2年目になる「令和の百姓一揆2026」の前日に当たる2026年3月28日(土)18時30分から、「一揆」実行委員会代表の菅野芳秀さんをお迎えして、第9回 食と農の未来フォーラムを開催しました。
今回は初めてのハイブリッド開催に挑戦。リアルの会場は東北支援に取り組む東京・赤坂のトレジオンポートです。

1週間前には現地を訪ねて機器の確認と配信テストを行い、この日の当日も開会1時間前に伺ってカメラもマイクも準備万端で迎えたはずでしたが・・・・
ところが開始時間近く、zoomのミーティングルームへの入室者が増えるに連れて私が持ち込んだパソコンがダウン。これまでの自宅でのオンライン開催ではなかった事象です。
慌てて受付のために来てくれていた娘のパソコンにチェンジし、トレジオンポートの清水店長のサポートもあって、何とか15分遅れでスタート。
その後もマイクを何度か取り換えるなど、特にオンライン参加の皆様にはご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。
まず、主催者である私からフォーラムの趣旨と開催経緯等に続いて、「なぜ農業問題は都市住民(消費者)の問題なのか」について説明(説明資料はこちら)。
食料自給率の低下は私たちの食の選択の結果であること、大都市圏の自給率は著しく低いこと、農業の生産基盤(担い手、農地)は急速に脆弱化していること、米価は長期間低迷していたこと等について説明しました。

続いて、菅野さんがマイクを取られました。
開始前から菅野さん、会場参加者の皆様にはドリンクと前菜が配られており、オンラインの配信に戸惑っていた15分の間から歓談は始まっていたことから、会場は和やかな雰囲気です。

スライドを映写しながら菅野さんのお話が始まりました(資料はこちら。なお、以下の文責は中田にあります)。
「山形・長井市で水田5haと1000羽の自然養鶏を営んでいる。せっかく百姓を職業として選んだからには、自然に近い暮らしをしたい。右の写真にあるニワトリは、卵を産みながら肥料(鶏糞)を作ってくれる。学校給食の食べ残しや豆腐工場のおからもニワトリの餌として与えている。ブロイラーのようにケージに閉じ込められてはいない。もしニワトリに生まれ変わるなら、菅野さんちのニワトリに生まれたい(笑)。
一度、放し飼いのニワトリの肉を食べてみて下さい。ラーメンのスープを取ってもすごくうまい。ニワトリが我が家の暮らしを本当に豊かにしてくれている」

「左の写真は秋の光景。この後、広葉樹林帯の朝日連峰は赤く染まっていく。冬は白銀の世界。春が来てやがて緑に。四季を通して大きなスケールで色が変わっていく。音も変わっていく。稲穂が揺れる音、冬の静寂、カエルやセミなど生きものの声。
季節の移りかわりを体感しながら農作業をしている。肉体労働できついが、自然との充実した関係を築けるのは、百姓を職業に選んだものの特権。東京に来るたびに田舎の豊かさがわかる。水も野菜も美味しい。皆さんも田舎に移住して下さい」
「寺山修司に『コカ・コーラの瓶の中のトカゲ』と題する文章がある。中学生のころ公園で捕まえたトカゲを瓶に入れて飼っていると大きくなって出られなくなった。「お前には瓶を割って出る力なぞはあるまい、そうだろう、日本。身を捨てるに値するだろうか、祖国よ」と続く。
自分は終戦後の昭和24(1949)年、まさに瓶の中で生まれた。自分の人生は瓶の中て終わってしまうのではという焦りを感じている。先日、鹿児島の知覧を訪ね、20歳前後で戦死した特攻隊員の手記や遺書を手を合わせながら読んだ。「自分たちの死が日本の未来につながる意味のあるものであってほしい」と書き遺した彼らに、私たちは何と言えるのか。俺は百姓としてどう生きればいいのか。この思いが『令和の百姓一揆』に繋がっていった」

