【メルマガ】F.M.Letter No.131

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.131◇
 2017年11月18日(金)[和暦 神無月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識    避難者の推移と現状
◆ O. カレント   までいライフ
◆ ほんのさわり 守友裕一ほか『福島 農からの日本再生』
◆ 情報ひろば    ブログ更新、イベント情報等
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 雨模様の週末となりました。初冬にしとしとと降る雨を「時雨」(しぐれ)といいます。神無月は、紅葉を染める時雨月でもあります。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は神無月朔日の配信です。先日、訪ねてきた福島・飯舘村の特集になりました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるようなデータの断片を、毎回一つずつ、コツコツと紹介していきます。

-避難者の推移と現状-

2011年3月11日(金)14時46分に発生したマグニチュード9.0の大地震は、東北を中心に死者15,894名、行方不明者2,546人(2017年9月8日現在、警察庁)等の甚大な被害をもたらしました。
津波や地震に加え、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、発災直後には約47万人が避難を余儀なくされました。 それから6年半が経過し、避難者数は減少しましたが、現在もまだ13万人が避難しています。
グラフは、福島県の避難者の推移です。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/11/86_hinansha.pdf

これによると、2014年5月の時点では約16万9千人が避難していましたが、2017年7月には約5万7千人にまで減少しています(うち県内避難者2万2千人、県外避難者が3万6千人)。
 しかし、減少の程度は全体に比べると緩やかで、これは、原発事故による避難指示等の影響を受けているものと考えられます。

いずれにしても、大震災から6年半以上が経過した現在においても、全体で約13万人、うち福島県だけでも6万人近くが避難生活を強いられているという現実はしっかりと胸にとどめておく必要が売あります。

なお、東日本大震災による負傷の悪化等により避難先等で亡くなられた方(震災関連死)の数は3,591人(2017年3月31日現在)で、うち福島県が2,147人(59.8%)を占めており、さらにその90.1%(1,935人)は66歳以上の方です。

[出典等]
警察庁「平成23年(2011 年)東北地方太平洋沖地震の被害狀況上と警察措置」
https://www.npa.go.jp/news/other/earthquake2011/pdf/higaijokyo.pdf
復興庁「東日本大震災からの復興の状況と取組」(2017.1)
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-2/201701_joukyoutotorikumi.pdf
福島県「ふくしま復興のあゆみ<第10版>」(2017年8月)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/230879.pdf
復興庁「東日本大震災における震災関連死の死者数」(2017.6)
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-6/20170630_kanrenshi.pdf
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-F.M.豆知識」
http://food-mileage.jp/category/mame/

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

-までいライフ-

「までい(真手)」とは、左右揃った手、両手という意味の福島県北部地方の方言です。
例えば「食べものはまでいに(大切に)食べなさい」「子どもはまでいに(丁寧に)育てなさい」「仕事はまでいに(しっかりと)しなさい」等と使われるのだそうです。

福島・飯館村(いいたてむら)は、2004年に策定した第5次総合振興計画書において、「手間ひまを惜しまず」「丁寧に」「時間をかけて」「じっくりと」「つつましく」暮らす“までいライフ(MADAY LIFE)” を村づくりの基本理念に位置づけました。
 これは、ふるさと・飯舘村が本来持っている歴史や風土を今一度見直し、人間本来の楽しい「暮らしぶり」や「生きざま」をつくりあげようとするものです。
このような独自の村づくりに取り組んでいるさなか、2011年3月の福島第一原発事故により、全村避難を余儀なくされたのです。

それから6年後の今年(2017年)3月31日、一部の区域(帰還困難区域に指定されている長泥地区)を除いて飯舘村の避難指示が解除されました。これを受けて、まだ数としては少ないものの、帰村して農業や暮らしを再開する人が徐々に増えています。その一方で、帰村政策に批判的な村民の方たちもおられるのが現状です。
 経済優先・効率優先への反省として出てきた「スローライフ」の日本版とも言える「までいライフ」に基づく飯舘村が再生していく姿を、これからも注目していきたいと思います。

[参考]
飯舘村 第5次総合振興計画書「大いなる田舎までいライフ・いいたて」
http://www.vill.iitate.fukushima.jp/soshiki/1/39.html
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-オーシャン・カレント」
http://food-mileage.jp/category/pr/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

