◇フード・マイレージ資料室 通信 No.328◇
2025年11月4日(火)[和暦 長月十五日]
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◆ F.M.豆知識 EUの農業(日本、アメリカとの比較)
◆ O.カレント EUの共通農業政策(CAP)
◆ ほんのさわり フランツ『ドイツ農民戦争』
◆ 情報ひろば 第6回「食と農の未来フォーラム」の開催について
ブログ更新、イベント情報等
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ガザでは停戦合意が発効したはずなのに戦闘が再開され、アメリカのトランプ大統領は核実験の再開を示唆し、日本は防衛費を増額。世の中はどこに向かっているのでしょうか。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-EUの農業(日本、アメリカとの比較)-
【ポイント】
EUはアメリカ、日本と比べて相対的に「農業大国」の性格が強く、独自の手厚い政策が講じられていますが、日本とは土地条件等はかなり異なります。

EU(European Union、欧州連合)とは欧州連合条約に基づく政治・経済統合体で、現在の加盟国は27か国(イギリスは2020年に離脱)であり、412万平方キロメートル(アメリカの約4割、日本の約11倍)の面積、4億5千万人(アメリカの約1.3倍、日本の約3.6倍)の人口を擁しています。
また、EUは世界においてアメリカと並ぶ大農業地帯であり、北極圏域から地中海沿岸まで南北に長く多様な農業がおこなわれています。
リンク先のグラフは、EU農業に関する主な指標について、アメリカ、日本と比較したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/11/328_EU.pdf
これによると、GDPに占める農林水産業総生産の割合は1.6%と、アメリカ、日本(いずれも1.0%)より大きく、就業者数に占める農林漁業就業者の割合も3.8%と、アメリカ(1.6%)、日本(3.0%)より大きくなっています。また、国土面積に占める農用地面積の割合は38%と、アメリカ(42%)よりは小さいものの、日本(12%)よりはかなり大きくなっています。
このように、EUはアメリカ、日本と比べて相対的に「農業大国」の性格が強く、このため国家予算に占める農業関係予算の割合は高くなっており、次項で紹介する共通農業政策(CAP)のような手厚い政策が講じられているのです。
もっともEUの1戸当たり平均経営規模は日本の約5倍となっており、土地条件など、日本とEUの農業が置かれている状況はかなり異なります。
[データの出典]
農林水産省「農林水産業一口メモ」(2025年9月)から作成。
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/hitokuchi_memo/index.html
[参考]
外務省HP「欧州連合の概況」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html
◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-EUの共通農業政策-
【ポイント】
EUでは加盟国共通の農業政策が行われており、近年、環境・気候変動の取組みが強化されていますが、農業者の意向を反映した見直しも行われています。

EUの共通農業政策(Common Agricultural Policy:CAP)とは、EU加盟国27カ国を対象に共通して講じられている農業政策で、EU予算を財源として運営されています。
その内容は、農業者の所得を保障するための「価格・所得政策」と、加盟各国が農業部門の構造改革、農業環境施策等の農村振興プログラムを実施する「農村振興政策」の二本柱から構成されています。
CAPは導入された1962年以降、累次の見直しが行われており、現行のCAP(実施期間:2023~2027年)では環境・気候変動の取組みが強化されています。例えば直接支払いの受給要件である環境・土壌保全等に関する共通遵守事項(クロスコンプライアンス)が強化されるとともに、更なる環境・気候変動への取組みを行う農業者に対する上乗せ支援(「エコ・スキーム」)の制度が導入されました。
これらの規制強化に関連して、2023年末から24年にかけてフランスやドイツなど多くの国で農業者による大規模な「トラクターデモ」が行われたことは記憶に新しいところであり、EU委員会はこれらの情勢を受けて小規模生産者向けの直接支払制度の見直し等を行いました。農業者の直接行動が政策変更につながったのです。
ちなみに再分配所得支持の対象となる小規模農家の定義は、フランスでは100ha、ドイツでは60ha以下とされており、ここでも日本とはかなり状況が異なります。
[参考]
農林水産省HP「EUの農業政策」
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_seisaku/eu.html
農林水産省「主要国の農業情報調査分析報告書」(2023年度、欧州地域)
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/240409.html
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-ギュンター・フランツ『ドイツ農民戦争』 (1989.9、未來社)-
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624111144
【ポイント】
中世のドイツ農民戦争は農民側の完全な敗北で終わりましたが、同時期の宗教改革と相まって、封建制度を弱体化させ、近代化への道を拓くことにつながりました。

