【メルマガ】F.M.Letter No.172

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.172◇
2019年7月17日(水)[和暦 水無月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  産業連関とGDPの概念図
◆ O.カレント  平成27年(2015)年 産業連関表
◆ ほんのさわり 枝廣淳子『地元経済を創りなおす』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦では水無月の半ばですが、日照不足と低温が続いています。今日は待望の陽射しが出るとの予報、期待したいと思います。
 今号は、先日ほぼ5年ぶりに公表された産業連関表を特集しました。
 時の流れを体感するため、本メルマガは和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

-産業連関とGDPの概念図-

 去る6月27日(木)、2015年産業連関表が公表されました(オーシャン・カレント欄参照)。
 リンク先の図172は、これに基づき2015年における国内生産や産業間の取引、最終消費の状況等について概念的に示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/07/172_IO.pdf

 これによると、2015年においては国内の農林漁業により12.9兆円の農林水産物が生産されています(他に、図示していませんが2.8兆円の輸入もあります)。
 これらのうち8.1兆円は食品工業等の原材料等として製造業に投入され、3.2兆円は外食産業の食材等としてサービス産業などに投入されています。
 また、4.3兆円の農林水産物は家計等において最終消費されています。

 製造業は、他の原材料やエネルギーも合わせて302.8兆円の生産を行い、98.6兆円が最終消費されています。なお、差額は他産業や二次加工に回される分で、農林漁業にも3.0兆円(肥料や農薬等)が投入されています。
 同様に、サービス産業などは715兆円の生産を行い、460.8兆円が最終消費に仕向けられています。
 国内最終消費のトータルは563.6兆円となり、これが国内総生産(GDP)の額に相当します(厳密には、産業連関表と国民経済計算とでは、一部定義の違い等があります)。
 このように、GDPに比べると農林漁業の生産額は小さなものですが、全ての財(富)の源泉は第一次産業にあることが分かります(18世紀にケネーが『経済表』で指摘した通りです)。

 さて、農林漁業は何もないところから生産しているのでしょうか。
 そうではなく、図にあるように自然や環境の恩恵を受けて生産が行われているのです。
 これら自然や環境の恩恵は、貨幣価値に換算することができないために、産業連関表には(他の経済統計にも)記録できないことに留意する必要があります。

[出典等]
 総務省「平成27年(2015年)産業連関表 結果の概要」
http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/data/io/2015/io15_00001.html

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

-平成27年(2015)年 産業連関表-

 日本経済を構成する各産業は、相互に密接な取引関係を結びながら商品(財・サービス)の生産活動を行っています。
 産業連関表とは、国内において1年間に行われたこれら商品の生産状況や産業間の取引状況、最終消費の状況などを行列形式でまとめた大規模な加工統計です。

 産業連関表は、総務省を始めとする関係10府省庁によって概ね5年ごとに作成されており、去る6月27日(木)、2015年を対象とする最新の表が公表されました。
 それによると、国内生産額が初めて1000兆円を超えたこと、第3次産業(サービス産業)の構成比率が引き続き上昇し64%となったこと、生産波及効果は製造業において大きいこと等が明らかとされています。

 産業連関表は、経済構造の実態の把握、経済波及効果を分析を行う際の基礎資料として活用されるほか、国民経済計算(GDP統計)の基準改定時における基礎資料としても利用されます。
 また、今後、都道府県や一部の市町村においても、今後、独自の地域産業連関表が作成されることとなっています。
[参考]
 産業連関表(総務省ホームページ)
 http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/data/io/index.htm

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
  http://food-mileage.jp/category/br/

-枝廣淳子『地元経済を創りなおす-』(2018.2、岩波新書)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b345708.html

 著者は東京都市大学教授で、幸せ経済社会研究所所長。
 アル・ゴア『不都合な真実』を翻訳・紹介するなど地球環境・エネルギー問題の分野を中心に活躍されてきた著者ですが、近年は地域経済に強い関心を持っておられるようです。
 著者によると「未来は地域にしかない」とのこと。

 まず、地域経済を取り戻すための分析モデルやツールとして、地域産業連関表や地域経済分析システム(RESAS)による「域際収支」や「地域経済循環マップ」の理論と分析事例が分かりやすく説明されています。
 また、NEF(イギリス・ロンドン)が提唱する「漏れバケツ」理論も紹介され、地域経済の漏れ穴(地域外へのお金の流出)を少しでも小さくする取組みの重要性を指摘しています。
 この関連で、地産地消ならぬ「地消地産」(地域で消費しているものを地域で作ろう)という考え方にも言及があります。

 さらに「地域経済を創りなおしている」具体的な事例として、島根・海士町(観光協会の子会社によるクリーニングや土産品開発)、北海道・下川町(独自の産業連関表に基づくエネルギー自給)、富山・入善町(地場産による学校給食)等のほか、海外ではアメリカのスロー・マネー運動、イギリス・トットネス地方(「地元経済の青写真」)などの豊富な取組み内容が、経済を地元に取り戻すための具体的なノウハウとともに紹介されています。

 本書は「分析・診断・対策」という副題にある通り、著者が「地域経済を取り戻すために実際に使ってもらいたい」という強い思いで、3年をかけて完成させた「実用書」です。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

 ▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 第3回なみへい故郷自慢プレゼン会[7/6]
 https://food-mileage.jp/2019/07/06/blog-206/

○ 銀座農業コミュニティ塾 第10回 勉強会(有機農業)[7/12]
 https://food-mileage.jp/2019/07/12/blog-207/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 共奏キッチン♪@自由が丘シェア奥沢 #93 (付・大平農園訪問)
 日時:7月17日(水)18:00~22:00
 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢2)
 主催:共奏キッチン
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/1095544627322116/

○ 座標塾第3回 ローカリズムの時代へ
 日時:7月19日(金)18:30~21:00
 場所:文京シビックセンター会議室(東京メトロ・後楽園駅)
 講師:高坂勝さん
 主催:研究所テオリア
 (詳細、お問合せ先等↓)
 http://www.labornetjp.org/EventItem/1558537537799staff01

○ ジャガイモの収穫&大豆の土寄せ
 日時:7月21日(日)9:30~16:00
 場所:山梨・上野原市西原(さいはら)地区
 主催:しごと塾さいはら
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/330941177852170/

○ 第25回参議院議員通常選挙
 日時:7月21日(日)原則7:00~20:00
 場所:各投票所
 (詳細↓)
 https://2019senkyo-sanin.go.jp/

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*舞麗児忽々の今号のコツコツ小咄。
 「あなた、納豆好きだから黒幕になれるわよ」
 「えっ、どうして?」
 「糸を引くでしょ」

注:コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号 No.173は8月1日(木)[和暦 文月朔日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也
  https://archives.mag2.com/0001579997/
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