-守友裕一、神代英昭、大谷尚之『福島-農からの日本再生:内発的地域づくりの展開』(2014/3、農山漁村文化協会)-
http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54013207/

代表編著者の守友裕一先生は1948年富山県生まれの農学博士。
 宇都宮大学教授等を経て、現在は福島大学特任教授として「ふくしま未来食・農教育プログラム」等に携わっておられます。

守友先生によると、原発被害は、フローの損害、ストックの損害、社会関係資本の損害(以上は福島大・小山良太教授の整理)に加えて、循環の破壊の損害、自給(恵み、文化、豊かさ)の破壊による損害を与えたとのこと。
 そして「農業を軸として、自然と暮らしと経済の循環に目を向けていくことが、地域再生の不可欠の条件となっている」とされます。

また、飯館村に関する章においては、もともと飯舘村では村民参加の村づくり活動が活発に行われてきたという歴史があることを紹介されています。
 そして、原発事故により役場も全ての村民も避難を余儀なくされるという非常事態下においても、全村民アンケートの実施、行政区懇談会(行政区ごとのワークショップ)の連続開催、住民主体による放射線計測等に取り組んできており、守友先生は「これまでの村民主体の村づくりの伝統が、今、この困難な局面から地域の再生を目指すなかで生かされている」と評価されています。

さらに守友先生は、原発災害が人の心を分断する危険性を踏まえつつ、「ひとそれぞれ の生き方の選択を尊重し、それを相互に認めあって、互いに補い合いながら進んでいくと いう考え方を、原発被災地のみならず、これからの地域の再生、日本の再生に生かしていくことが重要」とされます。
 震災以前から、そして震災後も、飯舘村の方たちに寄り添ってきた守友先生ならではの言葉です。

[参考]
福島大学・ふくしま未来食・農教育プログラム
http://shokunou.net.fukushima-u.ac.jp/
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-ほんのさわり」
http://food-mileage.jp/category/br/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ までいの里・飯舘村の今と未来(CSまちデザイン市民講座)[11/4]
http://food-mileage.jp/2017/11/04/blog-54/

○ 映画『日本と再生』[11/5]
http://food-mileage.jp/2017/11/05/blog-55/

○ 銀座農業コミュニティ塾[11/9]
http://food-mileage.jp/2017/11/09/blog-56/

○ フード・マイレージ(番來舎、江戸コン総合講座)[11/17]
http://food-mileage.jp/2017/11/17/blog-57/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 大豆収穫 in 横田農場
日時:7月2日(日)9:30~
場所:東武東上線・小川町駅前集合(埼玉・小川町)
主催:(有)USP研究所
(詳細、お問合せ等↓)
http://uspeace.jp/user_data/event.php#taikenkai

○ 脱成長ミーティング 第14回公開研究会
日時:11月25日(土)18:00~
場所:ピープルズ・プラン研究所(東京・文京区関口1)
主催:脱成長ミーティング
(詳細、お問合せ等↓)
http://umininaru.raindrop.jp/datsuseichou/tuo_cheng_zhangmitingu/di14hui_kai_cui_jiang_zuo.html

○ 福島の農業の現場からー放射能汚染と向き合う
日時:11月27日(月)18:45~21:00
場所:光専寺本堂(東京・武蔵野市吉祥寺本町1)
主催:フクシマを思う実行委員会
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/993708017442929/

○ 宮沢賢治研究会 第296回例会
日時:12月2日(土)13:30~16:30
場所:氷川区民会館(東京・渋谷区東2 )
主催:宮沢賢治研究会
(詳細、お問合せ等↓)
http://kenji-society-1.sakura.ne.jp/wp02/archives/2477/

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*今号のコツコツ小咄。
「地元産って聞くと、なぜか引き付けられるのよね」
「地場(磁場)野菜だからね」

「コツコツ小咄」は拙ウェブサイトにも掲載しています。
http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.132は、12月2日(土)[和暦 神無月十五日]の配信予定です。
 より有用な情報の発信に努めていきたいと改めて考えていますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
http://food-mileage.jp/
ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
http://food-mileage.jp/category/blog/
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