【メルマガ】F.M.Letter No.235

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.235◇
 2022年2月1日(火)[和暦 元日]配信
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◆ F.M.豆知識  中山間地域のシェア
◆ O.カレント  伝統工芸品・亀田縞(新潟)
◆ ほんのさわり 山本有三『米百俵』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦でも新年を迎えました。本年もどうぞよろしくお願いします。新型コロナが感染拡大中ですが、何とか皆さま方にとって平穏な一年となることを祈っています。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−中山間地域のシェア−

中山間地域とは、農林水産統計の農業地域類型区分のうち「中間農業地域」と「山間農業地域」を合わせた地域を指します(詳細は下記「資料」参照)。
 日本の人口、土地、農業生産等に占める中山間地域のシェアを示したものが、リンク先の図235です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/02/235_Chusankan.pdf

これによると、人口のシェアこそ11%に留まっていますが、総土地面積の73%、林野面積では88%を占めています。また、農業の生産条件も不利とされる中山間地域ですが、耕地面積の41%、総農家数の44%、農業産出額でも44%を占めるなど、農業生産面でも重要な地位を占めています。
 さらには、傾斜地の多い中山間地域で農林業が営まれ農地や林地が適切に管理されることによって、土壌侵食や土砂崩壊を防止するとともに、地域の伝統や文化の保全・継承する等の多面的機能が発揮されているのです。これら農業・農村が有する多面的機能については、故・宇沢弘文氏も著書(『人間の経済』ほか)の中で指摘している社会的共通資産そのものです。

これらの機能は、農業のみならず暮らしの面でも不利なことの多い中山間地域に人が定住することによって確保されているという事実を、都会に住む私たちは忘れてはならないと思います。

[資料]
 農林水産省「農林水産業一口メモ」p.82
 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/hitokuchi_memo/attach/pdf/index-15.pdf

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−伝統工芸品・亀田縞(新潟)−

もんぺ製作所HPより https://monpeseisakusho.com/

亀田縞は、新潟・亀田郷において300年以上にわたり育まれてきた伝統織物です。
 現在の新潟市中央部に位置する亀田郷は、越後平野を流れる信濃川や阿賀野川に囲まれた広大な低湿地帯で、第二次世界大戦後に土地改良事業(排水事業)が実施される以前は、舟を使って腰まで水に浸かりながらという過酷な稲作が営まれていました。その様子は司馬遼太郎『潟のみち』にも描かれています。

その亀田郷での農作業や暮らしの中で、泥や水に強い綿織物として生み出された亀田縞ですが、戦後、海外からの安価な繊維製品の輸入が増加するなかで、いったんほとんど姿を消してしまいました。しかし平成の時代に入り、技術を守り続けてきた地元の方たちの尽力によって復活したのです。
 木綿の素朴な風合いを持った、藍色を基調としたストライプの亀田縞は、染め、織り、縫製など多くの工程を必要とします。その工程のすべてに、歴史に培われた職人達の経験と技術が込められているのです。

2013年に新潟・上越市の山間部に移住された赤木(谷内)美名子さんは、バタンナーの経験を生かし、2018年に「もんぺ製作所」を起業されました。その様子は2月15日(火)の「第8回 食と農の市民談話会」で話題提供して頂く予定です。

[参考]
 亀田繊維工業協同組合「KAMEDAJIMA-EDO STRIPE」
 https://kamedajima.net/
 もんぺ製作所
 https://monpeseisakusho.com/
 食と農の市民談話会(「情報ひろば」欄も参照願います)
 https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeeting02_202201/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−山本有三『米百俵』(2001.1、新潮文庫)−
 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784101060118

新潟・長岡市に伝わる逸話をもとに、1943年に山本有三が戯曲化し出版したもの。
 戊辰戦争において長岡藩は、家老・河井継之助の主導の下、新政府軍に徹底的に抗戦し破れました(司馬遼太郎の小説『峠』でも有名です)。
 焦土と化し、禄高も三分の一に削られた長岡の再建を託されたのが、恭順派として斥けられていた小林虎三郎でした(ちなみに『武士の娘』の杉本鉞子の父・稲垣茂光家老も、河井と対立して地位を追われた側でした)。

そのような時、日々の食事にも事欠く窮状を見かねた支藩から、見舞いの百俵の米が届きました。これを藩士に配分せず学校を建てる原資に充てようとする小林の自宅に、ある夜、藩士たちが押しかけ、抜刀して方針転換を迫りました。これに対して小林は「百俵の米も食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」と諭します。
 現在も多くの著名人等が好んで引き合いに出す「米百俵の精神」です。

ちなみに山本は同年のラジオでの講演(本書に併載)で、長岡出身の山本五十六にも言及しつつ、「国民の一部は米が足りないなどと言っているが、我慢ができないことではない。日本はこの戦争に勝って大東亜の指導者になるのだから、次の時代を背負って立つ立派な小国民の養成に尽力すべき」と述べていることには、時代性を感じざるを得ません。

なお、本書を読んで個人的に最も印象に残ったのは、当時の百俵の米は学校づくりの原資になるほど価値があったということです。ちなみに2021年12月の米1俵(60kg)の値段は生産者段階で約1万3千円(3年産米相対価格平均)、消費者段階で約2万6千円(小売物価統計)。130〜260万円では、とても学校は建てられません。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 第60回 縮小社会研究会(フード・マイレージについて)[1/18]
 https://food-mileage.jp/2022/01/18/blog-358/

○ 恋ヶ窪と畠山重忠[1/23]
 https://food-mileage.jp/2022/01/23/blog-359/

○ 浅見彰宏さんの有機農業(第7回 食と農の市民談話会)[1/25]
 https://food-mileage.jp/2022/01/25/blog-360/

○ 2022年寒中オンライン[1/30]
 https://food-mileage.jp/2022/01/30/blog-361/

○ 巻き寿司やさん・節分の巻[1/31]
 https://food-mileage.jp/2022/01/31/blog-362/

▼ 筆者が進行を務める「食と農の市民談話会」の予定です。
 主催はNPO市民科学研究室。オンラインです。
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeeting02_202201/

○ 第8回 2月15日(火)19:00〜21:00
 「『限界集落』での暮らしとなりわい」(仮題)
 話題提供:赤木美名子さん(新潟・上越市大賀、農業、もんぺ製作所)

○ 第9回 3月15日(火)19:00〜21:00
 「漁協で働くということ」(仮題)
 話題提供:森 歩(あゆみ)さん(兵庫・香美町香住、但馬漁業協同組合(JF但馬)勤務)

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ きっかけ食堂@京都・愛知 宮城県南三陸町「戸倉っこかき」特集!
 日時:2月11日(金・祝)19:00〜21:00
 場所:オンライン
 主催:きっかけ食堂「毎月11日に開く、東北酒場」
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/487676882707656/

○ 『復興』の現在地〜終わりなき地域再生への模索〜
 日時:2月12日(土)14:00〜17:00
 場所:オンライン及び会場(世田谷区宮坂3、生活クラブ館)
 主催:CSまちデザイン
 (詳細、問合せ等↓)
 https://cs-machi.com/kouza6/
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「実朝さま、くれぐれも暴飲暴食はお慎みを」
「うむ、どういうことじゃ?」
「どうぞ胃腸(銀杏)には、お気を付けくだされ」

 コメディータッチで始まった今年の大河ドラマ、凄惨な歴史をどのように描いていくのでしょうか。
 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.236は2月15日(火)[和暦 睦月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます(2022年版も求めさせて頂きました)。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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