【メルマガ】F.M.Letter No.138

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.138◇
 2018年3月2日(金)[和暦 睦月十五日]発行
────────────────────
◆ F.M.豆知識 主要4品目のフード・マイレージの長期的推移
◆ O. カレント こくベジ(東京・国分寺市)
◆ ほんのさわり 碧野 圭さん『菜の花食堂のささやかな事件簿』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
────────────────────
 昨日明け方まで降っていた強い雨は午前中には上がり、夜には丸い月が出ていました。今朝は青空、気温も上がり、花粉も飛散(悲惨)するとの予報。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は睦月十五日の配信です。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるようなデータをコツコツと紹介していきます。

-主要4品目のフード・マイレージの長期的推移-

これまで3回にわたり、日本の輸入食料のフード・マイレージを紹介するなかで、近年は縮小していることを紹介しました(ただし輸入量は減、平均輸送距離はやや長距離化)。
 (総量)
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/01/89_FM.pdf

(1人当たり)
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/01/90_FM2.pdf

(輸送量と平均輸送距離)
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/02/91_FM3.pdf

今回は、日本の輸入食料のフード・マイレージの長期的な動向をみます。
 もっとも全品目について計測することは困難であるため、ここでは小麦、とうもろこし、大豆及び菜種の4品目を取り上げます。これらで近年におけるフード・マイレージの約6割を占めています。

これら主要輸入品(4品目)のフード・マイレージの推移をみたものが、リンク先の図 92 です。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/03/92_FMlt.pdf

1960 年には4品目合計で958億t・km(トン・キロメートル)であったフード・マイレージは、2010年には 5,157 億 t・km へと、 5.3倍と大きく増大しています。

品目別にみると、とうもろこしの増加の度合いが最も大きく、同期間における増加分の約7割(寄与率)を占めています。
 これらはほとんどが飼料用のもので、経済の高度成長と所得増大の過程において日本人 の食生活パターンが大きく変わり、畜産物に対する需要が急増したことを反映したものです。

また、輸入相手国別にみると、増加分に占めるアメリカの寄与率は約8割を占めており、アメリカへの依存度を高めている状況もみられます。

以上のように、経済の高度成長等の過程で、長距離輸送された大量の輸入食料(特に飼料、油糧種子)に大きく依存するという現在の食料供給構造が形成されてきたのです。

[参考]
 中田哲也『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』([新版]2018.1、日本評論社)pp.127~130
 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7625.html

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

-こくベジプロジェクト(東京・国分寺市)-

自給率が日本一低い東京都は、農業と縁が薄い地域のようにもみえますが、多数の消費者が近隣にいるという特性も活かしつつ、多くの地域においてユニークな取組みが行われています。

その一つが、今回紹介する「こくベジプロジェクト」です。
 東京・国分寺市はJR 中央線で新宿から 20 分ほど。湧水など豊かな自然環境に恵まれ、奈良時代には武蔵国分寺が置かれ歴史的には政治・文化の中心でもありました。

現在、国分寺市は全域が市街化区域に指定されており、生産緑地など農地面積はここ15 年間で2割近く減少していますが、野菜等を中心とした少量多品目生産の農業が意欲的に 営まれており、6割近くの農家では後継者も確保されているとのこと。

そのような国分寺市で、2015 年、「国分寺三百年野菜・こくベジプロジェクト」がスタートしました。江戸時代の新田開発以来300年以上続く畑で作られる国分寺野菜の魅力を 発信し、農と食をつなぐことで、まちの賑わいを作り出していこうという取組みです。
 具体的には、国分寺農業の歴史や生産者の思いを前面に押し出したポスターや冊子を制 作し鉄道駅等で掲示や配布、市内飲食店におけるオリジナルの「こくベジメニュー」の提供など。これらの情報はインターネット上のウェブサイトをでも発信されています。

さる2月25日(日)に「史跡の駅 おたカフェ」で開催された“Edible City”の上映会後の懇親会では、こくベジの取組みに関わっておられる生産者や飲食店関係の方達と懇談させて頂きました。

これら都市部での取組みは、消費者の農業や産地に対する消費者の関心を高めることにより、ひいては都市から離れた産地や生産者のことも意識するきっかけとなる効果があるものと期待されます。

[参考]
 国分寺三百年野菜 こくベジ
 http://www.kokuvege.jp/
(拙ブログより)
 『エディブルシティ』上映と交流会(おたカフェ@国分寺)(2018.2/18)
 http://food-mileage.jp/2018/02/18/blog-82/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

