◇フード・マイレージ資料室 通信 No.280◇
2023年11月27日(月)[和暦 神無月十五日]
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◆ F.M.豆知識 福島県における避難者数の推移と現状
◆ O.カレント 仁井田本家「おだやか・雄町」
◆ ほんのさわり 関 礼子『福島からの手紙 十二年後の原発災害』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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今年は東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電の事故から12年。干支(卯年)が一回りしたことになります。12年目の6回目の月命日の日、福島・浜通りを訪ねてきました。被災地の復興の状況はまだら模様、忘れてはいけないこともあります。今号は福島の特集となりました。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−福島県における避難者数の推移と現状−
【ポイント】
現在も、少なくとも約2万7千人の方々が避難を強いられています。
2011年3月11日、原子力緊急事態宣言の発令に伴い、放射性物質の放出・拡散による住民の生命・身体の危険を回避するため、避難指示(屋内退避を含む。)が発出されました。
当初、避難指示が出された区域は福島県全体の面積の約12%という広さでしたが、徐々に縮小され、現在は2.2%(約300ha)となっています。とはいえ、現在も東京都23区の約半分の面積が帰還困難区域となっており、住宅の入り口はバリケードで閉鎖されたままです。
リンク先の図280は、避難者の数の推移を示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/11/280_hinan.pdf
これによれば、2012年5月には約16万5千人(県外避難者約6万2千人、県内避難者約10万3千人)いた避難者数は、2023年5月には約2万7千人(同約2万1千人、約6千人)と、16%への水準にまで減少しています。なお、少数ですが避難先不明者も含まれています(23年は5人)。
ただし、この県内避難者数には、自ら住宅取得または復興公営住宅等へ入居した人数は含まれておらず、また、県外の避難先市区町村で把握できなくなっている方もいます。さらには、福島県以外からの避難者数は含まれていないことから、実態に比べて過少であると考えられます。
仮に「過少」であるとしても、また、12年間で大きく減少しているとはいえ、現在も約2万7千人の方々が望まない避難を強いられているという現実を、忘れてはならないと思います。
ちなみに折れ線グラフは福島県全体の人口の推移。人口や経済の東京圏への一極集中が進むなか、福島に限らず、全国の地方では人口の減少が続いていることも重要な課題です。
(資料)
福島県「復興・再生のあゆみ」(各年版)から筆者作成。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/ps-fukkoukeikaku1151.html
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−仁井田本家「おだやか・雄町」−
【ポイント】
仁井田本家の「おだやか・雄町」は、南相馬市小高区の酒米を使うことで、福島と日本の田んぼを守っています。
福島・郡山市で300年以上続く酒蔵・仁井田本家(にいだほんけ)は、自らの使命を「日本の田んぼを守る酒蔵になる」としています。
酒米の全量は自社田及び契約栽培農場で生産した自然栽培米で、水も100%が天然水とのこと。農業生産法人も設立し有機JASの認定も取得しています。蔵には直売所やギャラリーが併設されており、感謝祭や「田んぼのがっこう」など様々なイベントも開催しています。
その看板銘柄の一つ「おだやか」は、有機米と軟水湧き水を用いて生もと仕込みしたもの。
「おだやか 生もと 純米吟醸 雄町」のラベルには、南相馬市小高区の根本洸一さんの有機栽培[雄町]を使用している旨と、「ともにふくしまの田んぼを元気にします」との決意が印刷されています。
原発事故により避難を強いられた根本さんは、翌年から避難先から通って田んぼを作り続け、現在は後継者の方とともに有機米等を生産されています(有機JAS認定取得済み)。
私も仁井田本家のネットショップで注文させて頂きました。ささやかながら、心ある生産者や事業者の方を応援していければと思っています。
(参考)
にいだしぜんしゅ/仁井田本家(福島・郡山市)
https://1711.jp/
根本有機農園(福島・南相馬市小高区)
https://nemoto.shop/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−関 礼子編『福島からの手紙 十二年後の原発災害』(新泉社 、2023/8)−
https://www.shinsensha.com/books/5730/
【ポイント】福島の17人の方々が、これまでの12年間と〈いま〉について、様々な思いを綴った「手紙」集です。
新潟水俣病を実態調査するなど環境社会学を専門とする編者(立教大学教授)が、「さまざまなが交錯する『12年後の福島からの手紙』を通して、いま一度、福島原発事故を見つめたい」と編集された冊子です。
避難を強いられた人、留まることを強いられた人、自主的に避難した人、留まることを選んだ人、帰還した人、避難先での生活を続ける人など17名の方の手紙。それぞれの方にとって12年間という流れた時間はどのようなものだったのか、どのような〈いま〉を生きているのかが記されています。
「「復興に向かいましょう」に引っ張られて、いつまで昔のことを言うんだという雰囲気がある」(伊達市)、「多額の税金を使って移住者を募るなど、あたかも被災地域ににぎわいが戻って来たかのような演出には強い違和感がある」(南相馬市)、「田植え踊りなど先祖が残したものをつないでいくのは大変」(浪江町から福島市に避難)、「夢であってほしいと何度思ったか。いつまでこんな思いが続くのかな」(同)など。
17人の方の「肉声」にふれた編者は、「ただただ、このような災害を二度と起こしてはならないと強く思う」と記されています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 福島の農家を巡るツアー2023(1、2日目)[11/16,19]
https://food-mileage.jp/2023/11/16/blog-470/
https://food-mileage.jp/2023/11/19/blog-471/
○ 農あるまちづくり講座(フォローアップ講座 & 所沢)[11/21]
https://food-mileage.jp/2023/11/21/blog-472/
○ 有機稲作セミナー(埼玉・小川町)[11/23]
https://food-mileage.jp/2023/11/23/blog-473/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ 連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2023 第5回
新潟県はなぜ福島原発事故『3つの検証』を骨抜きにしたのか
日時:11月27日(月)17:00〜18:00
場所:オンライン(Zoom)
主催:原子力市民委員会(CCNE)
(詳細、問合せ等↓)
http://www.ccnejapan.com/?p=14557
○ 農あるまちづくり講座 in 所沢 第2回
日時:11月28日(火)19:00〜20:30
場所: 森のとうふ屋さんの手づくり菓子工房 (埼玉・所沢市上新井1
主催:都市農業研究会
(詳細、問合せ等↓)
https://tokorozawanote.net/11247/
○ なぜ水俣病が解決しないのか〜もやい直しの現状と課題
講師:中地重晴さん(熊本学園大学教授、熊本学園大学水俣学研究センター長)
日時:12月11日(月)13:00〜14:30
場所:オンライン
主催:縮小社会研究会
(詳細、問合せ等↓)
http://shukusho.org/
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
ウクライナとガザの情勢に、再開の気分には至れず。過去のアーカイブ以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.281は12月13日(水)[和暦 霜月朔日]に配信予定です。いよいよカレンダーは12月です。
正確でより役に立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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