【メルマガ】F.M.Letter No.116

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.116◇
 2017.4/11(火)[和暦 弥生十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  都市住民は農山漁村地域とどのように関わりたいか
◆ O. カレント  おいしいお野菜届け隊(US.Peace)
◆ ほんのさわり 速水健朗『フード左翼とフード右翼』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 今年のソメイヨシノは比較的長く保ちましたが、先週末以来の強風と冷たい雨で多くが散ってしまいました。追いかけるように、次々と様々な花が咲く季節です。
 今号は前回(田園回帰)からの流れで、都市住民の農山漁村地域との関わり方についての特集です。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は弥生十五日の配信です。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を毎回コツコツと紹介していきます。

-都市住民は農山漁村地域とどのように関わりたいか-
 国土交通省は2012年10月、農山漁村地域に対する都市住民の意識や交流の状況、今後の交流・活動意向等について、東日本大震災後の変化も含め把握するため、農山漁村地域に関する都市住民アンケート(インターネット調査)を実施しました。

調査結果によると、ほぼ全ての回答者が農山漁村地域は「大切」と思っており、約4割の回答者は東日本大震災をきっかけに農山漁村地域を以前より大切だと思うようになったことが明らかになっています。

また、「あなたは今後、農山漁村地域とどのような関わりを持ちたいと考えますか」との問いに対しては、「農山漁村地域と関わりを持ちたいとは思わない」とする者は13.2%に留まっており、約9割の都市住民は農山漁村地域との関わりを持ちたい意向を持っています(リンク先の図71参照)。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/04/71_tosijumin.pdf

希望する関わり方の内容をみると、「農山漁村地域に移り住みたい」は 3.6%、「都市部のほかに農山漁村地域にも住居を持って行き来する暮らし(二地域居住)をしたい」は 5.4%と、実際に住むことまでを考えている者は低い割合に留まっています。
 一方、「農山漁村地域をときどき訪れたり滞在したい」が 46.5%と最も多くなっているほか、「暮らしたり訪れる以外の方法で農山漁村地域と関わりを持ちたい」とする者が 31.4%と相当数いることが分かります。 
 その「暮らしたり訪れる以外の方法」としては、「都市部での農山漁村地域関連のイベントやアンテナショップを訪れる」が 57.8%、「特定の人から特産物などを直接購入する」44.7%、「災害の被災地に対して寄付をする」24.9%等となっています。
 このように、都市住民の間には、都市にいながらにして農山漁村地域と関わりをもつことへの関心と期待も高まっていることが伺えます。

[参考]
 国土交通省「農山漁村地域に関する都市住民アンケート」(2012年10月調査)   
  http://www.mlit.go.jp/common/000986962.pdf
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-F.M.豆知識」
  http://food-mileage.jp/category/mame/

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方やトピックス等を紹介します。

-“おいしいお野菜届け隊” 新規募集-

都市にいながらにして農山漁村地域と関わりをもつ一つの方法が、農産物等を生産者から直接購入することです。
 US.Peaceは、埼玉・小川町等で新規就農している若い生産者たちを支援するため、一年を通じた農業体験会、年数回の有機野菜を使った一流シェフによる食事会(シェフズ・テーブル)の開催のほか、2010年から「おいしいお野菜届け隊」という取組みを実施しています。
 これは、霜里農場(小川町、金子美登さん)での研修を経て新規就農された方々の生産物の販路を確保することを目的に、月2回、宅配便により有機野菜等が定期的に直接届くという企画です。

現在、2017年5月~10月(12回)分について新規募集中です。
 今回の生産者は、いずれも循環型の有機農業に取り組んでいる安住梨奈さん(TACK FARM)、高橋知宏さん(Sunfarm高橋)、横田農場さん。
 なお、会費の29,000円(12回、送料込み)は先払いとなりますが、これは生産者と消費者との間で豊凶のリスクを分担するというCSA(Community Supported Agriculture, 地域支援型農業)の趣旨に沿ったものです。

以下は、担当されている小林紀美江さんからのメッセージです。
 「私自身も有機農家さんから届く野菜に助けられ、苦手だった料理も今では楽しく、お弁当も手作りしています。毎回、同封されている農家さんのお手紙にも、ほっこりします。有機農家さんを応援しながら、楽しんで、美味しい野菜食べませんか?」
 なお、締切りは4月13日(木)となっていますが、興味を持たれた方はお問合せ下さい。

