◇フード・マイレージ資料室 通信 No.123◇
2017年7月23日(日)[和暦 水無月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識 低下する卸売市場経由率
◆ O. カレント スマホアプリ「ポケットマルシェ」
◆ ほんのさわり 本田由紀「社会を結びなおす」
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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和暦では水無月に入りました。以前は、なぜ梅雨時の6月が「水無月」なのか不思議でしたが和暦を知った今は納得できます。梅雨も明け、いよいよ盛夏の到来です(相変わらず天候は不安定ですが)。
時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は水無月朔日の配信です。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を毎回コツコツと紹介していきます。
-低下する卸売市場経由率-
現在、全国には64の中央卸売市場(例えば東京都では築地、大田など)、1,081の地方卸売市場(練馬、国立など)があります。
これら卸売市場は、多種・大量の物品の効率的な集分荷、透明性の高い価格形成などの機能を有しており、生産者に対して安定的な販路を提供すると同時に、消費者に対しては日々の食料品を供給するという役割を果たしています。
このため、野菜、果物、魚、肉など生鮮食料品の多くが卸売市場を経由して流通しています。
リンク先の図78は、卸売市場を経由して流通している生鮮食料品の割合(卸売市場経由率)を示したものです。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/07/78_keiyuritu.pdf
これによると、2014年で野菜については69.52%、果実は43.4%(うち国産青果については84.4%)、水産物は 77.8%、畜産物でも9.5%が卸売市場を経由していますが、その割合は、加工品など卸売市場を経由することが少ない品目の増加等もあって、総じて低下傾向で推移しています。
このように、生鮮食料品の卸売市場経由率は依然として高いものの、卸売市場を経由しない多様な流通形態(産直、契約栽培、直売所、ネット通販等)が進展しているのが、日本の食品流通の現状です。
[参考]
農林水産省食料産業局「卸売市場をめぐる情勢について」(2017.6)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/attach/pdf/index-17.pdf
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-F.M.豆知識」
http://food-mileage.jp/category/mame/
◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方やトピックス等を紹介します。
-スマホアプリ「ポケットマルシェ」-
「食べる通信」とは、食のつくり手を特集した情報誌と、彼らが収穫した食べものがセットになって定期的に届く“食べもの付き情報誌”で、現在、全国各地から38通信が発行されています。
2016年9月、その「食べる通信」から新しいサービスとして誕生したのがスマホアプリ「ポケットマルシェ」(愛称:ポケマル)。
各地の「食べる通信」で特集した方など100名以上の全国の生産者(農家や漁師さん)から、スマホやパソコンで旬の食材を直接買うことができるというものです。
ポケマルが目指すのは、お互いの顔が見えるマルシェやファーマーズマーケットの世界。
一方的に食材をネットで購入するだけではなく、生産者からお勧めの食べ方を聞いたり、こちらから感想を伝えたりすることができるのです。
なお、出展者は「食べる人(消費者)と直接つながりたい」と思っている生産者に限定されているため、中間業者等のマージンは掛からない仕組みになっているとのこと。
また、ポケマルでは現在、「九州北部豪雨復興支援チャリティ」を実施しています。配送費を除く売上の全額(!)が被災農家に寄付されるとのこと。
これでは注文するほど出品者の方が赤字になるのでは、と心配して代表の高橋博之さんにお尋ねしたところ、「同じ農家として、金と時間はないが作物はあるからそれで応援したい」という生産者の方達の声から始まった取組みとのこと。
生産者と消費者の思いが食べものを通じて一つになって、義えん金というかたちで被災地に届けられることになるのです。
[参考]
旬の食材を直接農家・漁師から – ポケットマルシェ(ポケマル)
https://poke-m.com/
食べる通信
http://taberu.me/
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-オーシャン・カレント」
http://food-mileage.jp/category/pr/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」だけを紹介します。
-本田由紀「社会を結びなおす-教育・仕事・家族の連携へ」(2014/6、岩波ブックレット)-
https://www.iwanami.co.jp/book/b254436.html
