【メルマガ】F.M.Letter No.266 -pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.266◇
  2023年5月4日(木)[和暦 弥生十五日]
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◆ F.M.豆知識  日本の有機農業の取組み面積
◆ O.カレント  オーガニックビレッジ
◆ ほんのさわり 谷口吉光 編著『有機農業はこうして広がった』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 カレンダーではゴールデンウィークに入りました。新型コロナウィルスの感染拡大も一段落し、久しぶりに2回にわたって福島を訪問。5月25日(木)にはパレスチナ関係のイベントも主催します。
 今号は有機農業を普及の観点から取り上げました。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。明日の夜は「清明の満月」を望むことができるでしょうか。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−日本の有機農業の取組み面積−

2021年9月に農林水産省が発表した「みどりの食料システム戦略」(以下、「みどり戦略」)においては、有機農業の面積を2050年までに100万ha(全農地の25%)へと拡大する目標が掲げられています。
 では現在、日本において有機農業に取り組まれている農地はどの程度あるのでしょうか。リンク先は、日本の有機農業の取組み面積と、全農地面積に占める割合の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/05/266_yuuki.pdf

2022年における有機農業の取組み面積は25.2千haと、過去10年で約5割と大きく拡大しています。内訳をみると、有機JASの認証を取得している農地が56%、認証を受けていない農地が44%となっており、近年、認証を取得している農地の割合が上昇しています。
 しかしながら、全農地面積に占める割合はわずか0.6%弱に過ぎません。
 これは、イタリアの16%、ドイツ・スペインの約10%、フランスの8.8%、韓国の2.3%等と比較しても非常に低い水準です。
 また、消費面(国民1人あたりの有機食品消費額)からみても、日本はスイス、フランス等の4〜8%、アメリカの9%程度と、同様に非常に低い水準に留まっています。

このような現状から、「みどり戦略」が掲げた高い目標は、有機農業関係者からは驚きと懐疑の念をもって受け止められましたが、農水省は現在、目標達成に向けてモデル的な先進地区の創出等に取り組んでいます(「オーシャン・カレント」欄参照)。
 一方、「有機農業は広がっていない」との通説は間違っているとの論調もあります(「ほんのさわり」欄参照)。

データの出所:
 農林水産省「有機農業をめぐる事情(2022.9)」、「耕地及び作付面積統計(累年統計)」から筆者作成。
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/index-1.pdf
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/menseki/#r

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−オーガニックビレッジ−

オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取組みを進める市町村のことです。
 農林水産省は「みどり戦略」を踏まえ、2021年度補正予算から交付金による支援を開始し、2025年までに100市町村で先進的なモデル地区「オーガニックビレッジ」を創出することとしています。
 2022年10月時点で、全国の54地区(31道府県の55市町村)で実施されており、23年4月時点で29市町村の首長が「オーガニックビレッジ宣言」を行っています。

例えば福島・二本松市では、2022年4月、NPO法人ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会などを構成員とする循環型農業推進協議会を設置し、23年2月にオーガニックビレッジ宣言を行いました。
 このなかでは、持続可能な食料システムを生産者、事業者、消費者との協働により実現していくため、自然と共生し里山を活かす農業の普及、生産された農産物の学校給食への普及等に取り組むとしています。
 これら先進的な取組みが、多くの地域に横展開していくことが期待されます。

(参考)
 農林水産省HP「オーガニックビレッジのページ」
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/organic_village.html
 二本松市・オーガニックビレッジ宣言
 https://www.city.nihonmatsu.lg.jp/shigoto_sangyo/nougyo/sesaku/page010506.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−谷口吉光 編著『有機農業はこうして広がった』 (2023/2、コモンズ)−
 http://www.commonsonline.co.jp/new_books/2023/04/19/sensho9/

