【メルマガ】F.M.Letter No.168

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.168◇
2019年5月19日(日)[和暦 卯月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  アフリカで高い飢餓人口割合
◆ O.カレント  G20農相会合
◆ ほんのさわり 勝俣誠(監修)『世界から飢餓を終わらせるための30の方法』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 卯月も半ば。時候は立夏から小満へ。甘い香りを漂わせる花々が咲き誇っています。 今日は好天の下、久しぶりに埼玉・小川町を訪ねてきました(そのため、配信時間が遅くなってしまいました)。
 時の流れを体感するため、本メルマガは和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

-アフリカで高い飢餓人口割合-

 前回は、FAO「世界の食糧安全保障と栄養の現状に関する白書」(2018年版)から飢餓人口の地域別推移を紹介しました。
 減少傾向で推移していた世界の飢餓人口は、近年、増加に転じており、2017年における世界の飢餓人口は8億2,080万人。飢餓人口はアジアで最も多いものの、増加の程度はアフリカで著しいことを紹介しました。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/05/167_kiga.pdf

 世界人口に占める飢餓人口の割合(飢餓人口割合)も、同様に低下傾向で推移していましたが、やはり近年は上昇に転じています。
 リンク先の図168は、この飢餓人口割合の地域別の推移をみたものです。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/05/168_kiga2_3.pdf

 2017年における世界の飢餓人口割合10.9%。つまり世界では、9人に1人は十分な栄養を摂取できていません。
 地域別にみると、アフリカで高いことが見て取れます。特に東アフリカで31.4%、中央アフリカでは26.1%と、これら地域では3~4人に一人が栄養不足の状況にあります。西アフリカでは、近年、特に大きく上昇しています。
 これらの背景には、近年における国際的な食料価格の高騰、1人当り実質GDPの伸びの鈍化、急速な人口増加等、複雑な状況があると分析しています。

 世界的な飢餓の撲滅のためには、多様な参加者による様々なレベルでの対応が必要です。次の「オーシャン・カレント」欄では、政治(閣僚)レベルの対応について紹介します。

[出典等]
  FAO“The State of Food Security and Nutrition in the World, 2018”
 http://www.fao.org/3/i9553en/i9553en.pdf
 国連WFPニュース「世界の飢餓人口の増加は継続」
 http://ja.wfp.org/news/news-release/180912

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

-G20農相会合-

 本年6月28日(金)~29日(土)、大阪で G20(20カ国・地域)サミットが開催されます。
  これは、2008年以降、世界のGDPの8割以上を占める主要国・地域が参加して毎年開催されている国際会議(正式名称は「金融・世界経済に関する首脳会合」)で、日本が議長国となるのは今回が初めてです。

 本会合の前後には、国内8都市でテーマ毎に関係閣僚会合が開催されますが、その最初の会合として、去る5月11日(土)~12日(日)の間、新潟市でG20農相会合が開催され、34の国・地域と国際機関が参加しました。
 2日間の会合では「農業・食品分野の持続可能性に向けて」とのテーマで閣僚の間で意見交換が行われ、「2019年 G20新潟農業大臣宣言」を採択して閉幕しました。

  このなかでは、世界的な飢餓の終結や栄養改善の達成に向けて、人工知能(AI)やロボットも活用して持続的な農業の発展を目指すこと、気候変動への対応を強化すること、農業・食品の流通過程全体における食品ロスの削減に取り組むこと等が盛り込まれました。
 また、レセプション等では東日本大震災の被災地産の食品等も振る舞われ、中国、韓国等の農相との間では福島県産農産物の輸入規制問題についても話し合われました。

 この農相会合は、飢餓の撲滅に向けた政治レベルでの取組みの一つです。では、私たち市民レベルでできることは何があるでしょうか。次の「ほんのさわり」欄をご覧下さい。

[参考]
 G20新潟農業大臣会合の開催及び農林水産大臣等の国内出張の結果概要について(農林水産省HP)
 http://www.maff.go.jp/j/press/kokusai/kikou/190513.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-勝俣 誠(監修)、特定非営利活動法人ハンガー・フリー・ワールド(編集)『世界から飢餓を終わらせるための30の方法』(2012/4、合同出版)-
 http://www.godo-shuppan.co.jp/products/detail.php?product_id=322

 監修者は1946年東京生まれの明治学院大学教授・国際平和研究所(PRIME)所長(刊行当時。現在は同大学名誉教授)。開発経済学、アフリカ地域研究の第一人者の方。
 また、ハンガー・フリー・ワールド(HFW)は、飢餓のない世界を作ることを目的に活動する国際協力NGOです。

