◇フード・マイレージ資料室 通信 No.226◇
2021年9月21日(火)[和暦 葉月十五日]
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◆ F.M.豆知識 輸入物価指数が過去最大の上昇
◆ O.カレント 森 歩(もり・あゆみ)さん
◆ ほんのさわり 勝川俊雄『魚が食べられなくなる日』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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秋の彼岸に入り、今夜は仲秋の名月。東京地方は雲が出てくる予報となっていますが・・・。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−輸入物価指数が過去最大の上昇−
日本銀行が9月13日(月)に発表した2021年8月の企業物価指数(速報)によると、円ベースの輸入物価指数は前年同月比29.2%上昇と、比較可能な1981年以降で最大の上昇率となりました。
なお、輸出物価指数は伸びが鈍化しており、輸出物価を輸入物価で割った交易条件は低迷しています。
リンク先の図226は、2000年代に入って以降の輸入物価指数(円ベース)の推移(折れ線グラフ)と、21年8月の品目別の上昇率(速報、棒グラフ)を示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/09/226_yunyu.pdf
21年8月の上昇率を品目別にみると、石油・石炭・天然ガスが73.8%、金属・同製品が56.3%と特に大きく上昇しています。
また、一次産品についても、木材・木製品・林産物が50.7%、飲食料品・食料用農水産物が24.1%上昇しています。
輸入物価指数が上昇している要因は、主にコロナ禍からの世界的な需要回復に伴う国際的な商品価格上昇によるものですが、一次産品については、中国等の畜産物消費の増加(穀物の需要増)、高温乾燥等による作柄悪化等も影響しています。
現に10月期の輸入小麦の政府売渡価格は19%引き上げられるなど、国内の食料品価格にも影響が出つつあります。
日本は一次産品の多くを輸入に依存していますが(食料自給率(カロリーベース)37%、木材自給率38%)、食料等の安定供給という課題が顕在化しつつあるのです。
[資料]
日本銀行「企業物価指数」
https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_2015/index.htm/
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−森 歩(もり・あゆみ)さん−
森さんは東京都のご出身。
外国人相手の日本語教師をしながら、『東北食べる通信』の縁で知り合った岩手の漁師さんのお手伝いに通ったり、わかめを東京・高円寺のマルシェで販売したり、という活動をされていましたが、本年4月、兵庫・但馬(たじま)の豊岡市に移住されました。
但馬は兵庫県北部の日本海側に位置し、豊岡市はコウノトリや2019年に劇作家の平田オリザさんが主宰する劇団とともに移転された地として有名です。
森さんが就職したのは但馬漁協(JF但馬)。漁協とは漁業者からなる協同組合で、森さんは新製品の企画やオンラインショップの運営等を担当されています。
オリジナル商品の一つである麹の魚醤は5年かけて開発したもので、香住カニ、甘えびなど7種類あり、旨干しや炊き込みご飯にも使われているとのこと。柔らかくなり、臭みはなくなるなど、「発酵の力は素晴らしい」と森さんは仰っています。
加工品に力を入れているのは、低・未利用の魚介類を活用することで漁業者や地域の加工業者の所得を確保するとともに、魚離れが進むなかで手に取りやすいかたちで消費者に届けることを狙いにしているとのこと。
去る9月17日(金)夕刻、東京・神田の47都道府県レストラン・箕と環(みのとわ)で開催されたイベントでは、漁協の加工品を中心とした「但馬スペシャル定食」を頂きながら、(愛犬とともに)オンライン参加された森さんのお話を伺いました。
「海や山がすぐ近くにあり、回りの方も気にかけて下さる。自分なりに地域の一次産業を盛り立てていきたい」と元気に語る森さんの、新天地での活躍を期待したいと思います。
[参考]
但馬漁業協同組合(JF但馬)
https://www.jftajima.com/
9月17日(金)のイベントの模様(拙ブログより)
https://food-mileage.jp/2021/09/18/blog-335/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−勝川俊雄『魚が食べられなくなる日』(2016/8、小学館新書)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09825278
1972年東京生まれの水産学者(東京海洋大学准教授)である著者は、このままでは日本の水産業は衰退の一途をたどり、漁食文化の存続さえ危ぶまれると強い警鐘を鳴らしています。
資源量が減る一方で消費者の「魚離れ」もあり、「獲れない+売れない→儲からない」という悪循環から漁村の限界集落化が進んでいるというのです。
その背景には、著者は水産政策の不備もあるとします。
例えば、適切な漁業規制のためには入口規制(漁船数や網の目など)と出口規制(漁場から持ち帰る魚の量)の併用が必要ですが、後者のうち世界のスタンダードとなっている個別漁獲枠方式は、日本では導入されていません(この点は2020年に施行された新漁業法に、一部盛り込まれています)。
一方で、日本漁業には大きなポテンシャルがあるとのこと。
すなわち日本の排他的経済水域(EEZ)の面積は世界6位で、三陸沖など世界でも類を見ない好漁場があり、さらには魚の価値を最大限に引き出す魚食文化もあるというのです。
また、日本漁業の再生のためには消費者にも責任・義務があるともしています。
それは、漁業の現状に関心を持ち環境にも配慮すること。一言でいえば「大切に食べる」ことによって、日本の優れた魚食文化は世代を超えて継承されるとしています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 第1回 全国農泊ネットワーク大会(宮城・大崎)[9/8]
https://food-mileage.jp/2021/09/08/blog-332/
○ 大和田順子さん「農山村に誘われた10年」(第4回 食と農の市民談話会)[9/12]
https://food-mileage.jp/2021/09/12/blog-333/
○ 「市民」とは(自分ゴト、志、実践)[9/17]
https://food-mileage.jp/2021/09/17/blog-334/
○ 兵庫県 但馬(たじま)を食べて解きほぐす晩[9/18]
https://food-mileage.jp/2021/09/18/blog-335/
▼ 筆者が企画・進行役を務める食農市民談話会(全6回)の第4回です。参加者募集中です。
○ 第5回 食と農の市民談話会
日時:10月5日(火)19:00 〜21:00
話題提供:八幡名子さん(巻き寿司やさん、東京・八王子)
『私がお寿司に巻き込んでいるもの』(仮題)
場所:オンライン
主催:NPO 市民科学研究室
(詳細、問合せ等↓)
https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeetings/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ 核燃料サイクル、今こそ取り組むべき課題
日時:9月24日(金)15:00〜16:50
場所:ウェビナー
主催:原子力市民委員会(CCNE)
(詳細、問合せ等↓)
http://www.ccnejapan.com/?p=12456
○ 今夜もご機嫌@銀座で農業
日時:9月29日(水)18:30〜19:30
場所:オンライン
主催:銀座農業政策塾
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1217498798714313
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「正面から政策論を闘わせる絶好の機会とは思わないのかね」
「そんなセンス(扇子)はないんじゃないの? 内輪(団扇)のことで手いっぱいだから」
党員のみならず、ぜひ広く国民に向けて政策を訴えてもらいたいものです。
コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.227は10月6日(水)[和暦 長月朔日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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