【ほんのさわり】畑村洋太郎「未曾有と想定外」

畑村洋太郎『未曾有と想定外-東日本大震災に学ぶ』(講談社現代新書、2011年7月)

著者は1941年生まれの東京大学名誉教授・工学博士で、「失敗学」の提唱者として著名な方です。
 本書は東日本大震災の直後、東電福島原発事故調査・検証委員会(いわゆる政府事故調)の委員長に就任されるまでの短い期間に、一般読者向けに書かれた啓発本です。
 私は本書を2012年に1度読んでいたのですが、このたび再読し、その内容が全く色あせていないどころか、むしろ6年目を迎えた今こそ改めて胸に刻むべき多くの教訓が含まれていることが分かりました。

その一つは、「人は忘れる」という大原則があるということです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】ふくしま 新発売。

福島県産の農林水産物を応援する情報発信のために、福島県が運営しているサイトです。
 旬の食材、福島県産食材を使った飲食店やイベントの情報、地域特派員によるレポートなど様々なコンテンツに加え、福島県産農林水産物の放射性物質のモニタリング情報も掲載されています。

モニタリング情報は、品目別、地域別に検索できるようになっています。
 「品目で検索」のバナーをクリックすると、品目(例えば野菜全体でも、ホウレンソウなど個別の品目でも検索できます。)、採取日(○年○月~○年○月)、地域(福島県全体でも個別の市町村からも検索できます。)を選択できるようになっています。
 例えば「野菜全体」「2011年3月~2017年3月」「福島県全体」を選択して「該当するすべての農産物」を検索すると、最新の32品目のリストが表示されます。… 続きを読む

【豆知識】風評被害に関する消費者意識

原発事故から6年目に入りましたが、福島県産の農産物の価格は、きゅうりなどの一部を除き、米を含む多くの品目では震災前の水準にまで回復していません。いわゆる「風評被害」の払拭が引き続き重要な課題となっています。

消費者庁は、2013年2月以降半年ごとに「風評被害に関する消費者意識の実態調査」を実施しています。
 対象は被災地域(岩手、宮城、福島、茨城)と被災地産品の主要仕向先である大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫)の消費者です(回答数は5000人余)。
 さる3月8日、最新(第9回)の調査結果が公表されました。
 消費者庁発表資料によると「食品の産地を気にする理由のうち『放射性物質の含まれていない食品を買いたいから』とする人は減少傾向」「放射性物質を理由に福島県産品の購入をためらう人の割合はこれまでの調査で最少に」等とされています。… 続きを読む

【ブログ】目白台・江戸川橋界隈まち歩き

2017年3月5日(日)は二十四節気の啓蟄(けいちつ)。
 暖かくなってきました。虫も花粉も活動が本格化(!?)。東京・文京区のメトロ江戸川橋駅へ。

13時に集合場所に集まったのは8名。
 この日開催されたのは、NPO法人市民科学研究室(市民研)主催による健康まちづくりまち歩き「目白台・江戸川橋界隈まち歩き続きを読む

【ほんのさわり】テツオ・ナジタ「相互扶助の経済」

テツオ・ナジタ『相互扶助の経済-無尽講・報徳の民衆思想史』(五十嵐暁郎監訳、福井昌子訳)

著者は1936年ハワイ生まれの日系アメリカ人で、シカゴ大学教授を長く務められた方(専攻は近代日本政治史・政治思想史)。

大阪の町人学問所・懐徳堂における教えや、山片蟠桃、三浦梅園、石田梅岩、弘世助三郎、和田耕斎など、必ずしも有名ではない在野の実践者を含む様々な人の思想や事績を丹念に辿り、近世から江戸時代の日本社会には、相互扶助的な経済や思想の伝統が存在していたことを明らかにしています。なお、巻末には11ページに及ぶ膨大な参考文献リストが収録されています

相互扶助的な経済や思想の背景には、「経済は道徳と無関係であってはならない」「自然はあらゆる知の第一原理であらねばならない」等の確固とした認識があったとし、その具体例として「講」と「報徳運動」が取り上げられています。

鎌倉時代や平安時代には宗教的活動を目的としていた講(伊勢講、念仏講等)は、江戸時代には飢饉等に対する経済的な相互扶助を目的とする頼母子講、無尽講等に深化しました。信頼・契約に基づくセーフティ・ネットの仕組みが実践されていたのです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】ばばらあやかさん

ばばらあやか(羽原朱香)さんは、青森・八戸出身のシンガーソングライター。
 盛岡、仙台を経て2年ほど前に東京へ。発達障がいを持つ子ども達とともに遊び学ぶ仕事をしながら、フリーのシンガーソングライターとして活躍されていました。

そして2017年2月11日(土)、東京・新宿御苑近くのパーティースペースで開催されたのは「ばばらいぶ・Uターン前都内ラストワンマン」。八戸に帰郷されるばばらさんの東京での最後のライブに駆けつけた50名ほどで、インド料理店の会場は満席です。

この日はギターを演奏しながら10数曲を熱唱。
 東京での日常の帰り道と帰省時の自分の心情を比べて八戸の風を感じた(「帰り道」)、最大の恐怖は都会の電車(競争の瓶詰め)だった(「mirror … 続きを読む

【豆知識】相対的貧困率と可処分所得の推移

 前々回は、日本の経済成長率が低迷する中で格差が拡大している状況を紹介しました。
 今回は、この同じ統計(厚生労働省「国民生活基礎調査」)にある別のデータをみます。リンク先の図68をご覧ください。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/02/68_hinkonritu2.pdf

折れ線グラフは前々回に示したもの(図66)と同じもので、相対的貧困率と子どもの貧困率(17歳以下の子どもがいる世帯から計算)の推移を示しています。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/66_hinkonritu.pdf続きを読む

【ブログ】高遠菜穂子さん「モスル緊急報告会」

2017年2月20日(月)。
 先週は春一番も吹いて気温が上昇した日もあったのですが、この日はその反動のように冷たい雨になりました。

東京・神田神保町へ。
 19時から専修大学・神田キャンパスで開催されたのは「エイドワーカー高遠菜穂子・イラクモスル緊急支援報告会-エイドワーカーがモスル解放地区で見た『対IS戦争』」続きを読む