 「飢餓を終わらせるために、何かしたいけど自分が何をできるかよく分からない」という人に、自分でできることを見つけてもらうことが本書のねらいです。
 現在、世界には平等に分配すれば十分な食料があるにもかかわらず、6人に1人(本書刊行時)が飢えています。この背景には、植民地時代の負の遺産(商品作物生産に特化してしまったため基礎的な食料が自給できなっていること)、農産物のバイオ燃料仕向けが増加し、投機マネーにも翻弄されて世界の食料価格が上昇していること等、複雑な事情があることが解説されています。

 その上で、「食」という基本的人権が守られるために、私たちに何ができるのかについての方法(ヒント)が整理されています。
 例えば、私たちの食の現状を知ること(低い自給率等)、生産者の顔が見える食品を買うこと(産直、フェアトレード等)、生態系を損なわないなど持続的な方法で生産された食べものを選ぶこと、食教育の充実、食品ロスの削減等が掲げられています(私も「フード・マイレージ」について紹介させて頂いています)。

 最後に「本書にはたった30 のヒントしか書き切れていませんが、この本を手にとってくれた一人ひとりが行動することによって、世界を変えていく力になります」と、読者に訴えています。
 世界の飢餓という問題の深刻さに、ともすれば私たちは立ちすくんでしまいがちです。しかし本書を読めば、自分にもできることがあることが分かり勇気付けられます。そして、一人ひとりの気付きとささやかな実践が、社会を変えていく力になるのです。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 令和初日は「しゅんさくの部屋」へ[5/2]
 http://food-mileage.jp/2019/05/02/blog-191/

○ 拙メルマガ「F.M.Letter」への思い[5/4]
 http://food-mileage.jp/2019/05/04/blog-192/

○ 令和元年GWの浜通り(1、2)[5/11、12]
 http://food-mileage.jp/2019/05/11/blog-193/
 http://food-mileage.jp/2019/05/12/blog-194/

○ 幸せと経済と社会について考える読書会[5/17]
 http://food-mileage.jp/2019/05/17/blog-195/

○ 銀座農業コミュニティ塾 第9回勉強会[5/18]
 http://food-mileage.jp/2019/05/18/blog-196/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 共奏キッチン♪@自由が丘シェア奥沢 #91
 日時:5月20日(月)18:00~22:00
 場所:シェア奥沢(東京・自由が丘)
 主催: 共奏キッチン
 (詳細、お問合せ先等↓)
  https://www.facebook.com/events/286173935593715/

○ ふくしまオーガニックコットンプロジェクト報告会2019
 日時:5月23日(木)14:00~17:00
 場所:環境パートナーシッププラザ(東京・渋谷区神宮前5)
 主催:ザ・ピープル
 (詳細、お問合せ先等↓)
  https://www.facebook.com/events/303058627255517/

○ 上越の棚田へ田植えに行こ~
 日時:5月25日(土)7:00~26日(日)18:00
 場所:新潟・上越市大賀集落
 主催:大賀米づくり
 (詳細、お問合せ先等↓)
  https://www.facebook.com/events/2138433002878682/

○ 共奏キッチン@仙人の家♯9
 日時:5月27日(月)18:00~21:45
 場所:仙人の家(東京・西東京市東伏見5)
 主催:共奏キッチン@仙人の家
 (詳細、お問合せ先等↓) 
 https://www.facebook.com/events/413047459486341/

○ 第32回 森の読書会、森のブックカフェ
 日時:5月26日(土)読書会10:00~12:00、ブックカフェ13:00~16:00
 場所:森の食卓(JR吉祥寺駅から徒歩10分)
 主催:森の食卓、森の読書会
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/552571421933876/
 https://www.facebook.com/events/421580102009485/ ────────────────────

* 舞麗児忽々の今号のコツコツ小咄。
「Tシャツ(注)という単なるモノではなく、物語を求めさせて頂きました」
「コト(コットン)消費ですね」
注:ふくしまオーガニックコットンのTシャツです。

* コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号 No.169は6月3日(月)[和暦 皐月朔-日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也   https://archives.mag2.com/0001579997/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」   http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 メルマガ「フード・マイレージ資料室 通信」(バックナンバー)
  http://food-mileage.jp/category/mm/
 発行システム:『まぐまぐ!』   http://www.mag2.com/