実証的な教育社会学を専門とする本田先生が、「私たちが今、立っている場所」「日本社会のかたち」 を俯職的に把え、目の前に迫っている「社会の維持さえ難しくなっているような危機」に警鐘を鳴らしています。
本田先生の目に映っている現在の日本社会とは、例えば「粗雑な『改革』が思いつきのようにばらばらと実施され」「締め付けや精神論が持ち込まれ」「うまくいかない状況をごまかすために分かりやすい『敵』を見つけ出して叩くことでうっぷんを晴らそうとするような振る舞いが広がっている」といったものです。
戦後の日本経済の高度成長を実現させたのは、仕事・家族・教育の間が堅牢に、一方的な矢印によって結合されていた「戦後日本型経済モデル」でした(新規学卒一括採用、長期安定雇用と年功賃金、家庭による教育支出等)。
しかし現在、不安定就業の増加、賃金・雇用時間の劣悪化、家庭間格差の拡大など、このモデルは破綻しているとのこと。
そして本田先生は、今後の方向性として「新たな社会モデル」を提示されています。
これは仕事・家族・教育が一方的な矢印ではなく、お互いに役割分担し助け合うもので、リカレント教育やワークライフバランスを重視し、さらに、政府が責任を持ってセーフティネットとアクティベーションという2枚の『布団』を準備するというものです。
さる7月16日(日)には、東京・四ツ谷の上智大学で本田先生のお話を直接伺う機会がありました。
現在の社会のあり様に対する先生の義憤と、よりよい方向に変えていきたいという熱意が、ふつふつと伝わってくる内容でした。
[参考]
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-ほんのさわり」
http://food-mileage.jp/category/br/
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ スライド上映 沖縄戦(@農文協・農業書センター)(7/8)
http://food-mileage.jp/2017/07/08/blog-29/
○ 子どもの貧困が日本を滅ぼす(戦略研・特別研究会)(7/11)
http://food-mileage.jp/2017/07/11/blog-30/
○ 脱成長MTG公開研究会(第13回、PP研)(7/13)
http://food-mileage.jp/2017/07/13/blog-31/
○ 比企ツーリズム(歴史)講演会(7/16)
http://food-mileage.jp/2017/07/16/blog-32/
○ 本田由紀先生「日本社会の現状と課題」(7/19)
http://food-mileage.jp/2017/07/19/blog-33/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
もっとも私は個人的な事情により、8月一杯はあまり顔は出せないかも知れません。
○ 第2回オーガニックライフスタイルEXPO
日時:7月28日(金)~30(日)
場所:東京国際フォーラム(東京・千代田区丸の内3)
主催:(一社)オーガニックフォーラムジャパン
(詳細、お問合せ等↓)
https://ofj.or.jp/
○ はじめての江戸東京野菜講座
日時:8月5日(土)13:00~16:00
場所:JA 東京南新宿ビル(渋谷区代々木2)
主催:江戸東京野菜コンシェルジュ協会
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.edo831.tokyo/kouza/2048
注:9月30日(土)にも同様の講座を開催予定。
○ 第14回 US.Peaceシェフズテーブル
日時:8月6日(日)11:30~15:00
場所:韓国料理「満味家」(東京・港赤坂2)
主催:US.Peaceファーム
(詳細、お問合せ等↓)
http://uspeace.jp/user_data/event.php#sheff
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*今号のコツコツ小咄。
「素晴らしい記録。土俵に大輪の花が・・・」
「咲いた(最多)!」
7月21日、横綱・白鵬が史上最多の通算1048勝を達成。
注:「コツコツ小咄」は個人FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛(?)投稿中です。
1週間分をまとめて拙ウェブサイトにも掲載しています。
http://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.124は、8月6日(日)[和暦 水無月十五日]の配信予定です。
より有用な情報の発信に努めていきたいと改めて考えていますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
http://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
http://food-mileage.jp/
ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
http://food-mileage.jp/category/blog/
発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/