【ほんのさわり】大和田 新『大和田ノート』


 大和田新『大和田ノート-伝えることの大切さ 伝わることのすばらしさ』(2016.8、福島民報社)
 https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E5%92%8C%E7%94%B0%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88-%E5%A4%A7%E5%92%8C%E7%94%B0-%E6%96%B0/dp/4904834348

「東日本・津波・原発事故大震災」(注:大和田さんは東日本大震災をこのように呼ばれます。)から、丸7年が過ぎました。
 しかし、被災された方々に節目はないそうです。震災から3ヶ月後の日に被災者の方にインタビューした大和田さんは、「震災から何ヶ月、何年という区切りはマスコミが勝手に作っているだけ。あなたは恥ずかしくないか」と言われたそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】碧野 圭『菜の花食堂のささやかな事件簿』


 碧野 圭『菜の花食堂のささやかな事件簿』(2016.2、だいわ文庫)
 http://www.daiwashobo.co.jp/book/b214174.html

作者の碧野圭(あおの・けい)さんは名古屋市のご出身。
 フリーライターとしてアニメ誌等で活躍し、出版社でのライトノベルの編集等を経て、2006年に『辞めない理由』で小説家としてデビュー。以後、働く女性を主人公にした作品を中心に執筆されており、2014年からの … 続きを読む

【ほんのさわり】水上 勉『土を喰う日々』


-水上 勉『土を喰う日々-わが精進十二ヵ月』(新潮文庫、1982/8)-
 http://www.shinchosha.co.jp/book/114115/

著者は1919年、福井・本郷村(現おおい町)生まれ。『飢餓海峡』『雁の寺』『華岡青洲の妻』等で著名なベストセラー作家で、2004年に逝去されました。
 生家は貧しかったために9歳の頃から京都の禅寺に修業に出され、16~18歳の頃には典座(てんぞ、禅宗寺院で食事を司る役職)を務め、精進料理の作り方を覚えたそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】藤原辰史『戦争と農業』

藤原辰史『戦争と農業』(2017.10、集英社インターナショナル新書)
 http://i-shinsho.shueisha-int.co.jp/kikan/015/

著者は1976年北海道生まれの京都大・人文学研究所准教授。専門は農業技術史、食の思想史。
 気鋭の歴史研究者であると同時に、子育て世代の女性等を対象とした「食堂付属大学」の開催など市民活動にも積極的に取り組んでおられる方のようです。(藤原先生の著作は、今回、初めて読みました)。

20世紀の人口増加を支えた革新的な農業技術の集合体(トラクター、化学肥料、農薬、品種改良等)は、農業の生産性を上昇させただけではなく、これらが軍事技術に転用されること等によって、戦争のあり方を大きく変えてきたという歴史的事実が明らかにされます。… 続きを読む

【ほんのさわり】中田哲也『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』[新版]


中田哲也『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』([新版]2018.1、日本評論社)
 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7625.html 

このたび、約10年前(2007年9月)に出版した『フード・マイレージ あなたの食が地球を変える』の新版を上梓することができました。
 今回の執筆・出版に当たっては、原稿作成に直接協力頂いた方はもとより、多くの皆様との交流が大きな糧となりました。ここに記して感謝申し上げます。… 続きを読む

【ほんのさわり】『サケが帰ってきた!』

奥山文弥著、木戸川漁協監修『サケが帰ってきた!』(2017年10月、小学館)
 https://www.shogakukan.co.jp/books/09227191

お節料理に欠かせない魚といえば、サケ(西日本出身の筆者にはブリの方が馴染みですが)。
 サケは産卵のために生まれた川に戻ってくるという習性があります。この時に親魚を捕獲して採卵・受精させ、ふ化・飼育した稚魚を川に放流するという事業によって、日本のサケ資源は守られています。

福島・楢葉町にある木戸川は、かつて本州太平洋側において最も多くのサケが遡上してくる川として有名で、木戸川漁業協同組合は毎年1000万尾以上の稚魚を放流していました。… 続きを読む

【ほんのさわり】守友裕一ほか『福島-農からの日本再生』


 守友裕一、神代英昭、大谷尚之『福島-農からの日本再生:内発的地域づくりの展開』(2014/3、農山漁村文化協会)
http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54013207/

代表編著者の守友裕一先生は1948年富山県生まれの農学博士。
 宇都宮大学教授等を経て、現在は福島大学特任教授として「ふくしま未来食・農教育プログラム」等に携わっておられます。

