【メルマガ】F.M.Letter No.181

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.181◇
 2019年11月27日(水)[和暦 霜月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識  エシカル商品の購入状況
◆ O.カレント  榊田みどりさん
◆ ほんのさわり 新井和宏、高橋博之『共感資本社会を生きる』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 冬の語源は「殖ゆ」「振ゆ」。魂(生命力)が増え、粒子が震えて発動するという意味だそうです。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は「関係性、つながり」について考えてみました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

-エシカル商品の購入状況-

倫理的消費(エシカル消費)とは「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動」のことです(消費者基本計画、2015年3月閣議決定)。
 具体的には、消費者が社会的課題の解決を考慮したり、あるいはそうした課題に取り組む事業者を応援する消費活動を指し、かいつまんでいえば「より良い社会に向けた、人や社会、環境に配慮した消費行動」と言えます。
 これは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」とも関連するものです。

 世界的にエシカル消費への関心や実践が広まっていますが、日本においては言葉自体もあまり知られていないのが現状です。
 消費者庁「倫理的消費(エシカル消費)に関する消費者意識調査」(2017年2月)によると、エシカル消費に関連する言葉の認知度については、「エコ」は5割以上、「ロハス」「フェアトレード」は3割程度ありますが、「倫理的(エシカル)消費」については1割以下に過ぎません。

  一方、エシカルな商品の購入状況を商品別にみると、食料品については「購入している」が36%、「どちらかというと購入している」が32.8%(計68.8%)となっており、これは衣料品(45.8%)、その他生活用品(54.2%)、家電・贅沢品(42.1%)よりも高くなっています(リンク先の図181)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/11/181_ethical.pdf

 また、エシカルな食料品の購入状況について属性別にみると、性別では女性の方がやや高く、年代別には「購入している」とする者の割合は10・20代が42%と最も高くなっています。
 このように、食料品は他の商品に比べてエシカル消費(国産品の購入、地産地消等)を行いやすい商品であり、さらに、若い世代において実践している者の割合が大きいことが注目されます。

[出典等]
 消費者庁「倫理的消費(エシカル消費)に関する消費者意識調査」(2017年2月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/consumer_education/ethical_study_group/pdf/region_index13_170125_0003.pdf

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

-榊田みどりさん-

榊田みどりさんは秋田県のご出身。
 東京大学大学院(総合文化研究科修士課程)を修了後、生協勤務を経て、1990年からフリーの農業ジャーナリスト(「農政ジャーナリスト」ではありません)。
 明治大学客員教授、農政ジャーナリストの会副会長、NPO法人コミュニティスクールまちデザイン理事のほか、農水省の各種検討会の委員等を務められ、多くの著作もあります。

 農業県の秋田で生まれ育ったものの、農業との接点はほとんどなかったという榊田さん。大学進学のために上京した後、都市部の消費者と生産現場の遠さを実感するようになったことが、農業に関心を持つようになったきっかけだったそうです。
 何とかその距離を縮められないか、また、自分も食べているものの生産者や産地のことを知りたいと思い、生協に就職して産消提携に携わるようになりました。

 その後、フリーのジャーナリストに転身。
 様々な地域に精力的に足を運び、各種メディアや講演等を通じて、まさに「地に足の着いた」現場からの発信を続けられています。

 例えば近著『農村女性と再生可能エネルギー』(2015.1)では、長野県と兵庫県の酪農家、山形県の農林家を訪ねて聴き取りを行い、「大規模投資で利益を生み出そうとするフロー経済の視点ではなく、身近な資源を見つめ直し、いざという時も暮らしを支えるストック経済の一環としての再生可能エネルギー」に取り組んでいる女性達の生の声をレポートされています。
 また、農業と食品流通の大規模化・グローバルが進行するなか、世界的に小規模家族農業の価値が再評価されるなど「ローカル化」の動きが広がりつつあることにも注目されています。

 「現場」に確固たる軸足を置く榊田さん。
 粘り強さと誠実さ、旺盛な行動力で今日も一次産業の現場を歩き、消費者との間に架け橋を築かれています。

[参考]
 榊田みどり(著),和泉真理(著),岸康彦(監修)『農村女性と再生可能エネルギー』(2015.1、筑波書房(共著)
 https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784811904580