-碧野 圭『菜の花食堂のささやかな事件簿』(2016.2、だいわ文庫)-
 http://www.daiwashobo.co.jp/book/b214174.html

作者の碧野圭(あおの・けい)さんは名古屋市のご出身。
 フリーライターとしてアニメ誌等で活躍し、出版社でのライトノベルの編集等を経て、2006年に『辞めない理由』で小説家としてデビュー。以後、働く女性を主人公にした作品を中心に執筆されており、2014年からの 『書店ガール』シリーズはテレビドラマ化もされ、ベストセラーになりました。

その碧野さんが 2016 年に上梓された本書(第2巻まで刊行)は、これまでの作品と違ってミステリー仕立てとなっています。
 もっとも、凄惨な殺人事件や強盗事件が起こるわけではありません。例えば、料理好きの女性が彼氏から別れを告げられた理由、買ってきたばかりのケーキが痛んでいた謎、いつも駐輪場に停められている赤い自転車の秘密など。

これらの謎を、多摩地方の住宅街にある小さな「菜の花食堂」を一人で切り盛りし、料理教室もされている靖子先生が解いていきます。謎解きには、必ず旬の食材と、それらを用いた料理が登場します。
 料理教室の場面などは、読んでいるとお腹が鳴りそうになります。

寺島ナスや東京ウドなど江戸東京野菜も登場。
 その独特の食感や風味が、謎解きの重要なファクターになっています。江戸東京野菜についての詳しく分かりやすい解説も出てきます(実は碧野さんは、江戸東京野菜コンシェルジュの資格を取得されています)。

「『おいしくなあれ』というのは魔法の言葉」「食べたものであなたの身体はできているのよ」「おいしいものを作れるってことは、しあわせになる方法を知ってるってことだと思うの」
 心の傷と謎がほどける料理教室。靖子先生の優しい言葉が心に響きます。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ ライブ3題[2/17]
 http://food-mileage.jp/2018/02/17/blog-81/

○『エディブルシティ』上映と交流会(おたカフェ@国分寺)[2/18]
 http://food-mileage.jp/2018/02/18/blog-82/

○ 食のハーモニー 三題[2/24]
 http://food-mileage.jp/2018/02/24/blog-83/

○ ピョンチャン冬季五輪[2/25]
 http://food-mileage.jp/2018/02/25/blog-84/

○ SJFアドボカシーカフェ「チェルノブイリ法日本版を市民立法で」[2/27]
 http://food-mileage.jp/2018/02/27/blog-85/

▼ 筆者がスピーカーを務めます。知人が企画して下さいました。有難いことです。
 ○ 「フード・マイレージ」のお話と「新版」刊行おめでとうの会
 日時:3月21日(水)16:00~20:00
 場所:森の食卓(東京・三鷹市井の頭)
 主催:森の食卓
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/413555082402039/

 なお、ご希望の方には「フード・マイレージ 新版」を特別価格(定価1944円→1500円)にてお分けします。
 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7625.html

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 大和田新が語る 震災・原発事故 からの7年
 日時:3月7日(水)18:30~20:00
 場所:毎日メディアカフェ(東京・千代田区一ツ橋1)
 主催:毎日メディアカフェ
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/2057232791188084/

○ 震災7年目の相馬地方における健康課題
 日時:3月9日(金)19:00~21:00
 場所:番來舎(東京・目黒区駒場1)
 主催:番來舎
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/318063488697202/

○ ハープの宴
 日時:3月14日(水)19:00~21:00
 場所・主催:立石マルシェ(東京・葛飾区立石1)
 出演:琴平メイさん
(詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/1814584685258383/

○ ふくしま有機ネット交流サロン&同窓会in 東京
 日時:3月17日(土)15:00~17:00
 場所:神保町 EDITORY
 主催:福島県有機農業ネットワーク
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/807202719467697/

────────────────────
*今号のコツコツ小咄。
「後半のクロスカントリーは、各国の食料政策の違いが影響したかも」
「えっ、どういうこと?」
「持久(自給)力の差が出ましたから」
 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.139は 3月17日(土)[和暦 如月朔日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
────────────────────
◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 発行システム:『まぐまぐ!』
  http://www.mag2.com/

====================
F.M.Letter No.138、2018.3/2[和暦 睦月十五日]掲載】
 ↑ 購読(無料)登録もこちらから。