守友先生によると、原発被害は、フローの損害、ストックの損害、社会関係資本の損害(以上は福島大・小山良太教授の整理)に加えて、循環の破壊の損害、自給(恵み、文化、豊かさ)の破壊による損害を与えたとのこと。… 続きを読む

【ほんのさわり】伏木亨、山極寿一『いま食べることを問う』

-伏木亨、山極寿一 編著『いま食べることを問う』(2006.11、農山漁村文化協会)
 http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_4540062670/

本書は、伏木先生と山極先生が10人のゲスト(食文化、食育、農業政策等の専門家)と対談した内容等を収録したもので、「食」について非常に幅広く、かつ興味深い(目からウロコ的な)多くの論点が提示されています。

伏木先生(栄養科学)は、生命を維持するためのものであった食は、今や楽しみや快感のためのものに変わったとしています。… 続きを読む

【ほんのさわり】垣谷美雨『農ガール、農ライフ』


-垣谷美雨『農ガール、農ライフ』(2016.9、祥伝社)-
 http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396635060

32歳の水沢久美子は、派遣ギリに遭ったその日に、何年も同棲していた相手から突然別れを切り出されます。
 絶望の底に落ち込むなか、偶然、放映されていたTVの「農業女子特集」に触発されて農業を目指すことを決意。さっそく農村部に引っ越して農業大学校に入学、仲間とともに研修を受け、充実した日々を送ります(ここまでのストーリー展開は、やや安易とも感じられました)。

ところが、いざ就農しようという段階になって、久美子の前に多くの壁が立ちはだかります(この辺りから物語は生々しいリアリティを帯びてきます)。… 続きを読む

【ほんのさわり】山本紀夫『ジャガイモのきた道』

山本紀夫『ジャガイモのきた道』(2008.5、岩波新書)
https://www.iwanami.co.jp/book/b225922.html

民族植物学を専門とする筆者(国立民族学博物館名誉教授)の「ジャガイモ愛」に溢れている本です。
「イモ」については、日本人は「洗練されていない」等の良くないイメージを持っているだけではなく、ヨーロッパでは「悪魔の植物」「聖書に載っていない植物」として忌み嫌う国さえあるなど、二流の食べものといった偏見に満ちているとのこと。

しかし、ジャガイモは世界中で広く栽培されている重要な作物(栽培面積は第4位)として、多くの地域の食料供給と人口を支えていることについて、原産地であるアンデス、導入されたアイルランドやヒマラヤ等の丹念な現地調査を通して明らかにしています。… 続きを読む

【ほんのさわり】小田切徳美ほか『田園回帰がひらく未来』


小田切徳美、広井良典、大江正章、藤山浩
 『田園回帰がひらく未来-農山村再生の最前線』(2016.5、岩波ブックレット)
 https://www.iwanami.co.jp/book/b243801.html
 本書は2015年11月に開催されたシンポジウム(3名の基調スピーチ及びパネルディスカッション)の内容をまとめたもの。

まず広井良典さん(京都大こころの未来センター教授)は、現在、若い世代のローカル志向が顕著になっているのは、これからの時代に発展が期待される領域(福祉、環境、農業等)がローカルな性格を有しており、問題解決もローカルなレベルにシフトしていることを反映しているためと分析されています。… 続きを読む

【ほんのさわり】植木美江『7色野菜の便利図鑑』

-植木美江(絵と文)『7色野菜の便利図鑑』(2016.10、幻冬舎)-
  http://www.gentosha.co.jp/book/b10373.html

著者は「自然がたくさん残り、湧き水も豊富で野菜がおいしい」東京・小金井市在住のイラストレーター。
 数年前、近所の友人たちと野菜を主役(野菜の料理・スイーツ、アクセサリー、イラストなど)にしたマルシェを行ったのをきっかけに「野菜オタク」になられたそうです。
 その後、江戸東京野菜コンシェルジュの資格も取得され、自作の紙芝居を携えて学校を回る等の食育活動にも取り組んでおられます。… 続きを読む

【ほんのさわり】岩手県農村文化懇談会編『戦没農民兵士の手紙』

岩手県農村文化懇談会 編『戦没農民兵士の手紙』(1961/7、岩波新書)

1950年代末、岩手県農村文化懇談会は、戦争で亡くなった農家出身兵の手紙を収集する運動に着手しました。それは、日本の歴史の上に、異郷で戦死した若い農民の「たましい」による戦争証言を加えたいという意図からでした。… 続きを読む