◇フード・マイレージ資料室 通信 No.170◇
2019年6月17日(月)[和暦 皐月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識 1時間降水量50mm以上の発生回数
◆ O.カレント みずかさん(八木和美さん)
◆ ほんのさわり 富山和子『水と緑と土』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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今年も梅雨の季節に入りました。
鬱陶しくも、生き物をはぐくむ恵みの雨でもあります。その一方で、近年、豪雨による被害も増えています。今号は雨や川のことを考えてみます。
時の流れを体感するため、本メルマガは和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
(過去の記事はこちらにも掲載)
http://food-mileage.jp/category/mame/
-1時間降水量50mm以上の発生回数-

昨年6月末から7月にかけて、前線及び台風7号の影響により全国の広い範囲で記録的な大雨となり、西日本を中心に250名近い死者・行方不明者を出すなど、大きな被害がもたらされたことは記憶に新しいところです(「平成30年7月豪雨」)。
近年、大雨が発生する頻度が高まっています。
リンク先の図170は、1時間降水量50ミリ以上の発生回数(全国、年間)の推移を示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/06/170_gouu.pdf
これによると、1時間50ミリ以上という豪雨の発生回数は、近年、明らかに増加していることが分かります。
最近10年間(2009~18年)の発生回数は311回と、1976~85年の266回の1.4倍へと増加しているのです。
ちなみに1時間雨量50ミリの雨とは、水しぶきで視界が悪くなり自動車の運転は危険となり、地下街への浸水やマンホールからの水の噴出し、あるいは土石流の発生等の危険性が高まります。
このように、近年、豪雨の頻度が増えているのは、地球温暖化の影響があるとされていますが、一方、豪雨被害増大の背景には、近代日本の水利用・土地利用の変化があるという論点もあります(「ほんのさわり」欄参照)。
[出典等]
気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html
◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
(過去の記事はこちらにも掲載)
http://food-mileage.jp/category/pr/
-みずかさん(八木和美さん)-

みずかさんは石川・金沢市のご出身。みずかさんほど幅広い活動をされている方を、私は他に存じ上げません。
例えば、防災関係。
東日本大震災で「RQ市民災害救援センター」のボランティア経験をきっかけに、後継団体の(一社)RQ災害教育センターの創設に関わり、事務局長として、現地のコーディネータを含めたネットワークづくりに取り組まれてきました。
昨年の西日本豪雨を始め、常総、熊本など相次ぐ災害のたび、ご自身も何度も被災地を訪問し活動されています。
みずかさん達が重視するのは「災害教育」という考え方。
これは、ボランティア等として被災地を訪れることで得られる共感や利他的な行動を、人格的成長の資源として捉えようというものです。
また、ふるさとラボ大賀(任意団体)の世話人もされています。
出身大学のフィールドワークで新潟・上越市を訪ねるうち、大賀地区のリーダーの方と知り合い、2010年頃から首都圏等から大賀を訪問して交流する活動を主催されています。
山間部にある大賀地区の世帯数は、わずかに5戸。外見上は「限界集落」ですが、豊かな自然に恵まれ、棚田などの素晴らしい景観も有しています。
みずかさんは、その棚田での米づくり、大豆栽培と味噌づくり、地域の行事への参加など、1年を通じて様々な体験活動を企画・コーディネートされているのです。
さらに、「対話ラボ」のマスターも務められています。
地域作りの実験室・ご近所ラボ新橋(東京・港区)を舞台に、毎週水曜日に開かれているのが「対話ラボ」。「対話」をコミュニティ作りに活かすための様々な実験的な取組みが行われています。
その一環として開催されているのが「問いの思考塾」。「問い(質問)をつくる筋肉を鍛えるワークショップ」で、6月19日(水)には入江杏さん(ミシュカの森)を話題提供者に迎えて開催される予定です。
これら多岐にわたる活躍をされているみずかさん。その柔軟な思考と豊かな行動力に、これからも期待したいと思います。
[参考]
(一社)RQ災害教育センター
https://rq-center.jp/
対話ラボ
https://gokinjo-i.jp/taiwalabo170627/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
(過去の記事はこちらにも掲載)
http://food-mileage.jp/category/br/
-富山和子『水と緑と土-伝統を捨てた社会の行方(改版)』(2010.7、中公新書)-
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2010/07/190348.html

