【メルマガ】F.M.Letter No.268 -pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.268◇
  2023年6月3日(土)[和暦 卯月十五日]
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◆ F.M.豆知識  「エシカル消費」に対する意識と実践
◆ O.カレント  One-Drop・山口裕子さん(東京・板橋区)
◆ ほんのさわり 島村菜津『シチリアの奇跡−マフィアからエシカルへ』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 気が付くと紫陽花も満開、早くも台風2号が接近中。気候変動は身近になっています。今号は「エシカル消費」を特集しました。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−「エシカル消費」に対する意識と実践−

消費者庁「令和4年度第3回 消費生活意識調査」(2022年12月)はエシカル消費を取り上げています。本調査では、「エシカル調査(倫理的消費)」を「地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動」と定義しています。

 エシカル消費を知っていると回答した人の割合は26.9%で、2016年(6.0%)、2019年(12.2%)に比べると、認知度が徐々に浸透してきていることを示しています。
 エシカル消費に対する認知度・興味、実践の状況を、性別・年齢階層別に示したものがリンク先の図268です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/06/268_ethical.pdf

これによると、エシカル消費について「言葉と内容の両方を知っている」と回答した人は全体で7.6%ですが、年齢階層別にみると最も高いのは10代の8.3%、次いで20代が2.2%と若い世代が高くなっています。
 また、エシカル消費に「非常に興味がある」と回答した人は全体で6.3%であるのに対して、10代は12.7%と非常に高くなっています。一方で「あまり興味がない」「全く興味がない」と回答した人は20代が64.1%ともっとも高くなっています。
 さらに、エシカル消費の実践度については、10代を別にすれば高齢層ほど高くなっています(高齢層では、特にマイバッグ等の利用、節水・節電、地域コミュニティ活動への参加といった選択肢への回答が多くなっています)。

このように、総じて若い世代はエシカル消費の認知度は高く、興味もあるものの、現実には実践につながっていない面もあることが伺えます。
 別の設問にある「エシカル消費に取り組んでいない理由」としては、若年層は「参加方法が分からない」「余裕がない」等の回答が多く、一方で「おしゃれなデザイン・活動だったら実践したい」とする回答が他の世代に比べてかなり多くなっています。
 将来の消費社会を形作っていく若年層のエシカル消費の実践度を向上させていくには、この辺りにヒントがあると思われます。

データの出所:消費者庁「令和4年度第3回 消費生活意識調査」(2022年12月) から筆者作成。
 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_003/

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−One-Drop・山口裕子さん(東京・板橋区)−

左はOne-DropのFBページ、右は板橋区前野町にて(2023.5/20)

多くの新しい出会いがあったECOM 30周年ワークショップ(3月29日)。登壇された方のお一人・山口祐子さんの「板橋区をエシカルタウンにしたい」という発言には、正直、驚きました。
 平日には保育士補助の仕事をされ、パンクロックのドラム演奏が趣味という山口さんは、週末には東京・板橋区で「エシカルな雑貨屋さん One-Drop」を展開されています。

One-Dropでは、エシカル、フェアトレード、サステナビリティをコンセプトに、生活にスパイスをプラスできるような、ファッションから食品まで多岐に渡る商品を取り扱っています。いずれも山口さんが実際に使っており、お客さんにも使い続けてほしいものだそうです。福祉作業所の商品も取り扱っておられます。

去る5月20日(土)には「めぐるマルシェ」を訪ねました。月1回、住宅街の中にあるお米屋さんの軒先で開催されています。お話を伺っている間にも、何人もの方が覗いて買い物をされていきます。
 私も福祉園のシフォンケーキ(「板橋のいっぴん」に認定されているとのこと)、スリランカのカレー、職人の技を活かしたチョコレートなどを求めさせて頂きました。

One-Dropの商品は、板橋宿不動通り商店街の朝市(毎月第3日曜日、次回は6月18日)でも求めることができますが、「めぐるマルシェ」は、今後は年4回程度の開催にするそうです(次回は9月16日(土、予定))。
 一方、山口さんは、今秋を目標にクリエイターとしてアパレルブランドをリリースする予定とのこと。

