◇フード・マイレージ資料室 通信 No.270◇
2023年7月2日(日)[和暦 皐月十五日]
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◆ F.M.豆知識 コロナ禍の下でも堅調だった「中食」
◆ O.カレント 今関麻子さん(農家支援キッチンカー“eat for” )
◆ ほんのさわり 堤 未果『ルポ 食が壊れる』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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夏至も過ぎ、2023年は後半に入りました。今日は半夏生(はんげしょう)。時節柄どうぞご自愛ください。今号では「中食」を含め、私たちの食について考えてみました。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−コロナ禍の下でも堅調だった「中食」−
「中食」(なかしょく)とは、レストラン等へ出掛けて食事をする「外食」と、家庭内で手づくり料理を食べる「内食」の中間にあるもので、デパ地下の総菜、テイクアウト、ケータリングサービスの調理食品等を指します。
リンク先のグラフは、中食を含む外食産業の市場規模の長期的な推移を示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/07/270_gaishoku.pdf
これによると、(狭義の)外食の市場規模は1990年代半ばまで成長が続き、バブル崩壊やリーマンショックの影響により横ばいで推移した後、2010年代に入ってからは再び成長していましたが、2020年以降、新型コロナウィルスの感染拡大により大きく落ち込みました。関係する事業者の方々のご苦労は並々ならぬものでした。
これに対して料理品小売業(テイクアウト等を含む、いわゆる中食)は、過去はほぼ外食と同様の動きを示していたものの、新型コロナウィルスの感染拡大があった2020年以降も大きな落ち込みは見られません。
いわゆる巣ごもり消費の拡大等により、私たちの食生活における中食のウェイトが拡大したのです。
中食など調理食品については、ともすれば低価格を求めるために食材の質や産地がブラックボックス化されやすい面が否定できません。私たち消費者としては、「まっとうな食」を提供してくれる事業者を(時々でも)選択していくことが必要です。
データの出所:
(一社)日本フードサービス協会「外食産業市場規模推計の推移」から作成
http://www.jfnet.or.jp/data/data_c.html
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−今関麻子さん(農家支援キッチンカー“eat for” )−
今関麻子(いまぜき・あさこ)さんは千葉市のご出身。小学生の頃から環境や食の問題に関心があり、千葉大学食料資源経済学科在学中には、仲間と学生居酒屋「あるばか」を共同出資でオープンされました(私も何度か伺いました。今関さん達の卒業後も何代か続いていましたが、残念ながら2019年に閉店)。
卒業後、生協での品質管理業務や食育プログラムを扱うヘルスケア等に携わっておられましたが、2019年、台風19号により生産者が大きな被害を受けた様子を目にして「いま行動しなければ」と決意し、翌年、「食べることが社会貢献に。」をコンセプトとする農家支援キッチンカー“eat for”を起業されたのです。
現在、東京を中心に、自然災害等で市場に出荷できなくなった規格外野菜等を使ったメニューを提供されています(出店スケジュール、メニュー等は添付を参照)。一食につき5円のほか、車体広告の掲載料が生産者に寄付されています。
また、フードロス削減だけてはなく脱プラスチック等にも配慮し、ブックシェアリングコーナーや非常用トイレも設置されています。
なお、仕入れ、調理、販売、それに運転等は、多人数の来店が予想されるイベント出店の場合等を除いて、基本的に一人で全て行っておられるそうです。
先日(6月27日(火))は麹町に伺い、農家支援丼(野菜たっぷり生姜焼き)を頂きました。
「一店舗でできることに限りはあるが、生産者の声や情報を1%でも多くのお客さんに伝えていきたい。“食べることで日本の農家を支える未来”を目指して、一歩ずつ取り組んでいきたい」と、今関さんは笑顔で語っておられました。
参考:
ホームページ「eat for-食べることが社会貢献に」
https://eatfor-kitchencar.studio.site/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−堤 未果『ルポ 食が壊れる−私たちは何を食べさせられるのか?』(2022.1、文春新書)−
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166613854
著者は東京生まれ。ニューヨーク州立大学で学位を取得した後、国連、証券会社での勤務を経て、現在は国際ジャーナリストとして貧困問題や公共政策等について鋭い警鐘を鳴らし続けています。
その著者が今回ターゲットにしたのが、世界的な「食」の問題です。
気候変動、感染症、人口爆発等の危機下にある現在、静かに「食システムのグレートリセット」が進んでいるとのこと。その推進役となっているのは、ビル・ゲイツらの大富豪(投資家)やグローバル企業であり、彼らによる一元支配がいよいよ食と農の分野に参入し、急速・着実に勢力を拡大しているとします(「ウォール街は笑いが止まらない」とも)。
