◇フード・マイレージ資料室 通信 No.255◇
2022年11月24日(木)[和暦 霜月朔日]
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◆ F.M.豆知識 高齢化しつつ大きく減少を続ける農業の担い手
◆ O.カレント 星の谷ファーム・天明伸浩さん(新潟・上越市川谷)
◆ ほんのさわり 『振り返れば未来−山下惣一聞き書き』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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和暦は霜月へ。冷え込む日が続くようになりました。それにしても強豪相手の初戦に逆転で勝点3とは(祝)。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録して下さっている皆様に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−高齢化しつつ大きく減少を続ける農業の担い手−
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻等により日本の食料安全保障は危機に面していると言われていますが、実は最大のリスク要因は国内にあります。
それは、国内において食料を安定供給する基盤の脆弱化です。
リンク先のグラフは、農業の担い手(基幹的農業従事者)数の推移を年齢階層別に示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/11/255_ninaite.pdf
これによると、基幹的農業従事者(ふだん仕事として主に自営農業に従事している者)の数は2005年には224万1千人でしたが、2020年は136万3千人と、15年間で約6割へと大きく減少しています(組替集計)。
さらに2020年について年齢階層別にみると、65〜74歳が38%、75〜84歳が25%、85歳以上が7%と、高齢者が大きな割合を占めているのに対して、55〜64歳は16%、35〜54%は12%と少なく、34歳以下の者は3%弱しかいません。
65歳以上の者の割合でみると70%となっており、これは2005年以降、上昇傾向で推移しています。
つまり、日本の農業生産を担っている労働力は、急速に高齢化しつつ大きく減少しているのです。
この傾向が続けば、近い将来、国内の農業生産力は大きく低下することが予想されます。農業の担い手の育成と確保は、食料安全保障のためにも最も重要かつ喫緊の課題と言えます。
データの出典:
農林水産省「農林業センサス」(令和3年度 食料・農業・農村白書(令和4年5月27日公表)における組替集計)から作成。
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r3/r3_h/trend/part1/chap1/c1_1_01.html
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−星の谷ファーム・天明伸浩さん(新潟・上越市川谷)−
新潟・上越市吉川区の山間部に、ブナの森が広がる川谷集落があります。豊かな湧き水に恵まれていますが、冬には2mを超す積雪があるそうです。
ここで「星の谷ファーム」を家族で営んでおられる天明伸浩(てんみょう・のぶひろ)さんは、東京都のご出身。大学院修了後の1995年、パートナーの方とともにこの地に移住・新規就農されました。
現在は離農された方から引き受けた農地を含む約7haで、合鴨農法などによる米作り、ブルーベリーの栽培・加工、平飼い養鶏等に取り組んでおられます。
先日(11月13日)、初めて現地をお訪ねし、直接お話を伺わせて頂きました。
天明さんはお忙しい作業の手を休め、棚田の広い畦畔の草刈りの大変さ、平坦部を含めて地域の担い手の高齢化が急速に進んでいること、農村地域の人間力の形成力の大きさ等について、時おりユーモアも交えながら語って下さいました。
農産物流通がグローバル化する一方で、国連等の場においては地域の暮らしや自然を守ってきた家族経営や小農が見直されています。天明さんは、移住・新規就農者を希望する人に対して、「ぜひ一緒に地域の農業や暮らしを作りませんか」と呼びかけておられます。
(参考)星の谷ファームHP:http://myhp.jcv.jp/starvalley/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−『振り返れば未来−山下惣一聞き書き』(2022年12月、不知火書房)−
https://www.nishinippon.co.jp/image/581593/
本年7月、佐賀・唐津の農民作家である山下惣一さんが逝去されました(享年86)。個人的な話で恐縮ながら、私にとって山下さんの著作は、人生の節々における羅針盤でした。
本書は、生前、ご自身の生涯を振り返りつつ語られた内容について、西日本新聞に連載された記事を基に、約2倍の分量に加筆され、一冊の単行本としてまとめられたものです。
聞き手は、山下さんの弟子と自称されている佐藤 弘さん(元西日本新聞編集委員)です。
改めてまとめて読んでみて、山下さんの生涯は、正に日本の農業、農村が歩んできた道そのものであることが理解できました。
基本法農政の下で奨励されて植えたみかんの木は、25年後、アメリカとの自由化交渉の結果を踏まえて伐採することに。1980年代の財界や評論家からの激しい「農業叩き」には闘争心を露わにします。日本各地の心ある「百姓」とつながり、さらにはアジアや南北アメリカ、ロシア等を訪問し、海外の農民とも連帯していきます。
「大地と自然を相手にする農業は、ウソもごまかしも通用しない。だから明日を信じて木を植える。明日を切り開くヒントは未来にではなく、人々が歩いてきた跡(人類の歴史)にある。こんな閉塞した時代だからこそ、農業に学び、どっかりと腰を据えて展望を開いていこうじゃありませんか」。
遺して下さった貴重な言葉を自分なりに受け止め、これからも大事にしていきたいと思います。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 武蔵野の落ち葉堆肥農法セミナー(埼玉・三芳町)[11/11]
https://food-mileage.jp/2022/11/11/blog-402/
○ 新潟・上越市大賀の収穫祭など[11/15]
https://food-mileage.jp/2022/11/15/blog-403/
○ 離れている人や場所を想像すること[11/22]
https://food-mileage.jp/2022/11/22/blog-404/
▼ 筆者が登壇させて頂くイベントです。
○ CSまちデザイン20周年記念講座
日時:2022年11月26日(土)14:00〜15:30
場所:会場(東京・世田谷区宮坂3、生活クラブ館2F)
またはオンライン(期間限定で動画視聴できます。)
タイトル:「今、改めて食について考える
−フード・マイレージから見えてくるもの−」
定員:会場、オンラインともに30名
受講料:1,500円
(詳細、申し込み等)
https://cs-machi.com/shiminkouza/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ 秋津ちろりん村「ミニ収穫祭」
日時:11月26日(土)受付10:00〜11:30
場所:秋津ちろりん村(東京・東村山市秋津町1)
主催:秋津ちろりん村(東村山市)
(詳細、問合せ等↓)
https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/event/main/omatsuri/tirorinsyuukaku.html
○ 山形で継承されてきた伝統的な食材を次世代に伝えるセミナー
日時:11月28日(月)13:00〜15:00
場所:オンライン
主催:東北農政局
(詳細、問合せ等↓)
https://www.maff.go.jp/tohoku/press/syouan/syouhiseikatsu/221028.html
○ CCNE連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2022
第10回 事故由来放射性廃棄物による汚染の広がりと錯綜する対処
日時:11月29日(火)17:00〜18:00
場所:オンライン
主催:原子力市民委員会
(問合せ等↓)
http://www.ccnejapan.com/?p=13268
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄。
ウクライナでの戦火がやむまでお休み中です。現地は厳しい冬を迎えつつあるそうです(pray for peace.)。
過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに写真入りで掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.256は12月8日(木)[和暦 霜月十五日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールへの返信で届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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バックナンバー
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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
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