【ブログ】F.M.Letter No.180

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.180◇
 2019年11月11日(月)[和暦 神無月十五日]発行
────────────────────
◆ F.M.豆知識  減少が加速する米消費量
◆ O.カレント  大嘗祭
◆ ほんのさわり 小池理雄、渡久地奈々子『お米の世界へようこそ』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
────────────────────
 立冬も過ぎ、次第に北風が冷たくなってきました。しとしとと時雨が降る日も。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は改めてお米について考えてみました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

-減少が加速する米消費量-

米の消費量が減少を続けていることはよく知られていることですが、改めてデータを確認します。
 リンク先の図180をご覧ください。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/11/180_komeshouhi.pdf

 中央のグラフの稲穂色の太線は、米の1人・1年当たり消費量(供給純食料)の推移を表しています。
 最も消費量が多かったのは1962年度の118.3kgです(米俵ほぼ2俵分)。
 経済の高度成長が始まると、食生活の大きな変化(畜産物や油脂類の消費増)もあり、米の消費量は年々大きく減少しました。
 1980年代に入ると減少の度合いは緩やかになるものの、現在までほぼ一貫して減少が続いており、2017年度は54.2kgと最も多かった時に比べて半減以下(45.8%)となっています。

 さて、グラフの中の直線は10年毎の傾向線を示しています。
 その傾き(1年当たり減少量)を示したものが右上の棒グラフです。これによると、1990年代まで鈍化してきた減少率は、2000年代以降、逆に高まっている様子が見てとれます。
 米の消費減の傾向は、近年、加速しているのです。

 何をどのくらい食べるかは、もちろん個人の自由です。
 しかし、糖質を一切とらないといった極端なダイエットは、逆に健康リスクを高める恐れがあります。
 さらには、稲作(水田)が国土保全など多面的な機能を有していること、文化や伝統とも切り離せないといった事情を踏まえると、このまま米の消費量が減少し続けていことには懸念を覚えざるを得ません。

[出典等]
 農林水産省「食料需給表」
 http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyukyu/

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

-大嘗祭-

今週、米と稲作に関わる最も重要な儀式とされる「大嘗祭」(だいじょうさい)が行われます。
 毎年秋、その年の収穫を喜ぶ宮中祭祀が新嘗祭(にいなめさい)ですが、新たに即位した天皇が初めて行う新嘗祭のことを特別に大嘗祭と呼びます。
 皇位継承に伴う一世に一度の儀式として皇室行事の中でも最も重要なものと位置づけられており、7世紀後半の天武天皇以来の伝統があります(もっとも戦国時代から江戸時代にかけて221年間にわたって中断した期間もあります)。

 本年5月には大嘗祭に用いる米の産地を定める「斎田点定(さいでんてんてい)の儀」が行われ、東の悠紀(ゆき)地方として栃木・高根沢市、西の主基(すき)地方として京都・南丹市の水田が選ばれ、9月27日にはそれぞれ「斎田抜穂(さいでんぬきほ=収穫)の儀」が行われました。
 また、絹服(にぎたえ=絹の反物、愛知)と供服(あらたえ=麻の反物、徳島)のほか、47都道府県特産の農林水産物も「庭積机代物(にわづみのつくえしろもの)」として供えられます。

 そして14~15日には、大嘗祭の中心的な儀式である「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」が行われ、皇居内に特別に設営された大嘗宮において天皇が国民の安寧や五穀豊穣を祈ります。

 なお、大嘗祭については国事行為ではなく皇室行事であることから、政教分離や公費支出等の妥当性等の関連で議論があるところです。
 一方、工藤隆氏は著書『大嘗祭』のなかで、大嘗祭の原型は縄文晩期・弥生時代から続くアニミズムにあるとし、その特質(自然の恩恵への感謝、節度ある欲望、平和志向等)が日本文化の美質として継承されていることを高く評価しています。

[参考]
 工藤 隆『大嘗祭』(ほんのさわり)
 https://food-mileage.jp/2019/04/14/hon-165/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-小池理雄、渡久地奈々子『お米の世界へようこそ!-今日からあなたも「ごはん党」』 (2018/10、経法ビジネス新書)-
 https://www.khk.co.jp/book/book_detail.php?pid=52968

著者は、東京・原宿にある精米店の3代目店主と、沖縄在住の食育指導士。お2人とも「五ツ星お米マイスター」の資格をお持ちです。

 本書を著した目的は、「世間のお米に対する関心度合いの薄さ」に危機感を抱き、消費者にお米に 関心を持ってもらい、その魅力をアピールして、少しでもお米の消費拡大に貢献することとのことです。

 本書の内容は多岐にわたり、お米に関する基本的な情報が網羅されていると言っても過言ではありません。
 例えば「こんなにもある、お米の種類!」(第1章)では、栽培されている品種の数(500 種類以上)や品種改良の仕組み等が紹介され、「お米の味を分解する」(第3章)では、味は品種、産地、生産者の3要素で決まること、食味計よりも自分の舌で確かめること(「ベロメーター」)が大切である等と書かれています。

 さらには、お米の味をより引き立たせる「ごはんのおとも」のレシピ(第5章)、土づくりなど生産者の取組み(第6章)、田んぼが土砂災害を防止し生きものを育んでいること、稲作が伝統文化と切り離せないこと等についても紹介されています。
 また、渡久地氏は「知り合った農家さんとの付き合いが、お米に対する姿勢と考えを変えるきっかけをくれた」とも記されています。

 毎日「ぼーっ」とご飯を頂いている消費者にとって(私もその1人ですが)、手軽に「お米の全て」が分かる入門書となっています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 東京・世田谷のワイン[11/2]
  https://food-mileage.jp/2019/11/02/blog-227/

○ 水害の郡山市(福島)へ[11/7]
  https://food-mileage.jp/2019/11/07/blog-228/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 第12回 勉強会
 日時:11月11日(月・祝)19:00~21:00
 場所:中央区立環境情報センター(東京・中央区京橋3)
 主催:銀座農業コミュニティ塾
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/418554142188940/

○ 共奏キッチン♪@自由が丘シェア奥沢 #97
 日時:11月20日(水)18:00~22:00
 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢2)
 主催:共奏キッチン  (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/431011637484750/

○ 浜通りの農家を巡るスタディツアー2019
 日時:11月23日(土)11:00~24日(日)17:00
 場所:福島・浪江町、葛尾村
 主催:福島県有機農業ネットワーク
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/2451455391761064/

────────────────────
*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「見た目は華やかではないけどね」
「凍み(地味)餅だけにね」
注:凍み餅は、餅を寒い時期に軒下に吊るして乾燥させた福島県の郷土料理です。
 コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.181は11月27日(水)[和暦 霜月朔日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
────────────────────
◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也 (購読(無料)登録はこちらから)
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html

 発行システム:『まぐまぐ!』
 http://www.mag2.com/

 バックナンバー
 http://food-mileage.jp/category/mm/

 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 http://food-mileage.jp/

 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
 http://food-mileage.jp/category/blog/