食と農を取り巻く深刻な問題の多く(食料自給率の低迷、担い手・農地など生産基盤の脆弱化、栄養バランスの崩れと食生活の乱れ、膨大な食品ロス等)は「食と農の間の距離」が離れてしまっていることに起因しています。
「食と農の間の距離」を縮めることを目的として、個人としてささやかな取り組みとして本年6月にスタートしたのが「食と農の未来フォーラム」です。都会の一般市民(消費者)の皆さんに、食と農の現場の実情と課題を身近に感じ、自主的・具体的な行動変容につなげて頂くことを期待しています。(これまでの概要はこちら→(第1回)、(第2回))。
2025年8月26日(火)19時からは、鈴木純子さん(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト、福島・いわき市)をゲストにお招きして、第3回をオンライン開催しました。
なお、鈴木さんとは前日に30分ほどオンラインで打合せをしています。
事前に申し込みして下さった方は25名、うち20名ほどが当日リアルで参加して下さいました(申し込んで下さった方全員に、後日、アーカイブを配信)。

今回も「前座」として中田から説明(説明資料の全体はこちら)。
まず、本フォーラムの趣旨・開催経緯等について。

続いて衣類の基礎知識として(後に詳しく鈴木純子さんからも説明がありましたが)、衣類の自給率が食料と比べても極端に低いこと、手放された衣類のリユース・リサイクルも進んでおらず65%が廃棄されていること等を説明。

ふくしまオーガニックコットンプロジェクトの発足の経緯等については、大和田順子先生に提供いただいたスライドを使って説明させて頂きました。
東日本大震災・東電福島第一原発の事故による複合災害の下、認定NPO法人 女子教育奨励会(JKSK)が開催した車座交流会がきっかけとなり、女性が中心となって、いわき市や広野町で取り組みがスタートしたのです。

さらに、私個人のふくしまオーガニックコットンプロジェクトとの関わりについて、故 吉田恵美子さんとの交流の思い出も含めて紹介させて頂きました。
説明時間は20分弱、やや長過ぎたと反省。

続いてゲストの鈴木純子さんから、スライドを用いて説明して下さいました。
私からは仮題として「原発被災地でオーガニックコットンを育てること」を提案させて頂いていましたが、鈴木さんは「育て続けること」と書き加えて下さっています(以下、文責は中田にあります。また、吉田さんからの説明資料はこちら)。
ご両親がいわき出身という鈴木さんの人生のテーマは、「誰もが幸せに暮らせる社会」とのこと。ファッションで持続可能な管理型社会の実現に向けて29歳で起業、「服育」セミナーやパーマカルチャーに取り組んできた。東日本大震災後期は、がむしゃらに復興支援に取り組むなかで吉田恵美子さんとの縁ができたそうです。
自然災害が激甚化するなかで「これは福島だけの問題ではない。もし自分が被災したらとイメージをしながら聞いていただきたい」とも。

30年以上にわたって、古着のリサイクル等を通じて住民主体の街づくりに取り組んできたNPO法人 ザ・ピープルの紹介。
代表(当時)の吉田恵美子さんは、震災・原発事故直後、いわき特有の課題(避難者との地域住民の関係等)がある中で、小名浜災害ボランティアセンターを立ち上げ、オーガニックコットン栽培を始められました。緊急時には行政任せにはできない、震災前の20年で培ったネットワーク(人とのつながり)が、震災後に走り出す力になったと吉田さんは語っておられます。

ふくしまオーガニックコットンプロジェクトは、風評被害など複合災害の影響で耕作放棄された農地で、 食用ではないコットン(在来種の備中茶綿)を、 有機農法で環境負荷をかけずに栽培するというもの。
農業と人のつながりの再生を目ざすことが目的で、県外等からの「援農」者は述べ3万人以上になる。

