jp/book/b493527.html

著者は1956年香川県生まれ。会社も家庭も破綻して東日本大震災後の東北で土木作業員、除染作業員を経験。その後上京し「住所不定」の生活を送りつつ、漫画喫茶で書き上げた本書で第1回大藪春彦新人賞を受賞(2018)したという方(!)。 

 福島・浜通りにある某市でうだつの上がらないパチンコ店の店長をしていた主人公は、毎夜、札束の夢を見てうなされるほどのカネの亡者。高校時代の同級生に誘われて除染作業の監督者になり、そこで知り合ったベテラン原発作業員の遺書をネタに電力会社を脅そうとたくらみます。
 何でもカネで解決しようとする電力会社、日当は「中抜き」され人権さえ無視される原発作業員、補償金や義援金が生む断絶、原発事故からの避難者と地元住民との軋轢なども描かれます。著者が「自分で見てきたこと」を基にしているそうです。
 それでも最後、主人公は月500万もの収入を捨て、津波で家族を亡くしメンタルを病んだ女性のアパートに駆け付けるのです。

 物議をかもす、あるいは現地の当事者の方々が不快に思う記述もあるかも知れませんが、報道等では知ることのできなかった被災地の状況を肌で感じられたように思われました。主人公の最後の決断の爽快感が心に残りました。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 〇 新しい年。そして10年後の被災地。[2/15]
 https://food-mileage.jp/2021/02/15/blog-302/

〇 ミュニシパリズムの経験から学ぶ(縮小社会研究会)[2/17]
 https://food-mileage.jp/2021/02/17/blog-303/

〇 人をつなぐ食(祖師ヶ谷大蔵〜高円寺〜山口・下関)[2/22]
 https://food-mileage.jp/2021/02/22/blog-304/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 『飯舘村と、近未来』これから10年
 日時:2月28日(土)14:00〜17:00
 場所:オンライン
 主催:ふくしま再生の会
 (詳細、問合せ等↓)
 http://www.fukushima-saisei.jp/info/20210213/2929/

○ なぜ大学生は虫ぎらいなのか(市民研入門講座)
 日時:2021年3月1日(月)19:00〜20:00
 場所:オンライン
 主催:NPO市民科学研究室
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/csijwebinar_introduction/

○ 奥沢ブッククラブ第65回 ミヒャエル・エンデ『モモ』
 日時:3月8日(月)19:00〜21:00
 場所:オンライン
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/438949927462615/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「パーティーや合コンって苦手なのよね。季節の変わり目と同じ」
「えっ、どういうこと?」
「歓談(寒暖)についていけないの」

 気温の変動が激しいですね。どうぞご自愛ください。
 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
  https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.213は3月13日(土)[和暦 如月朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
  https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
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