【メルマガ】F.M.Letter No.193

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.193◇
2020年5月23日(土)[和暦 閏卯月朔日]発行
◆ F.M.豆知識  圏域別にみた人口密度の長期的推移
◆ O.カレント  閏月と自然のリズム
◆ ほんのさわり 宇根 豊『日本人にとって自然とはなにか』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦では今日から閏卯月(うるう・うづき)。和暦には西洋のグレゴリオ暦と違い閏月がありますが、この理由はオーシャン・カレント欄で紹介します。今号では「自然」について考えてみました。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

−圏域別にみた人口密度の長期的推移−

新型コロナウイルス禍は、ようやく収束の兆しが見えつつあるようです。
 前々号(No.191、4/23配信)では、都道府県別の感染者数が人口密度と相関があることを指摘しましたが、リンク先の図193は、人口密度の長期的な推移を圏域別にみたものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/05/193_jinkomitudo.pdf

これによると、1920(大正9)年には1 平方km当たり150.1人だった全国平均の人口密度は2017(平成29)年には339.8人へと2.3倍となっていますが、グラフではほぼ横ばいにしか見えません。
 これは、元々人口密度が高い三大都市圏においては347人から1229人(3.5倍)、特に東京都は1688人から6264人(3.7倍)へと大きく増加しているためです。

東京都の人口密度は、戦後の谷から高度経済成長の過程で大きく上昇しました。
 その後、1990年頃まではなだらかとなりますが、2000年頃から再び顕著な上昇傾向に転じています。この動きは同じ大都市圏でも大阪府や愛知県にはみられないもので、東京への一極集中が進みつつあることを示しています。

このような東京都における過密の進行は、感染症へのリスクを高めるなど様々な問題を生じさせています。
 また、東京など大都市圏の住民にとっては、自然や農林水産業の現場からの距離が遠くなっていることも伺われるのです。

[資料]
 総務省「日本統計年鑑」
 https://www.stat.go.jp/naruhodo/c1data/02_03_stt.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

−閏月と自然のリズム−

画像:高月美樹さん『和暦日々是好日』より

現在、広く使われている太陽暦(グレゴリオ暦)は、1582年にローマ教皇・グレゴリウス13世が制定したものです。
 世界共通の時間軸として合理的で便利ですが、一方で日付と曜日だけが意識されるなど、自然界のサイクルを感じにくいものとなっています。

これに対して和暦は、太陽と月の周期を併用した太陰太陽暦で、太陽のリズムで二十四節季等の季節が、月のリズムで日にちが分かる仕組みになっています。
 例えば各月の1日(朔日)は必ず新月、15日はほぼ満月で、夜空を見上げれば大体の日にちが分かります(個人的には月が細ってくると、あるいは満ちてくるとメルマガ原稿を作成しなければと焦ります)。

月の満ち欠けは12か月で約354日であるため、一太陽年(365日)との差を調整するため、和暦では数年に一度、閏月を入れ、1年が13か月になるのです。もともと日本人にとって暦(時の流れ)とは、一定のものでも直線的でもないのです。

日本人は長い間、月の満ち欠けと季節の変化という異なる二重の時間軸を感じながら生活してきました。月の満ち欠けも季節の変わり目も私たちの暮らしに密接に関わっていたことは、歳時記や農事暦からも明らかです。

[参考]
 本稿は高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂きました。
 https://www.lunaworks.jp/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

−宇根 豊『日本人にとって自然とはなにか』(2019.7、ちくまプリマー新書)−
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480683571/

著者は1950年長崎県生まれ。福岡県農業改良普及員を経て1989年に福岡・二丈町(現糸島市)で新規就農し、2001年にはNPO農と自然の研究所を設立されました。
 「百姓」であると同時に農学博士でもある著者は、人々の「自然へのまなざし」が減っていることに危機感を抱き、「自然とは何か」を正面から探究したのが本書です。

多重的な意味がある「自然」ですが、その背景には、そもそも「自然」という言葉自体、2度輸入されたものであることに関係しているそうです。
 1度目は2000年前に中国から漢字で、2度目は明治以降に西欧の「nature」の翻訳語として。そして日本人は、いずれの本来の意味とはずれた独特の解釈をしており、無力さを自覚することで自らを自然の一部と捉えているとしているのです(多くの歴史書、農書、文学作品等が参照されています)。

また著者によると、百姓という職業は自然(生きもの)に対する感性と情愛がないと成り立たないとのこと。
 例えば、ごはん一杯(米粒3〜4千粒)は稲株で3株分で、その回りには35匹のオタマジャクシがいるそうです。つまり田んぼで稲作が行われないと、タマジャクシは生きることができないのです。

「生きものたちを守ることも百姓の役割。消費者も食べることで、そのことを我が事のように感じてほしい」と著者は訴えます。
 さらには「食べることは生きものの命をもらうこと。その生きものと話をする最後のひとときである食卓で、その食べものがどういう自然のめぐみを受けて育ったのか、そういう会話をしてほしい」とも記されています。

[参考]
 NPO農と自然の研究所
 https://hb7.seikyou.ne.jp/home/N-une/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 〇 ウェブサイトを見直し中です。[5/13]
 https://food-mileage.jp/2020/05/13/blog-267/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ オンライン市民科学講座(開催中)
 シリーズ「生活のなかの科学技術リスク」(第1期)全13回
 日時:2020年4月23日(木)19:00〜最長21:00、
   〜7月16日(木)
 場所:オンライン(ZOOM)
 主催:市民科学研究室
(詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/online_csijseminar_2020/

○ 一日一微小発見 〜 一粒の実を五感で味わう
 日時:2020年5月24日(日)15:00〜17:00
 場所:オンライン(ZOOM)
 主催:シェア奥沢
(詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/243984660009242/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 「快復してよかったね。今日は月初めだから、病院から出るのにちょうどいいね」
 「えっ、そうだっけ」
 「太陰(退院)暦ですから」

 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.194は6月6日(土)[和暦 閏卯月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

 * 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

 * 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也
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 発行システム:『まぐまぐ!』
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 バックナンバー
 http://food-mileage.jp/category/mm/

 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
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 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
 http://food-mileage.jp/category/blog/