ふくしまオーガニックコットンプロジェクトは、今後、災害教育、環境教育、産業教育に力を入れていくそうです。
この背景には、衣類産業が世界第二位の環境汚染産業であること、日本の衣類の自給率は1.5%(繊維ではほぼ0%)といった課題もあるとのこと。
吉田さんの「複合災害から10年、刻々と変化する社会情勢に対応する意識がなければ支援は独りよがりなものになりかねい。自らが動かなければ状況は変わらないことを体験的に学んだ。その学びを伝える責務が私たちにはある」との言葉とともに、ご遺作となった『思いはこうして紡がれる』を紹介して下さいました。
図書館にリクエストして下さい、とのお願いも。また、読書会を開催する予定もあるそうです。

最後に、先日、支援活動の一環で訪問したカンボジアの様子について紹介して下さいました。ザ・ピープルが集めた古着も預かって持って行かれたそうです。
ゴミ山等の劣悪な環境の中で暮らす人々と交流するなかで、驚くほど質素だけど穏やかで幸せな笑顔に感銘を受け、「人間にとっての幸せとは何か」を問い直すきっかけにもなったそうです。

鈴木さんからは最後に、10月5日(日)に予定しているふくしまオーガニックコットン・ボラバスツアー(収穫)について紹介がありました。
続いて、参加して下さっていた根本賢仁さんから、広野町における取組みについて紹介がありました。地震・津波の複合災害を受ける中、オーガニックコットンの栽培等を通じてコミュニティの再生に取り組んでこられた「当事者」の方のおひとりです。
「広野町は原発事故で一時、全町避難も経験したが、JKSKの車座交流会をきっかけにオーガニックコットン栽培に取り組み始めた。企業や学生とも連携し、支援を頂き、ボランティアを受け入れて、単に栽培するだけではなく新たな産業を起こしていこうと取り組んできた」
「現在も浪江町津島地区等ではバリケードが設けられ、自宅に入れず、藪のようになってしまっている状況が続いている。このような被災地の現状を知って頂き、原子力災害がどのようなものか問い直す時期が来ているのではないか。百聞は一見に如かず、ぜひ被災地に足を運んで現状を見て頂きたい」

続いて、認定NPO法人 環境リレーションズ研究所の鈴木敦子代表から、「吉田さんのお名前を聞くと今でも涙腺が緩む」としつつ、広野町におけるプレゼントツリーの取組み等についてスライドを用いて紹介してくださいました。
森と都会をつなぐ取組みを20年以上続ける中で、広野町でもオーガニックコットンプロジェクトと連携しつつ、防災緑地(防潮堤)への植樹を実施。東北に春を告げる町・広野町の象徴であるみかんの木を植える計画もされているそうで、浜通り全体の復興のお手伝いを続けていきたいと決意を述べられました。

20時30分頃からは参加者との間で質疑応答・意見交換。何人かの方からは事前に質問を頂いていました。
「オーガニックコットンの商品はどこで買えるか」との質問には、鈴木さんからは株式会社起点のウェブサイト(オンラインショップ)から購入できるほか、首都圏でもマルシェ等に出店することがある。ツアーで来ていただければその場でお求めいただける」等の回答。
「糸繰り」と製品化の現状等についての質問については、ワークショップ等も開催しているそうですが、糸繰りの活動されている方(織姫というグループで活動されているそうです)も自分の衣類をオーガニックコットン製品で自給できている状況にはないようです。製品化が課題とのこと。
コットンを畑のマルチや生理用品の素材として活用できないか、との提案も。

何度かボラバスツアーに参加されている方からは「今日のお話を聞いてこれまでの流れがよく分かった。楽しいから行くというだけでも構わないと思うが、10月5日の収穫ツアーの前に勉強会を開催してほしい」との要望も。
予定の終了時刻・21時を過ぎたためにいったん閉会。
時間のある方には残って頂き、30分ほど延長して懇談。10月のツアー、オーガニックコットンプロジェクトの今後の方向、今後の首都圏のグループとの連携の在り方等が話題に上りました。
鈴木純子さん、今回はお忙しいところ充実した資料も作って下さり有難うございました。
根本賢仁さん、鈴木敦子さんも、議論を深める貴重な報告を有難うございました。参加して下さりご意見など頂いた方皆様にも感謝申し上げます。
第4回は9月中下旬を予定、テーマやゲストは企画中ですので、ご要望などがあればお寄せいただければ幸いです。
(ご参考)
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