「私らしくエシカルを発信、提案していきたい。自分の生き様を見てもらって、エシカルをもっと身近に感じてもらいたい」と語る山口さん。進化と行動力は止まりそうにありません。

(参考)
 One-Drop ウェブサイト
 https://onedrop0301.thebase.in/
 同 FBページ
 https://www.facebook.com/onedrop0301/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−島村菜津『シチリアの奇跡−マフィアからエシカルへ』(2022/12、新潮新書)−
 https://www.shinchosha.co.jp/book/610978/

著者は1963年長崎生まれ、福岡育ちのノンフィクション作家。イタリアのスローフード運動を紹介した『スローフードな人生!』(2000年)は大きな話題となり、私自身も当時、大いに触発されたことを覚えています。
 その著者が10年以上にわたって取材を続けてきたのがイタリアのシチリア島。シチリア島と言えば映画『ゴッドファーザー』で描かれているように、マフィアの本場というイメージがあります。

本書でもマフィアによる凶悪な事件の数々が描かれています。
 1991年、みかじめ料の支払いを拒否し、財界・司法界の腐敗体質を告発したパレルモ市の工場主は、商工会で孤立し銀行からの融資も拒否され、最後は背後から銃撃されて死亡します。翌年には、マフィアを裁こうとした二人の判事が相次いで爆殺されました。

これらの事件をきっかけに若者や市民が立ち上がります。500人の高校生と教師たちは反マフィアのプラカードを手に町を行進しました。
 ある学生たちのグループは「みかじめ料を払うのは尊厳を忘れた市民である」と書いたステッカーを、真夜中の目抜き通りに貼って回ります。次いで、みかじめ料を払わない店を応援したいという消費者の署名を集め、さらに、みかじめ料不払い宣言をする店を募集して消費者とつなぎ、マフィアにお金が流れない経済づくりに取り組みました。
 これは日常の買い物(財布による投票)がマフィア撲滅につながることを示した、画期的なエシカル消費運動であると著者は評価しています。

また、今やシチリアはイタリア最大の有機農業の地とのこと。
 マフィアから押収した土地をオーガニックの畑に変えて、在来種の小麦、オリーブ、ワインを作るという活動が盛んとなっているそうです。負のイメージを払拭するための地域おこしに取り組む人々の様子を、現地に取材した著者は活き活きと描いています。

著者は最後に、反マフィア活動を続けてきた神父の言葉を引用しています。
 「最も深刻な病は諦念であり、誰かがやってくれるだろうという考え。真の民主的な暮らしを実現していくためには、責任ある市民となるという自覚しかない」

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 白川真澄さん『脱成長のポスト資本主義』出版記念の集い[5/23]
 https://food-mileage.jp/2023/05/23/blog-438/

○ 大人の学校「食と環境カレッジ2023」[5/28]
 https://food-mileage.jp/2023/05/28/blog-439/

○ パレスチナの今−写真家・高橋美香さんの思い−[5/29]
 https://food-mileage.jp/2023/05/29/blog-440/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 匝瑳に辻信一さんをお迎えして
 日時:6月4日(日)16:00〜トーク、18:00〜『君の根は』上映
 場所:豊和コミュニティセンター(千葉・匝瑳市大寺)
 主催:高坂勝氏(SOSA project)
 (参考)
 https://masaru-kohsaka.com/2023/05/25/6-4%e6%97%a5%e5%8c%9d%e7%91%b3%e3%81%ab%e8%be%bb%e4%bf%a1%e4%b8%80%e3%81%95%e3%82%93%e3%82%92%e3%81%8a%e8%bf%8e%e3%81%88%e3%81%97%e3%81%a6/

○ 今夜はご機嫌@銀座で農業
 日時:6月5日(月)18:30〜19:45
 場所:中央区環境情報センター(東京・京橋)
 主催:Slow Food Ginza
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/902400737507528

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 ロシアのウクライナ武力侵攻以降、お休みです。バックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.269は6月18日(日)[和暦 皐月朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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