編著者の谷口吉光先生(秋田県立大教授、社会学)によると、「日本では有機農業は広がっていない」との通説は間違っているとのこと。農地面積等の統計でみれば全体の0.6%に過ぎないものの、有機農業を「ひとつの社会現象という物差し」で見ると、様々な形(運動、ビジネス、思想、政策)で広がっていると主張されています。
 この広がりを説明するために「有機農業の社会化」という概念が提示されています。これは「有機農業が社会的な問題の解決に貢献することを通じて、地域や社会に広がっていく動き」のことで、有機農業は「産業化」ではなく、その「価値と機能」によって広がっているという考え方です。この観点から、農水省の「みどり戦略」は「有機農業の産業化」の延長上にあると問題視しています。

本書では、千葉・いすみ市、岐阜・白川町、山形・高畠町、大分・臼杵市の先進事例について現地調査を行い、有機農業が広がったプロセスを詳しく分析しています。その結果、民間/行政主導、慣行からの転換/新規参入など、有機農業の広がりには様々なパターンがあることを明らかにしています。
 また、学校給食の有機化など首長がやると言えばトップダウンですぐできるといった浅い見方は間違いで、一人ひとりの価値観が変わる必要があるとの指摘もあります。

一方、著者の一人である長谷川 浩さん(母なる地球を守ろう研究所、福島・喜多方市)は「社会の有機農業化」を提案されています。これは、農的暮らしを営む市民を増やし、農業を支える社会をつくり、食農教育を教育の柱とすること等を内容とするもので、これらによる発想・価値観の変化がなければ食料・環境危機に対処できないと警鐘を鳴らしています。

多くの知見や示唆に富む好著です。しかし「豆知識」欄で紹介したように、日本人の有機食品購入金額が諸外国に比べて極めて低いことをみると、少なくとも消費面では有機農業はまだまだ広がっていないと言えるのではないでしょうか。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 基本法改正と生物多様性(今夜はご機嫌@銀座で農業)[4/23]
  https://food-mileage.jp/2023/04/23/blog-433/

○ 2023年 GW直前あれこれ[4/27]
  https://food-mileage.jp/2023/04/27/blog-434/

○ オーガニックコットンの種まきに、福島に行こう![5/1]
  https://food-mileage.jp/2023/05/01/blog-435/

▼ 筆者が主催するイベントです。

〇 パレスチナの今 −写真家・高橋美香さんの思い−
 パレスチナ料理を頂きながら、パレスチナの家庭に滞在(居候)しながら人々の暮らしを記録し続けてきた写真家・ジャーナリストの高橋美香さんから、今、パレスチナで起こっていることについてお話を伺います。

 日時:5月25日(木)19:00〜21:30
 場所:47都道府県レストラン 箕と環(東京・神田)
 事前申込みが必要です。お名前、参加人数を中田までメールでお願いします(このメルマガへの返信で可)。
 (詳細)
 https://food-mileage.jp/2023/05/02/230525_palestine/
 (FBページ)
 https://www.facebook.com/events/6071283369606886

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 農あるまちづくり講座in世田谷 第5回
 日時:5月9日(火)19:00〜
 場所:JA世田谷目黒ファーマーズセンター(東京・世田谷区桜新町2)
 主催:都市農業研究会
 (参考)
 https://www.jacom.or.jp/noukyo/news/2023/03/230309-65243.php

○ 行き詰まった食の現状を乗り越えるには〜資本主義経済のカラクリから考える〜
 講師:平賀 緑さん(京都橘大学准教授)
 日時:5月13日(土)14:00〜16:00
 場所:生活クラブ館(東京・世田谷区経堂)及びオンライン
 主催:CSまちデザイン
 (詳細、問合せ等↓)
 https://cs-machi.com/kamikouza1/

○ 白川真澄『脱成長のポスト資本主義』出版記念の集い
 日時:5月20日(木)13:30〜17:00
 場所:日本キリスト教会館(東京・早稲田
 主催:呼びかけ人(ピープルズプラン研究所等)
 (詳細、問合せ等↓)
 https://theoria.info/?p=422

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 昨年2月のロシアによるウクライナ武力侵略の開始以来、お休みしています。
 バックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.267は5月20日(土)[和暦 卯月朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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