「日本から農民が消えようとしている。作物も、農村自体も消えつつある。
水田農家の平均年齢は71歳を超えており、中心的に担っているのは80歳前後のいわゆる団塊世代。多くはあと2~3年でリタイアしていくだろう。5年とは持たない。その後を誰がやるのか。いったい誰が米を作るのか。
農業は経験値がものを言う職業であり、知見を含むバトンをたすき渡しするには5~10年かかる。土は世代を超えた共通財産でもある」
「多くの国民にはこのような現実は知らされておらず、また、知ろうともしない。ユデガエル状態だ。食べものが無くなり取り返しがつかなくなった時点で初めて思い知ることになるだろう。このままでいい訳はない。とにかくこの現実を国民の皆さんに知ってもらうことが重要であり、一揆とは、主権者としてこの国の将来を選び取っていける材料の一つを提供するもの。一揆を通して経済的な利益を得ようなどとは、これぽっちも思っていない」
「国は乾田直播やドローンなど新技術を活用した大規模農業を推進しようとしているが、コストの話に惑わされてはいけない。現実には経営を縮小している大規模経営も出てきている。そもそも平場の大規模経営は中山間の小規模経営の支えがなければ成立しない。山の水路は、中山間地域の小農の無償と言ってもいい労働が支えている。
有機農業の先進的な地域も、いわば島でしかなく、大海原である慣行農業によって支えられている。その大海原が追い詰められているのだ」

「時給10円と言われるなど農業経営は極めて厳しい状況にあるにもかかわらず、なぜ百姓は農業をやめないか。なぜ田畑を手放さないか。それは農業を続け、農地を維持してきた先人たちの苦労を知っているから。受け継いだバトンをここで捨てては申し訳が立たない。それは、言ってみれば『生き方』だな。儲かるかどうかではなく、生き方として、次の世代に渡さなければならない。
俺も『生き方』として農業を選んだ。生き方を貫くためにどうすればいいかを、いつも考えている。もし金が目的だったら俺も都市に出て、これでもけっこう口がうまいから(笑)、営業職かなんかで小金を稼ぎ、たまにゴルフに行ったりするような生活を送ったかもしれない(笑)」
「現在、どんな国・社会を作っていくかについての国民的議論が、かつてなく求められている。自立する道を探るためには、まず、食べものをどうするかから。アメリカ等からの輸入に依存しているような状況とおさらばできるような地域を、足元から作っていかなければならない。誰かがやってくれるだろうではダメだ」
「再生産可能な所得を農民に補償し、新しく農民になりたいという人の暮らしを支える仕組みを作っていかなければならない。4割も減反しながら2000万トン以上の穀物をアメリカ等から輸入している。政府は減反政策は廃止したと言っているが、現実には地域では続いている。減反政策は廃止し、米が余った場合は飼料用にする等して、輸入食料への依存度を減らしていくことが必要。コカ・コーラの瓶から抜け出すためには、食の自給から。これが国づくりの基本」

「1年前、第1回目の令和の百姓一揆が行われた。東京会場の青山公園には4500名が集まり、20台のトラクターとともに表参道等を代々木公園まで行進した。明日は2回目の一揆。時間のある方もない方もぜひ来てください。一緒に声を上げましょう。
昨年は26都道府県で行われたが、今年はそれ以上が見込まれている。社会運動自体が日本全体のなかで消えかかっているにもかかわらず、食といのちに関わる運動は広がっている」
「現在の政策に反対するのではなく、対案を示す方向に国民運動を進めていかなければならない。農政には産業政策と地域づくり政策の2つの視点が必要だが、これまでを振り返ると産業政策に傾き過ぎていたのではないか。非効率とされる農家がこぼれていかないよう、地域づくり政策を復権させる必要がある。
対案としては色々ある。例えば国民皆農、市民皆農。みんな小農になろうよ、プランタでも何でもいいから。そういうところから、多くの人の今の暮らしの中に土とのつながりを取り戻していくことが重要ではないか」
「これまで開発と発展、進歩に重点を置いた時代が続いた。その結果、生存の危機が近づいている。いのちと循環の観点から社会の基本軸を組み立てていくことが、これからの我々の生き方でなければならない。こういうことを言うと理想だろうと批判されるが、理想を語ることに憶病になってはならない。
もしこの中で、理想を語ったために苦しい生き方を強いられている人、孤立している人がいたら、後で俺に電話ください。マイナスからのスタートだったレインボープランをいかに実現したか、経験と方法を教えましょう。本にも書いてあるので読んでみてください」
「希望というものは、向こうからやってきて偶然会えるというものでは決してない。誰かがやってくれるだろうではなく、我々が自ら体を動かし、七転八倒しながら希望を作るしかない。「参加型」民主主義の大切さを肝に銘じておく必要がある」
菅野さんのお話の終了に合わせ、テーブルごとに大皿に盛られた料理が配られました。いずれも東北の選りすぐりの食材が用いられています。地ビールや地酒も、飲み放題です。
トレジオンポート赤坂店の清水店長からお店の説明を頂きました。
もともと震災後にボランティアで通っておられた代表の方が、東北を盛り上げたい、現地にお金を落としたいとの思いから起業されたお店だそうです(食事も飲み物も美味しく、おススメです)。