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-新井和宏、高橋博之『共感資本社会を生きる-共感が「お金」になる時代の新しい生き方』 (2019.11、ダイヤモンド社)-
 https://www.diamond.co.jp/book/9784478109335.html

著者の新井氏は、外資系の資産運用会社勤務を経て、リーマンショック後に「いい会社」だけに投資する鎌倉投信(株)を創業された金融のプロ。
 一方の高橋氏は、「食べる通信」や「ポケットマルシェ」という斬新な仕組みを構築し、第一次産業の生産者と消費者をつなぐ活動を続けておられる方。
 「お金」と「食」という異なる分野におけるフロントランナーのお2人が、これからの幸せな社会のあり方や個人の生き方について語り合ったのが本書です。

 2人に共通する問題意識は、現在の資本主義は限界を迎えており、何らかの補正が必要ということ。
 生産性向上ばかり追求してきたために個性が排除され、関係性も失われた結果、10~30歳代の死因第一位が自殺という社会になってしまいました。

 そして、これからは「共感」をベースとした新しい社会(共感資本社会)の構築を目指すべきといしています。
 それは自然や他者との関係性を取り戻し、感じることで、自分の生が充実していく社会。多様性が尊重され、個々人の多様な価値観の下に、本当に大切にしたいものを大切にできる社会。そして正直者がバカを見るようなことのない社会とのこと。

 その実現に向けて、新井氏は eumo(ユーモ)という新しい「お金」(貯められない、現地に行って人に会わないと使えない)を提案、実証実験をされています。
 一方の高橋氏は、「食」を仲立ちにして生産者(農村)と消費者(都市)との間の顔の見える関係作りを推進し、今回の災害支援でも大きな力を発揮したそうです。

 しかし、この新しい社会は2人だけで創造できるものではないとし、
 「もう従うのはやめて、みんなで主体的に動こう。動いたら必ず自分が幸せになれるコミュニティ関係性を実感できる」と読者に訴えています。

 資本主義のパラダイムを変える可能性さえ感じさせられる好著ですが、18世紀の「経済学の父」アダム・スミスも共感(sympathy)の重要性を強調していることを思い返すと、本来の経済の姿への回帰を目指しているものと言えるかも知れません。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
 ▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 福島・飯舘ツアー(CSまちデザイン、1日目)[11/12]
 https://food-mileage.jp/2019/11/12/blog-229/

○ 福島・飯舘ツアー(CSまちデザイン、2日目)[11/14]
 https://food-mileage.jp/2019/11/14/blog-230/

○ 収穫祭と秋上げ(新潟・上越市大賀)[11/16]
 https://food-mileage.jp/2019/11/16/blog-231/

○ 銀座農業コミュニティ塾・第12回勉強会[11/18]
 https://food-mileage.jp/2019/11/18/blog-232/

○ 共奏キッチン♪@自由が丘シェア奥沢 #97[11/26]
 https://food-mileage.jp/2019/11/26/blog-233/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 第9回マチモノ樹木勉強会
 日時:11月30日(土)9:30~12:00
 場所:成城三丁目緑地公園(東京・世田谷区)
 主催:街の木ものづくりネットワーク(マチモノ)
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/494930614442347/

○ 大豆収穫 in 横田農場
 日時:11月30日(水)9:30東武東上線・小川町駅前集合
 場所:埼玉・小川町青山  主催:US.Peaceファーム
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://farm.usp-lab.com/event_trial_2019.html

○ 円坐影舞 冬景色
 日時:12月7日(土)13:00~17:30
 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢2)
 主催:青柳彰一さん
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/802248770208144/

○ 奥沢ブッククラブ第50回「マチネの終わりに」
 日時:12月9日(月)19:00~21:00
 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢2)
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/403106483909194/

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米令寺忽々のコツコツ小咄。
「そんなに聞き分けのない子は、渋柿を食べさせるよ!」
「うえ~ん、堪忍(タンニン)して~」
 コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.182は12月11日(水)[和暦 霜月十五日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也 (購読(無料)登録はこちらから)
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html

 発行システム:『まぐまぐ!』
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 バックナンバー
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 http://food-mileage.jp/category/blog/