【メルマガ】F.M.Letter No.186

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.186◇
 2020年2月8日(土)[和暦 睦月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  消費者の食に対する志向の推移
◆ O.カレント  ゴホウビダイナー(東京・世田谷区)
◆ ほんのさわり 西川 潤『2030年 未来への選択』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 新型肺炎の不安が広がるなかで迎えた今年の小正月。スギ花粉まで漂い始めました。
 時の流れを体感するため和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は消費者の食に対する志向について考えました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/ 

-消費者の食に対する志向の推移-

日本政策金融公庫(略称:日本公庫)は、2008年以降、食品に関する消費者の意識や購買行動などを把握するため、全国の2000人を対象としたインターネット調査「消費者動向調査」を実施しています。

 リンク先の図186は、このなかにある「食の志向」の推移をグラフ化したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/02/186_shikou.pdf


 最新の結果によると、「健康志向」が43.8%と最も高く、次いで「経済性志向」38.1%、「簡便化志向」33.4%と続いています。また、「国産志向」は14.3%となっています。

 これを時系列でみると、「健康志向」は2011年頃から最も高い水準で推移しており、「簡便化傾向」はほぼ一貫して上昇しています。
 また、「経済性志向」は、2010年をピークにどちらかといえば右肩下がりで推移していましたが、2017年頃からは上昇傾向に転じています。この傾向は若い世代で顕著です(最新の20歳代の数値は50.6%)。
 一方、「国産志向」は「経済性志向」と対をなすように、2015年頃からやや低下しています。

 最近の消費者の食に対する志向は、質よりも、より安いものを求める志向が再び上昇しているのです。近年の特に若い世代をめぐる経済情勢を反映しているのかもしれません。

[資料]
 日本政策金融公庫「食の志向調査」
 https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_190930a.pdf

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/ 

-ゴホウビダイナー-

祖師ヶ谷大蔵駅(小田急小田原線、世田谷区)の近隣には、かつて円谷プロダクションがありました。それにちなんで北口広場にはウルトラマン像があり、駅周辺の商店街はウルトラマン商店街と呼ばれています。

 その賑やかな通りを2分ほど北へ歩いたところに、ゴホウビダイナーはあります。
 国産ハンバーガーを中心とした料理を、国産クラフトビールとともに楽しめるお店で、店名には「がんばった自分や大切な人への“ご褒美”として楽しい時間を過ごして欲しい」という思いが込められているそうです。

 店主の齊藤星児さんは福岡県の出身。
 青果市場で働いていた時、丹精込めて生産した作物に正当な対価がつかず廃業せざるを得なくなった生産者の姿を見て、このままでは真っ当な国産の作物が消えてしまうという危機感を覚え、自ら飲食業に転身されたという方。

 ゴホウビダイナーは、とにかく食材へのこだわりが尋常ではありません。
 店頭も店内の壁も、メニューまで、その料理の食材の産地と生産者を紹介するパネルや記事で溢れています。

 齊藤さんは、誇りとこだわりを持って生産している生産者のことをクラフトマン(職人的生産者、名人)と呼び、自ら足を運ぶ等して顔の見える関係を築いておられるそうです。

 名物メニューの一つが、2019年10月に登場した「祖師谷バーガー」。
 原料の赤崎牛(福岡)は、生産者の方が大事にこだわって育て上げた牛肉で、信頼できる相手にしか販売しないという貴重なもの。岩塩とブラックペッパーだけで味付けした赤身肉のパテは、噛むほどに深い味わいです。
 他にも生産者のこだわりの食材を使った様々な料理を楽しむことができます。
 また、国産のクラフトビールも常時15種類ほどを取り揃えているとのこと。

 飲食業を始めて13年。安さだけを求めるのではなく、産地や生産者に共感してくれる心ある消費者が日々増えているという実感もあるそうです。

 「安いものにはワケがあり、高いものには価値がある。全国各地のクラフトマンに思いを馳せながら食事を楽しんで頂きたい」。
 ウルトラマンと同じ「星の子ども」という名前を持つ斎藤さんは、熱く語ります。ぜひ、足を運んでみて下さい。

