【ブログ】離れている人や場所を想像すること

農業者ではない私も加入させて頂いている小農学会(間口の広い「学会」です。)の事務局から、先日、『山下惣一聞き書き-振り返れば未来』(2022年12月、不知火書房)が送られてきました。

 今年7月に86歳で逝去された山下惣一さん(佐賀・唐津市出身の農民作家)は、私にとって人生の羅針盤のような方でした。
 10月30日(日)には「しのぶ会」が福岡市で開催され、約160人が参加されたとのこと。なお、東京でも12月18日(日)に開催される予定だそうです。

山下さんは遠いところに旅立たれる前に、私たちに貴重な言葉をまとめて残して下さいました。「聞き書き」して下さった佐藤 弘さん(元 西日本新聞編集委員)にも感謝です。

各地から「自然の恵み」が届いています。有難いことです。

 この10月の稲刈り体験でもお世話になった新潟・上越市大賀からは、棚田で育ち、天日干しされたお米。梅干しと嬉しいお手紙も同封して下さっています。
 11月に訪問させて頂いた、同じ上越市の川谷地区にある星の谷ファームさんからは、湧水で棚田で育てられた「リゾット米」。これは初めて、楽しみです。

本木・早稲谷 堰と里山を守る会(福島・喜多方市山都)からも新米が到着。
 春に参加させて頂いた「堰浚いボランティア」のお礼とのこと、恐縮です。ラベルはその時の集合写真。

その堰浚いの前日にお邪魔した「会津春泥(あいづ自然栽培農家の会)」さんからは、ファンクラブ会員向けの新米が届きました。
 4人の生産者の方のコシヒカリ、会津夢まどか、亀の尾。パッケージもパンフレットもお洒落、食べ比べが楽しみです。

同じ福島からは「高校生が伝えるふくしま食べる通信 30号」も到着。
 今回は南相馬市小高(おだか)区の唐辛子などの特集。小高ビーフカレーはしっかりと辛口ながら、深みがあって美味でした。
 高校生の皆さま、毎回有難うございます。

たとえ地理的・物理的には離れていても「顔の見えている」方が送って下さったものは身近に感じられます。大切に頂きます。

2022年11月18日(金)の夕刻は、久しぶりに東京・祖師ヶ谷大蔵駅近くにあるゴホウビダイナーへ。
 食品関係の企業で働いておられた店主の齊藤星児さんは、市場では丹精込めた生産物に正当な対価がつかないことに義憤を覚え、自分の力で生産者の思いを届けようと一念発起し、飲食店を始められたという方。
 メニュー表にも店内の壁にも、生産者や産地の情報が満載。離れた産地の生産者の思いを、都会で味わうことのできる貴重な場です。
 この日はクラフトビールやハンバーガーを頂きました。

詳しい事情は存じ上げませんが、このお店は今年いっぱいで閉店される予定とのことです。残念ですが、コロナ禍や原材料価格高騰のダメージが大きかったことは想像できます。
 齊藤さんの、新しいステージでのますますのご活躍を期待しています。

11月20日(日)は、東京・十条にあるパレスチナ料理店「ビサン」へ。12名ほどで、さほど広くない店内はいっぱいです。

 食事に先立ち、写真家・高橋美香さんからのお話。
 アフガニスタンでは、昨年8月のアメリカ軍撤退とタリバン政権の復活から、現在も混乱が続いているとのこと。支援を続けてきた「山の学校」も、先生たちの多くが迫害を避けてカブールや国外に避難しているなど、再開の見通しは立たないそうです。
 それでも、首都・カブールでは「みんなを助けることはできないけれど、目の前の人は助けることができる」と、自費で子ども達に食事を提供している方がおられるという話も伝えて下さいました。

一方のパレスチナでは、11月の右派政権への交代により、パレスチナ人に対する暴力等が公然と行われるようになっている。美香さんがリツイートされているアラブや欧米のメディアの映像には、胸が潰されそうな思いがします。
 努めて明るく話す美香さんですが、時おりつく深いため息が、展望の見えなさを表しているようです。 

話の間に、店主のスドキさん(5月には山梨でもお世話になり有難うございました。)が料理を並べて下さいます。
 お話が一段落したところで、ザクロジュースやワインで乾杯!

ホンムス(ひよこ豆のペースト)や練りゴマのサラダペースト、オリーブ油たっぷりのアラブサラダ、鶏の丸焼き、ピタパンなど。
 そしてこの日も、何とマクルーバ(「ひっくり返す」の意)まで出して下さいました。いったん鍋を頭の上にまで持ち上げたスドキさん(これはパフォーマンス?)、ひっくり返して皿に盛りつけます。鶏肉がたっぷり入った、優しい味の炊き込みご飯です。

帰り際、美香さんからクルドのお母さんのネックレスを求めさせて頂きました(こちらでも取り扱っておられるそうです)。
 見事に繊細な組み紐細工です。売り上げは娘さんの学費に充てられるとのこと。

アフガニスタンもパレスチナもクルドも、遠く離れています。日本のマスコミもあまり取り上げません(欧米と比べても報道は少ないそうです)。
 現地の方達とも直接つながっておられる美香さんのお話をお聞きすることは、現地を訪ねたことも知識もない私にとって、毎回、少しでも状況を理解・想像するための非常に貴重な機会となっています。

その美香さんのご新著(写真・文)『パレスチナに生きるふたり-ママとマハ』(かもがわ出版)が、明年1月に刊行されます。
 美香さんが居候して、ともに生活を送った二人の女性。一人は住んでいた土地を奪われ、一人は難民キャンプで暮らしながら、家族や周りの人を思いやり懸命に生きておられるそうです。

美香さんのおススメに従って、さっそく、近所の街の本屋さんで予約しました。
 残念ながら私の住んでいる地域でも、ここ数年の間でたくさんの書店が無くなっています。