現在の生活に満足?

 先日、内閣府「国民生活に関する世論調査」(2012年6月調査)の結果を見て、ちょっと意外に思ったことがあります。
 「現在の生活にどの程度満足しているか」を聞いたところ、全体として「満足」とする者の割合が67%、「不満」とする者の割合が32%となっていますが、これを分野別にみると、食生活に関しては「満足」が87%、「不満」が13%と、満足とする割合が最も高くなっているのです。
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 私は、これを喜ばしい結果とは思えず、むしろ、現在の食に対する私たちの問題意識が乏しいことを反映しているのではないかと解釈したのです。
 日本で本当に豊かな食生活が実現しているとは、およそ言い難い現状にあります。
sinbun_convert_20121215074115.png 少し前ですが、象徴的な2件の記事が2012年2月23日付けの日本経済新聞社会面に掲載されました。
 1件は「餓死? さいたま3遺体」。
 さいたま市のアパートで、痩せ細ってほぼミイラ化していた60代夫婦と30代息子の男女3人が死亡しているのが発見されたとの内容。
 もう1件は「4歳障害児、衰弱死か」。
 東京都立川市のマンションで、無職の母親が病気で急死した後に知的障害のある4歳の男児(体重10kg以下)が衰弱死との内容。
 福祉や生活保護制度等の複雑な問題が背景にあるとはいえ、時に「飽食」とさえ呼ばれるほどの豊かで便利な食生活を謳歌しているはずの現代日本において、飢えて命を落とす人がいるという現実には、言葉を失います。
 現在の「豊かで」「便利な」食生活は、その6割を輸入に依存しており、地球規模の資源や環境にも大きな負荷を与えています。世界に10億人近い飢餓人口がいる中、私たちは大量の食べ残しや食品ロスを出しています。
 また、国内では農業の担い手の減少・高齢化、耕作放棄地の増加等の農業生産基盤のぜい弱化と、地域コミュニティの崩壊が急速に進み、フード・デザート(高齢者等の生鮮食品へのアクセスが困難になる「食の砂漠」)の問題が顕在化し、社会的弱者が「餓死」する事件さえ起こっているのです。
 だからこそ、私たちは、現在の食生活の表面上の豊かさや便利さに目を奪われ、思考停止に陥ることなく、このような食をめぐる深刻な現状について、まずは問題意識を共有し、危機感を抱くことが必要です。
 
 と、ここまで考えてきたところで、そもそもこの問題は、実は食生活に限った話ではないことに思い至りました。
 全体の7割が「現在の生活に満足」しているのですが、しかもこの割合、最近4年間は一貫して上昇しているのです。リーマンショック(2008年9月)や昨年の大震災があったにもかかわらず、です。
 年齢別のデータをみて、さらに驚きました。
 「満足」とする者の割合が最も高いのは、実は若年層なのです。「満足」の割合は20歳代で75%と最も高く、年齢が上がるに連れて低下し50歳代で最も低くなり、さらに高齢化するに従って再び上昇しています。
 この「満足度」と、前回の衆議院選挙の投票率と合わせて表示したのが図2です。
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 満足度と投票率は、驚くほどきれいな逆相関の形を示しています。
 考えてみれば当然で、現在の生活に特に不満が無いのであれば、投票所に足を運ぶのは面倒なだけです。
 しかし、これまでの大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄といった成長パターンは、地球環境問題の顕在化や原発事故によって、限界に直面していることは明らかです。
 将来の循環型社会の構築を目指していくためには、一人ひとりの自覚と努力が必要です。
 それは、地味で、すぐに結果が見えない、日々の細々とした選択を積み重ねていくことに他なりません。
 来る12月16日(日)には、大震災と原発事故後の初めての総選挙があります。東京では都知事選もあります。
 メーリングリストで面白いポスターを紹介して頂いたので、転載します。
 滋賀県のTさん、ありがとうございました。
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