しかし救世主のようにに見える先端技術は、実はディストピアの予兆かも知れないと著者は警告します。すなわち、人工肉にはGM(遺伝子組み換え)大豆や酵母が用いられ、培養肉は特許のついた顔のない「細胞」に過ぎず、デジタル農業の推進は少数の企業による個々の農家の情報の囲い込みであると言うのです。
さらに、各国政府はグローバル企業等に忖度してGMやゲノム編集技術に関する規制を緩和し、国連食料システムサミット(2021.9)はグローバル企業等に乗っ取られたとし、そのサミットの場で発表された日本の「みどりの食料システム戦略」も同じ方向にあるとしています。
一方で著者は、これらと真逆の方向で危機を救おうとする「もう一つのリセット」も世界各地で進んでいるとします。そのプレイヤーは小規模農家や消費者、地方行政であるとし、日本の学校給食有機化の取組みのほか、故・稲葉光圀氏、吉田俊道氏、宇根豊氏の実践等を紹介されています。
特に、環境を破壊するのは(「悪魔化」されている)牛ではなくその飼い方であるとして、紹介している放牧による「牛と草との共生サイクル」の内容は興味深いものでした。
ただ、総じて先端技術を重視するグローバル企業等と、自然循環や土壌の役割を大切にする小規模なプレイヤーとを、お互いに全く相容れないものとして二極対立的に置き、前者の「悪行」を一方的に指弾するかのような筆者の論法は、分かりやすく刺激的で、かつ痛快かも知れませんが、やや構造が単純化されているような懸念も禁じえませんでした。
いずれにしても、本書に盛り込まれている世界の食と農を取り巻く最先端の情報について、その内容を吟味し、主体的に日々の行動に反映していくのは私たち自身です。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 2023年の梅雨どき雑記[6/22]
https://food-mileage.jp/2023/06/22/blog-443/
○ ぶらり歴史散歩(鎌倉・比企谷など)[6/27]
https://food-mileage.jp/2023/06/27/blog-444/
○ 農あるまちづくり講座 in 世田谷[7/1]
https://food-mileage.jp/2023/07/01/blog-445/
▼ 筆者が協力するイベントです。
〇 親子で食農体験−採りたて夏野菜を食べてみよう!
(食と農の市民談話会 SEASON3 (実践・対話篇) 第三回)
日時:7月15日(土)10:00〜12:00
講師及び会場:白石好孝さん、練馬区白石農園
主催:コミュニティスクール(CS)・まちデザイン
(大人だけ、一人だけでも参加できますので主催者にお問合せ下さい。)
(詳細、申込み先等↓)
https://www.facebook.com/events/2582962815178305/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ 食料・農業・農村基本法の検証・見直しに関するパブリックコメント等
農林水産省は、5月29日に食料・農業・農村政策審議会 基本法検証部会により示された中間取りまとめに関して、パブリックコメントを実施中です(7月22日まで)。
https://www.contactus.maff.go.jp/j/form/kanbo/kihyo01/kihonhou_iken_boshu.html
また、7月から8月にかけて全国11都市において「地方意見交換会」を開催します。
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kihyo01/230622_16.html
ホームページには膨大な資料が掲載されていますが、興味・関心のある部分だけでも目を通して頂き、多くの方々が意見の提出や参加して下さることを期待しています。
○ 夢育て農園オープンデイ
日時:7月8日(土)10:00〜12:00
場所:夢育て農園(東京・世田谷区桜丘4)
主催:NPOユメソダテ
(詳細、問合せ等↓)
https://yume-sodate.com/news/1102/
○ 中山間地域フォーラム 設立17周年記念シンポジウム
日時:7月8日(土)13:00〜16:30
場所:東京大学弥生講堂(東京・文京区弥生1)
主催:中山間地域フォーラム
(詳細、問合せ等↓)
https://www.chusankan-f.org/
○ 未来につなぐスローフードな生き方
−島村菜津さんと考える−
日時:7月30日(日)14:00〜16:30
場所:三軒茶屋キャロットタワー5F(東京・世田谷区太子堂4)
主催:Seta Bio
(詳細、問合せ等↓)
https://www.instagram.com/p/Ct1l7WbSr6u/
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
ロシアとウクライナの情勢はいよいよ不透明になってきました。いつになったら再開できるのでしょうか。バックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.271は7月18日(火)[和暦 水無月朔日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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