[参考]
ゴホウビダイナー
 https://www.facebook.com/gohobidiner/
 https://www.instagram.com/gohobidiner/ 

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-西川 潤『2030年 未来への選択』(2018.1、日本経済新聞出版社)-
 https://www.nikkeibook.com/item-detail/26364 

著者は1936年台湾・台北市生まれ。長く早稲田大学等で開発経済学や南北問題を担当され、国際開発学会、日本平和学会等の理事・会長も歴任された方です(個人的な話で恐縮ながら、学生時代に読んだ『飢えの構造』(1984)が、食料や農業問題に携わるという私の進路を決定付けました)。

 西川先生は、本書が刊行された9ヵ月後に滞在先のスペインで急逝されました。結果的に本書は、西川先生の永年の研究と考察の集大成であると同時に「遺言」となったのです。

 本書では、まず、2015年に採択された国連のSDGs(持続可能な開発目標)に言及しつつ、人口、食料、エネルギー、資源、資本主義など経済システム、国家のガバナンスなど広範な分野について、現状と将来予測を幅広くレビューしています。

 それを踏まえた2030年に向けての近未来シナリオとしては、ナショナリズムの強化と国家対立、グローバリゼーションの野放しの進展、地域主義の高まりと地域分化、超大国グループの対峙という4つがあり得るとし、いずれの場合も現在の危機(格差の拡大、紛争の多発、気候変動等)を増幅する方向で作用すると危惧しています。

 その上で、著者は、もう一つのシナリオとして、政府、企業、市民社会の協働、多国籍企業の規制等を通じて、資源やコモンズを共同管理する持続可能な発展を目指すべきとし、そのために一番必要なことは一人ひとりの価値観の変化であるとしています。

 また、日本が大量の輸入食料に依存していることについては、地球に大きな負担をかけているだけではなく、世界的な環境破壊、農村貧困化にも手を貸す可能性が高いとし(私が試算したフード・マイレージの数値も引用して下さっています)、地産地消、直販、有機農業、スローフード等の重要性を強調しているのです。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

 ▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○「顔が見える」ということ[1/28]
(高田暮舎、農業情報研、福島まち物語、ゴホウビダイナー)
 https://food-mileage.jp/2020/01/28/blog-254/ 

○江戸東京野菜をご存知ですか(CSまちデザイン)[2/2]
 https://food-mileage.jp/2020/02/02/blog-255/

○「和暦日々是好日」展[2/6]
 https://food-mileage.jp/2020/02/06/blog-256/

 ▼ 筆者が主催者に加わっているイベントです(残席わずか)。
○ 第32回 森の読書会
 日時:2月22日(土)10:00~12:00
 場所:森の食卓(東京・三鷹市井の頭)
 主催:森の読書会、フード・マイレージ資料室
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/3135225183364837/

 ▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ ポケマル商店街 in 東京ドーム
 日時:2月14日(金)~21日(金)
 場所:東京ドーム(東京・文京区後楽1)
 主催:ポケットマルシェ
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/781814875665260/

○ ふくしま有機ネット交流サロンin東京2020
 日時:2月15日(土)15:00~17:00
 場所:EDITORY神保町(東京・神田神保町)
 主催:福島県有機農業ネットワーク
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/1235108006674422/

○ 第11回マチモノ樹木勉強会*樹木医岩谷さんから教わる冬の樹木の魅力
 日時:2月23日(土)9:30~12:30
 場所:成城三丁目緑地公園(東京・世田谷区)
 主催:街の木ものづくりネットワーク(マチモノ)
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/1083896065295448/

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米令寺忽々のコツコツ小咄。
「節分に柊鰯(ひいらぎいわし)を飾るのは、ローン返済のためなのよ」
「そうなんですか」
「邪気(借金)を払いますから」

 コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/ 

* 次号No.187は2月24日(月・休)[和暦 如月朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也 (購読(無料)登録はこちらから)
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