本書の主題は、日本人と川(水)との関わりです。
歴史的に日本人にとっての最大の課題とは川とどうつきあうかということであり、同時に、日本人にとって自然の恵みとは川が運んでくれる水と土壌の惠みに他なりませんでした。
例えば、日本社会が水稲栽培を中心に発展してきたのも、豊かな水資源が約束されていたからとのこと。
江戸時代以前の日本人にとって、時に川が氾濫することは当然のことで、武田信玄や加藤清正に代表されるかつての治水とは、川を「なだめる」ことだったそうです。
これは、当時の交通が舟運に依存していたことと密接に関連しており、さらに、根底には自然への謙虚な姿勢があったとしています。
ところが、明治中期に堤防という「新鋭技術」が治水の主役として採用されて以来、日本人と川(自然)との関係性は一変し、川は制御すべきものとされました。
つまり、洪水は「押し込める」ものに変化し、その結果、土地利用の高度化(下流部における都市化など)にもつながりました。
そして、この「治水革命」の結果、水害は年とともに激化し、未曾有の記録が高新されるようになったというのです。
また、著者の分析によると、過去の全ての文明は川がもたらした土壌の生産力の中から生まれ、それが失われた時に滅亡したとのこと。
ひるがえって現在の日本人をみると、自国の土地を掠奪し、さらに(大量の食料輸入等を通じて)他国の土壌を掠奪することで「命脈を保っている」のであり、自然の一員という自覚を取り戻し、真の豊かさとは何かということを根底から問い直すことが必要としています。
さらに「それが時間との競争の作業でもあることを、忘れてはならない」としているのです。
本書の初版が世に出てから45年。私たちは著者が鳴らした警鐘を、果たして十分に受け止めてきたでしょうか。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 太田道灌の史跡めぐり vol.1[6/4]
https://food-mileage.jp/2019/06/04/blog-200/
○ 「屋台部」のことなど[6/8]
https://food-mileage.jp/2019/06/08/blog-201/
○ 太郎さんへの手紙[6/14]
https://food-mileage.jp/2019/06/14/blog-202/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ 共奏キッチン♪@自由が丘シェア奥沢 #92
日時:6月17日(月)18:00~22:00
場所:シェア奥沢(東京・自由が丘)
主催:共奏キッチン
(詳細、お問合せ先等↓)
https://www.facebook.com/events/871323219897580/
○ 問いの思考塾6月:話題提供:入江杏さん
日時:6月19日(水)18:45~20:45
場所:きらきらプラザ新橋(東京・港区新橋中央区東日本橋2)
主催:ご近所ラボ新橋
(詳細、お問合せ先等↓)
https://www.facebook.com/events/788327851560678/
○ 高橋美香“パレスチナのちいさないとなみ”出版記念
日時:6月21日(金)19:00~、22日(土)14:00~
場所:MAP – エムエイピー(東京・狛江岩戸北4)
主催:MAP – エムエイピー
(詳細、お問合せ先等↓)
https://www.facebook.com/events/277705859806281/
○ ばばらあやか 第5次関東遠征
日時:6月22日(土)12:00~、17:00~
場所:居酒屋ごっつり(東京・北千住)、りんごライフ(横浜・青葉台)
主催:ばばらあやかさん(シンガーソングライター)
(詳細、お問合せ先等↓)
https://ameblo.jp/tomatthy/entry-12459922826.html
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*舞麗児忽々の今号のコツコツ小咄。
「田んぼは、お城に似てるね」
「えっ、どういうこと?」
「トノサマ(殿様)もいるもの」
田植え時期の田んぼは、生物多様性の宝庫ですね。
コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
http://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号 No.171は7月3日(月)[和暦 水無月朔日]の配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
http://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
https://archives.mag2.com/0001579997/
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
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ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
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メルマガ「フード・マイレージ資料室 通信」(バックナンバー)
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発行システム:『まぐまぐ!』
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