ドイツ農民戦争とは、1524年夏に南部ドイツから始まり、やがて同時多発的に全ドイツ(現在のスイス等を含む。)に波及した農民による大規模な反乱です。封建領主の収奪により苦しんでいた農民たちは、農奴制の廃止、地代の軽減、裁判の公正などの要求を掲げて封建領主の城館や修道院を襲撃しました。
しかし、軍事的指導者を欠いていた農民軍は、イタリア出征から帰還した諸侯軍によって、本格的な戦闘行動はわずか3か月で鎮圧されたのです。戦死又は処刑された農民は約10万人(当時の武装能力のある男子全体の10~15%に相当)に及んだとされています。
このようにドイツ農民戦争は農民側の完全な敗北で終わったのですが、同時期の宗教改革と相まって、封建制度を弱体化させ、ドイツ及びヨーロッパ全体の近代化への道を拓いたものと評価されています。
なお、本書は1902年ハンブルグ生まれの歴史学者による大部な学術書(ドイツ農民戦争研究の「座標軸」とのこと)であり、「分かりやすく」をモットーとする本メルマガで取り上げるのは適切ではないかも知れません。しかし、農民による直接行動が社会変革につながったという世界史的事実を紹介するため、あえて紹介した次第です。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 第6回「食と農の未来フォーラム」の開催について
食と農の距離を縮めることを目的に開催している本フォーラム、今回はパレスチナについて考えます。
ガザ及びヨルダン川西岸からなるパレスチナでは、ガザ地区へのイスラエルの封鎖により命の糧である食料が不足し、子どもたちを含めて多くの人たちが飢餓の危機にさらされていると報道されています。
私たちの多くにとって遠いところにあると感じるパレスチナですが、現在の本当の状況はどうなっているのか、写真家の高橋美香さんが何度も「居候」して取材された家族の皆さまが、今、どのような日々を過ごされているのか等について講演を頂きます。本場のパレスチナ料理を頂きつつ、参加者全員で質疑応答や意見交換を行うことで、パレスチナの現在について参加者一人ひとりが想像し、自分たちに何ができるかを考える機会としたいと思います。
1 日時:11月25日(火)19:00~21:00
2 ゲスト及びテーマ:高橋美香さん(写真家)
「パレスチナの家族の今」(仮題)
3 会場:パレスチナ料理店 Bisan(ビサン)https://bisan.biz/
東京都北区中十条2-21-1
4 募集定員:13名
5 参加費 :8,000円(料理、ワンドリンク(ソフトドリンク)代を含む。)
6 申込み方法等:
(1)参加を希望される方は、本メルマガへの返信で連絡下さい。
振込口座をお知らせしますので事前の振込みをお願いします。振込みが確認できた時点で申込み完了となり、メールでお知らせします(11月8日~15日の間は時間がかかる場合があります)。
(2)定員に達した時点で申込みは締め切ります。[詳細]
https://www.facebook.com/events/1925321064688494
[フォーラムの趣旨、これまでの開催経緯等]
https://food-mileage.jp/2025/10/30/251030_forum/
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 千代田区の牧場跡を巡り歩く勉強会(食生活ジャーナリストの会)[10/23]
https://food-mileage.jp/2025/10/23/blog-606/
〇 荒川砂村ビオトープ環境保全観察・学習会(アクサポ)[10/25]
https://food-mileage.jp/2025/10/25/blog-607/
〇 「ハンセン病問題を基礎から学び、紙芝居『わたしの命の物語』から生きやすい社会について考える」(第5回 食と農の未来フォーラム)[10/9]
https://food-mileage.jp/2025/11/02/blog-608/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 農あるまちづくり講座・フォローアップ講座
日時:11月4日(火)18:30~19:30
テーマ:「都市農業政策の現状と今後の方向
場所:日本労働者協同組合(東京・池袋)及びオンライン
(詳細、問合せ等↓)
「農あるまちづくり講座」)修了生向けの講座ですが。関心のある方は本メールへの返信で連絡ください。
〇 映画『新・あつい壁』を見て菊池事件について考える
日時:11月28日(金)18:00~20:40
場所:弁護士会館(東京・霞が関)及びオンライン
主催:東京弁護士会等
(詳細、問合せ等↓)
https://www.toben.or.jp/know/iinkai/jinken/news/post_32.html
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「史上初の5万円台で、狂喜乱舞している人もいるんだろうね」
「泡(バブル)踊りだね」
個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.329は11月20日(木)[和暦 神無月朔日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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