【メルマガ】F.M.Letter No.190

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.190◇
2020年4月7日(火)[和暦 弥生十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  米などの備蓄/在庫状況
◆ O.カレント  生産者とつながるということ
◆ ほんのさわり  宮台真司、飯田哲也『原発社会からの離脱』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 新年度がスタートしました。
 和暦では弥生も半ば、二十四節気では清明(せいめい)。1年で最ももわくわくする季節のはずですが、本日中にも新型コロナウイルス緊急事態宣言が発令されるとのこと。今号では食料の安定供給と安心について考えてみました。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/ 

-米などの備蓄/在庫状況-

先週の金曜日(3/26)、東京都等が週末の外出自粛を要請したところ、スーパー等には客が殺到し、食料品を買いだめする動きがみられました。
 このようなパニック的な動きは、幸い一時的なものでしたが、自給率の低さ等から食料供給への不安を感じる方もおられるかも知れません。
 農林水産省のホームページによると、食料品は十分な供給量が確保されており、生産現場が止まることはなく、輸入が滞っていることもないとのこと。

 また、備蓄や在庫も十分に確保されています。
 例えば、ほぼ国内で自給している米については政府備蓄が約100万トン、 民間在庫が約270万トンと、年間需要量の半分以上を賄える量があります(リンク先の図190参照)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/04/190_komezaiko.pdf

 また、多くを輸入に依存している小麦(国が一元的に輸入する制度になっています。)については、外国産小麦の国内備蓄が約93万トンあり、これは需要量の2.3ヶ月分に相当します。家畜用の飼料についても、計画的に備蓄を行う制度があります。

 農林水産大臣は「国民の皆様へのお願い」として、落ち着いた購買行動をとっていただくよう動画でも直接要請しています。

[資料]
 新型コロナウイルス感染症について(農林水産省ホームページ)
 https://www.maff.go.jp/j/saigai/n_coronavirus/index.html
 2020年4月3日 江藤農林水産大臣メッセージ
 https://www.maff.go.jp/j/douga/200403.html

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/ 

-生産者とつながるということ-

食料の安定供給については様々な制度・事業等により確保されているとはいえ、生活者としては、生活の基盤である「食」に対する安心感をより強く得たいと思うのは当然のことです。
 私は、必要な食料の全てではなく一部でも、生産者と直接つながることによって調達することがで、大きな安心感を得ることにつながると考えます。
 産消提携や CSA(Community Supported Agriculture)と呼ばれる取組みが、生協を含め各地で様々に行われていますが、ここでは私自身が利用させて頂いているものを事例的に紹介させていただきます。

 ひとつはポケットマルシェ(ポケマル)。作る人と食べる人を繋ぐオンラインマルシェです。
 スマホやパソコンのサイトを開くと、旬の食べものが生産者の情報等とともにずらりと並んでおり、そのなかから食べたいものを探し、もし気になること(美味しい食べ方など)があれば生産者さんに直接質問することもできます。
 また、昨年の水害の被災者や、新型コロナ禍で取引が減ってしまった生産者をサポートするといった活動にも熱心に取り組んでいます。
 既存のスーパー等の大量・広域流通システム(引き続き主流であると思われます)のオルタナティブな食品流通の試みとして、リスク分散の観点からも注目されますが、何より、生産者と直接やり取りができる「楽しさ」が一番のウリです。
 → https://poke-m.com/ 

 もうひとつは、US.Peace FARMの「お野菜届け隊」。
 有機農業のメッカとしても有名な埼玉・小川町で新規就農された生産者の方たちの野菜を中心に、月2回、定期的に宅配されるというものです。固定種や在来種にこだわっている生産者の方もいらっしゃいます。
 会費は事前に一括払い。これは生産者の経営安定だけではなく、消費者にとっても定額で確実に野菜を入手できるというメリットがあります(不作等のリスクは生産者、消費者双方でシェアします)。見学会など生産者を訪ねる機会もあります。
 現在、2020年5~10月期分について新規募集中です。
 → https://farm.usp-lab.com/delivery_2020apr.html

 私自身も全ての食料をこれらを通じて入手している訳ではありません。
 しかし、単に「消費」するだけではなく、生産者や事業者の方々とつながってリスクをシェアすることが、近隣または国内での食料の生産・供給基盤(農地や担い手)の確保に貢献すると思うと、より大きな安心感につながっていくと思います。

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/ 

-宮台真司、飯田哲也『原発社会からの離脱-自然エネルギーと共同体自治に向けて』(2011.6、講談社現代新書)-
 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000210598

 ともに1959年生まれの気鋭の社会学者と、自然エネルギーの第一人者による対談。東日本大震災と原発事故の直後に「緊急出版」されただけに、メインテーマはエネルギー政策です。
 宮台先生は、原発依存からの脱却のためには「原発をやめられない日本社会」そのもの(空気に抗えない悪い共同体)の変革が必要であるとします。特にグローバル化した高度技術社会においては、<市場や国家などのシステム>に盲目的に依存することは、ますます危険であるというのです。
 この危険を回避するためには巨大システムに代わる共同体自治を進めることが必要であるとし、その際には、食とエネルギーが手掛かりになるとしているのです。

 危険性をいち早く認識した欧州では、チェルノブイリ原発事故がきっかけとなって自然エネルギー化=エネルギーの共同体自治が進むのと併行して、食のスローフード化=食の共同体自治も進んでいるとのこと。
 本書においてはスローフードについての記述は詳しくありませんが、別の著書(『日本の難点』(幻冬舎新書、2009/4)では、「スローフードとは『世直し運動』。食が近隣農業を支え、近隣農業が経済やライフスタイルや風景や町の匂いや近隣文化を支えることへの自覚が必要」といった記述もあります。

 生産者と顔の見える関係を構築していくことは、食にかかわる安心の確保にとどまらず、私たちの社会全体を変革していくための手掛かりになるのかもしれません。

◆ 情報ひろば  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
 ▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○身近なところに農があることの有難さ[3/28]
 https://food-mileage.jp/2020/03/28/blog-263/ 

○ご挨拶(新年度に思うこと)[4/6]
 https://food-mileage.jp/2020/04/06/blog-264/

▼ イベント等の紹介は今回はお休みします。

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「笑いって、ご飯と同じくらい生活に欠かせないものなのね」
「そうなんですか」
「コメ(米)ディたけに」
 志村けんさんの突然の訃報には驚き、深い悲しみを禁じ得ませんでした。合掌。

 コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/ 

* 次号No.191は4月23日(木)[和暦 卯月朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也
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