[参考]
 “おいしいお野菜届け隊”新規 募集!
  http://uspeace.jp/user_data/event.php#oyasai_new
 US.Peace(ユーエス・ピース)
  http://uspeace.jp/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-オーシャン・カレント」
  http://food-mileage.jp/category/pr/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野について、考えるヒントとなるような本の「さわり」だけを紹介します。

-速水健朗『フード左翼とフード右翼-食で分断される日本人』(2013年12月、朝日新書)-
 http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=15497
 
 速水健朗(はやみず・けんろう)さんは1973年、石川・金沢市生まれのライター・編集者。
 メディア論、都市論、ショッピングモール研究等を専門とする著者が、ユニークな視点から日本と世界の「食」の問題に鋭く切り込みました。

「国民食」という言葉で象徴されるように、もともと「食でつながる民族」であった日本人は、近年、急速に二極分化しているとのこと。
 そこで食の好みをマッピングすることで、日本人の食にまつわる政治意識をあぶりだすことを試みます。
 横軸の右側がグローバリズムで左側が地域主義。縦軸の上は健康志向で下は価格志向。

この縦横の軸で4分割された右下の範囲(グローバリズム・価格志向)に位置するのが「フード右翼」です。
 安全や美味しさ以上に価格の安さや手軽さを優先し、多くの人々はここに分類されるとのこと。

対称的に左上(地域主義・健康志向)に位置するのが「フード左翼」。
 スローフード運動、マクロビ、ビーガン等がここに含まれ、反農薬・化学肥料、反巨大企業の立場から、食を通じたコミュニケーションを大事にしつつ、工業製品となった食を安全・安心なものに取り戻そうとする人々です。
 ただし、その理想主義は大都市限定のリベラルの独善として反感を呼ぶとし、オーガニック食品についても「一部富裕層によるエゴイスティックな贅沢な消費」との手厳しい表現もあります。

このように「本来『フード右翼』寄りの人間として『フード左翼』については気取った人々だといった先入観から本書を書き始めた」という著者は、本書の執筆の過程で千葉・八郷の有機農場やファーマーズ・マーケット等の現場に足を運ぶなか、最終章で自ら「『フード右翼』から『フード左翼』の側に転向した」ことを告白しています。
 その理由は「生産者と話をしながら野菜や果物を買うという経験が自分の人生においてかつてないもの」であり「単純に美味しいから、楽しいから」。「『美味しい』は正義なのだ」と断言しています。

そして最後に、「今日の夕食をあなたはどこで誰と食べるのだろう。その選択は、この社会の未来を変える大きな一票に違いないのだ」と締めくくっています。

[参考]
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-ほんのさわり」
  http://food-mileage.jp/category/br/

◆ 情報ひろば
  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 春のピザ作り勉強会@八王子・磯沼牧場 (4/1)
  http://food-mileage.jp/2017/04/01/blog-9/
○ 多磨全生園(東京・東村山市)(4/4)
  http://food-mileage.jp/2017/04/04/blog-10/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
  既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 第12回 森の読書会
 日時:4月22日(土)10:00~11:30
 場所:森の食卓(東京・三鷹市井の頭5)
 主催:まちライブラリー@三鷹中央通りby雀文庫みたか、森の読書会
 (詳細、お問合せ等↓)
  https://www.facebook.com/events/1296282753753252/

○ 熊本地震復興支援コンサート~あれから一年~ in東京
 日時:4月23日(日)13:00~16:00
 場所:ハリウッドビューティープラザ(東京・港区六本木6)
 主催:ハリウッド化粧品南九州販売株式会社
 協力:葉祥明阿蘇高原絵本美術館 FOR KUMAMOTO PROJECT
 (詳細、お問合せ等↓)
  https://www.facebook.com/events/923253807812245/

○ みんなの有機農業公開講座-宮沢賢治の有機世界を求めて(最終会)
 日時:4月28日(金)18:30~20:30
 場所:文京区男女平等センター(東京・文京区本郷4)
 話題提供:舘野廣幸さん(栃木、有機稲作・きのこ栽培農家)
 主催:日本有機農業研究会
 (詳細、お問合せ等↓)
  http://www.joaa.net/moyoosi/mys-217-0428.html

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*今号のコツコツ小咄。
「意を決してデートを申し込んだら、桜が綺麗だからみんなで花見に行きましょうって言われたんだ」
「鼻(花)であしらわれたね」
 注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛(?)投稿中です。
  拙ウェブサイトにも掲載しています。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.117は、4月26日(水)[卯月朔日]の配信予定です。
  より有用な情報の発信に努めていきたいと改めて考えていますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
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