30分ほどの懇談の後、会場参加者の方との意見交換。オンライン参加者の方からもチャットで続々と感想や意見が寄せられています。
フランス駐在が長かったという元新聞記者の方が手を上げられました。
「菅野さんは運動は広がっているというが、こんな小さなデモでどうするのか。恥ずかしい。主張すべきところは主張すべきではないか」等の苦言です。
菅野さんからは「フランスのようなやり方では市民から浮いてしまう」。実行委員の方からは「トラクターの台数等も警察から制限されている。混乱を招きたいわけではなく、現状を消費者の皆さんに知ってもらうための行動」等の釈明がありましたが、質問された方は「日本の農民は紳士になってしまった」と納得されない様子。
関連して農業ジャーナリストの榊田みどりさんから「かつて春闘が盛んだった頃は電車が停まっても誰も文句は言わず、国民の中に理解があったのではないか。都市住民と農業のつながりが感じられるようになるような観点からの取組みが重要ではないか」等の発言。

会場には白石好孝さん(大泉 風の学校、東京・練馬区)も参加して下さっていました。
「自分も34年前、JA青年部代表として新宿に全国から100台のトラクターを集め、5万人規模の集会を行った。爆竹まで使った。しかし結果としてウルグアイ・ラウンド交渉は妥結し、反対していた米の部分自由化が決まってしまった。
現在、自分は東京において、消費者がコツコツと農に触れることができるような取組みを続けている。ささやかな活動だが、農業のことを伝えるのではなく感じ取ってもらうことが、国民全体の意識を変えていくことに繋がっていくのではないかと期待している」等の意見を頂きました。
新潟出身で現在は東京に居住されているという方からは、米作りの出前授業や学校給食に食材を提供している取組み等について紹介して下さいました。子どもたちは米作りを体験すると一粒でももったいないと思うようになり、米の生産には多くの生きものが関わっていることも実感できるとのこと。
かねて生協活動で菅野さんとつながりのある方も参加して下り、楽しかった祭りの思い出等を披露して下さいました。。
最後に菅野さんからは、
「今日は、農業から遠いところにいる人たちに向けて話をしてくれというこ依頼だったが、今、この場で語り合っていると、全く距離がないことに驚いている。なぜかと考えてみると、やはり、いのちの問題が扇の要にあるからではないか。今日は感動的な時間を有難うございました」との言葉を頂き、フォーラムは終了です。
主催者に多くの不手際があり、特にオンライン参加の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。改めてお詫び申し上げます。
しかし、菅野さんの思いの一端を多くの人に伝えたいという会の目的は、ある程度、実現できたのではないかと考えています。まさに菅野さんの「いのち・魂の叫び」を、私自身も都市に住む消費者の一人として受け止め、できることから明日からの暮らしに生かしていきたいと思いました。参加された皆様のご感想などお寄せいただければ幸いです。
翌日は、令和の百姓一揆2026の開催日です。
(参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」
https://www.mag2.com/m/0001579997
フェイスブック「フード・マイレージ資料室(分室)」
https://www.facebook.com/foodmileage
