【メルマガ】F.M.Letter No.264 -pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.264◇
 2023年4月5日(水)[和暦 閏如月十五日]
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◆ F.M.豆知識  小売店の減少と郊外型ショッピングセンターの増加
◆ O.カレント  地域交流広場「ぱうぜ」
◆ ほんのさわり 宮台真司『日本の難点』 (2009/4、幻冬舎新書)
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 カレンダーは新年度を迎え、八重桜も咲き始めました。心が浮きたつ季節のはずなのですが。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−小売店の減少と郊外型ショッピングセンターの増加−

小売店の数は2000年代に入っても減少を続けています。
 2016年における飲食料品小売店(事業所数)の数は29.9千店と、2002年の46.6千店に比べ約6割の水準へと大きく減少しています(リンク先の下の棒グラフ)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/04/264_SC.pdf

一方、ショッピングセンター(飲食業、サービス業を含むテナント数が10以上の施設)の数は、2021年は3,169施設と、2001年の2,603施設から22%増加しています(上の棒グラフ)。
 これを立地別にみると、中心地域(人口15万人以上の都市で、商業機能が集積した中心市街地)に立地している施設は478(15%)にとどまっており、残りの85%は市街地の周辺あるいは郊外に立地しています。周辺・郊外に立地しているショッピングセンターの割合は、2001年以降、ほぼ右肩上がりで推移しています(折れ線グラフ。途中で定義の変更があったために厳密には接続しません)。

このように、中心市街地においては小規模の小売店が大きく減少する一方で、大型のショッピングセンターが郊外に立地するようになっているのです。郊外の大型ショッピングセンターは自家用車を利用できる人には便利ですが、利用が困難な高齢者等にとっては食料品店へのアクセスが困難な状況(フードデザート:食の砂漠)が生じています。また、温暖化ガス排出削減の観点からも、自家用車利用を前提とした流通のあり方は再考する必要があると思われます。

データの出典:
 (一社)日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」、経済産業省「経済センサス活動調査」から筆者作成。
 https://www.jcsc.or.jp/sc_data/data/overview
 https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/28result/h28index.html#menu05

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−地域交流広場ぱうぜ(東京・高島平)−

2023年3月19日(土)に開催されたECOM(NPOエココミュニケーションセンター)30周年ワークショップでは、多くの新しい出会いもありました。
 「小さなアンテナショップネットワーク」とは、埼玉・小川町やときがわ町の有機野菜生産者と都会のアンテナショップ(販売・情報普及者)をつなぐネットワークで、ECOMの森良代表がご自身で野菜を仕入れて届けているそうです。

 そのアンテナショップの一つが、東京・高島平団地の地域交流広場ぱうぜ。「ぱうぜ」とは、音楽用語で休止のことだそうです。運営者の石田ゆかりさんとは、偶然、ワークショップで同じテーブルになったこともあり、名刺交換させて頂きました。

 石田さんのお話をもっと伺いたいと思ってお訪ねしたのは、3月27日(月)夕方のこと。都営地下鉄三田線・新高島平駅の近く、桜並木に沿った団地の1階は商店街になって賑わっており、その一画にぱうぜはありました。
 改めて石田さんからお話を伺うと、野菜(鹿児島・出水市や山形・庄内の野菜も取り扱っておられます)の販売は活動のごく一部とのこと。他にも夕方キッチン(おにぎり、野菜スープ等)、健康づくり体操、スマホ&パソコン教室、コミュニティビジネス何でも相談会など、毎日のように多彩なイベントを開催されています。空いている時間は、レンタルスペースとして貸し出しも行っているそうです。
 お話を伺っている最中にも、パンや野菜を求めて地元の常連さんが訪ねて来られました。

「食べものを作った人と食べる人の間の関係性が近いと、ロスも少なくなる。作ってくださる方の思いを食べる人に伝えていきたい」等と、明るく語っておられた石田さんの笑顔が印象的でした。

[参考]
 地域交流広場ぱうぜFBページ
 https://www.facebook.com/takashimadaira.niko
 「持続可能な地域づくり」(ECOM30周年ワークショップ(2023.3/19)の模様
 https://food-mileage.jp/2023/03/24/blog-427/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−宮台真司『日本の難点』 (2009/4、幻冬舎新書)−
 https://www.gentosha.jp/store/ebook/detail/1599

著者は1959年宮城県生まれの社会学者、評論家。
 昨年11月29日夕、教授を務める首都大学東京での講義を終えて1人でキャンパス内を歩いていた際、男に襲われて重傷を負ったとのニュースには驚きましたが、その後、快復されて活動を再開されていると伺い安堵しています。なお、容疑者とみられる男は12月に死亡(自死)が確認されています。

本書は少し前の著作ですが、分析されている「難点」は、現在、さらに先鋭化・顕在化しているようです。
 著者の見立てによると、現代は「社会の底が抜けて」おり、その理由は「郊外化」にあるとのこと。

 郊外化とは、コンビニ・ファミレス的な〈システム〉が、地元商店的な〈生活世界〉を全面的に席巻していく動きのことを指します。この結果、家族や地域は空洞化し、社会は包摂性を失い、様々な事件や問題(例えば2008年の秋葉原連続殺傷事件)が生じているとするのです。
 これらを解決するための処方箋の一つとして、著者が掲げているのが「スローフード運動」です。これは、単に有機食品を食べるといったものではなく、「食が、近隣農業を支え、近隣農業が経済やライフスタイルや風景や町の匂いや近隣文化を支えることの自覚」であるとのこと。つまり「値段が少々高くなっても、顔の見える仲間のために作り、売り、買う」ことが、「世直し運動」につながるとして高く評価しています。
 一方、共同体には維持コスト(絆コスト)がかかるということにも言及されています。

そして、柳田圀男も参照しつつ、国土保全をキーワードに、農業、環境、道路、分権化、内需による経済成長等の面で、多くの消費者を「新しい社会運動」に動員することが必要としています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 持続可能な地域づくり(ECOM30周年ワークショップ)[3/24]
 https://food-mileage.jp/2023/03/24/blog-427/

○ とよよんマルシェと東雲会(千葉大・園芸学部)[3/28]
 https://food-mileage.jp/2023/03/28/blog-428/

○ ぶらり歴史散歩(赤塚城址、東京・板橋区)から、地域交流広場「ぱうぜ」へ。[4/2]
 https://food-mileage.jp/2023/04/02/blog-429/

○ 有機農業の未来に向けて語る 〜金子美登氏・大和田世志人氏を偲んで〜[4/3]
 https://food-mileage.jp/2023/04/03/blog-430/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 「Present Tree in くまもと山都」植樹ツアー2023
 日時:4月8日(土)〜9日(日)
 場所:熊本・山都町
 主催:認定NPO法人環境リレーションズ研究所
 (詳細、問合せ等↓)
 https://presenttree.jp/blog/2023/02/16/11157/

○ 奥沢ブッククラブ第88回−カポーティ「クリスマス三部作」
 日時:2月13日(月)19:00〜21:00
 場所:オンライン
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/1295716901040372

○ 今夜はご機嫌@銀座で農業
 日時:4月19日(水)18:30〜20:00
 場所:中央区環境情報センター(東京・京橋)
 主催:Slow Food Ginza
 (詳細、問合せ等:追ってFBのイベントページが立てられると思います。)

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 ロシアによるウクライナ武力侵略の開始以来、お休みしています。
 過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.265は4月20日(水)[和暦 弥生朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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 バックナンバー
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