【ポイント】
過去5回の基本計画における食料自給率の目標は、一度も達成されたことはありません。その主な原因は、想定していた以上に米の消費量が減少したことにあります。
本年6月の食料・農業・農村基本法の改正を受けて、年度内に新たな食料・農業・農村基本計画が策定されることとなっており、近く審議会における検討作業も開始されます。
基本計画は過去5回、5年ごとに策定(閣議決定)されてきており、法の規定に基いて、毎回、10年後の食料自給率(カロリーベース及び生産額ベース)の目標が設定されています。しかしながら、特にカロリーベースの自給率については、これまで目標を下回る水準のままで推移してきています。
リンク先の図298の上半分の折れ線グラフは、1960年以降のカロリー(供給熱量)ベースの食料自給率の推移を示したものに、過去5回の自給率の目標値をプロットしたものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/08/298_mokuhyo.pdf
これによると、過去5回の基本計画では45%(4回)、50%(1回)という目標を設定したものの、現実の自給率はやや低下傾向ないし横ばいで推移してきており、目標を達成するどころか、目標に向かって反転・上昇する兆しさえ見られません。
このことについては、農林水産省に対して、目標が達成されなかったことの要因分析や検証を(さらには反省も)行っていないとの批判があります。
下半分の棒グラフは、米の国民1人・1年当たり消費量(供給純食料)の推移を示しています。一見したとおり、低下する自給率のグラフと極めて似たかたちになっています。つまり、米の消費量の減少と軌を一にして食料自給率も低下してきたのです。
濃い赤で示したのが、それぞれの基本計画策定時に想定した10年後の米の消費量です。自給率目標の設定のためには、消費量(分母)と国内生産量(分子)のそれぞれを見通す必要がありますが、米の消費量については、栄養バランス(現状は脂質の摂取過多)を配慮して健康面からも望ましい姿として、現状からあまり減少しないと想定していたのです。
ところが現実の10年後の米消費量は、それぞれの時点の想定を大きく下回ってしまいました。このことが、自給率目標が達成できなかった(上昇にも転じていない)最大の要因なのです。
むろん、見通しが甘かった、食生活改善など食育の取組みが不十分だった等の「反省」すべき点はありますが、いずれにしても、食料自給率は、私たち一人ひとりが米を食べる量次第というのが現実です。
このような状況の中で、審議会における新たな基本計画の検討・策定作業が開始されます。審議会の資料(目標が達成されなかったことについての検証結果も含めて)や議事概要はHPで公開され、パブリックコメントや地方説明会も予想されます。
なお、一部に「農林水産省は食料自給率の目標設定を放棄した」といった言説がありますが、これは、法の条文さえ読んでいない、無責任で、悪意さえ感じられるものと言わざるを得ません。なお、今回は、食料自給率では評価できない課題(例えば肥料原料の輸入状況)についての目標の設定についても、あわせて議論されることとなっています。
ぜひ多くの方には、正確な情報を基に、自給率など食べものことを「自分ゴト」として捉え、できるところから実践に移していって頂きたいと思います。
[データの出典]
農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」から作成。
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/k_aratana/
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.298、2024年8月18日(日)[和暦 文月十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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